くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「学年ビリのギャルが一年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」

2014-03-20 21:33:09 | 社会科学・教育
 タイトル長いです。これも心理学の見地からかもしれません。「学年ビリのギャルが一年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(角川書店)。女性誌で取り上げられていて興味を持ちました。著者は名古屋で塾を経営する坪井信貴氏。心理学に裏付けされた指導をされているそうです。わたしも小学館の「学習まんが少年少女日本の歴史(23冊セット)」を買おうかと思ってしまいました。恐るべし心理学!

 現在二十五歳の「さやかちゃん」を、エスカレーター式の女子校の内部選考すら絶望的だったものを、猛勉強で慶応に受からせた、という夢物語のような話なんですが、先生、とにかくさやかちゃんをその気にさせてしまうんですよね。君みたいな子が慶応に現役合格したら、本になるくらいのインパクトだよ、なんていって。
 さやかちゃんは、福澤諭吉が一万円冊の人という認識しかない。大体「聖徳太子」を正確に読めない。日本地図のアウトラインを描くようにいうと、丸をひとつだけ描く。
 この子は地味な小学校生活を送っていたのですが、母親に一貫校に行けばもう勉強しなくて済むと言われて受験したんだそうです。
 坪井さんはこのお母さん(さやかちゃんの呼び方で「ああちゃん」)を、「悲しい子ども時代の経験から、熱い子育て論を持つお母さん」(帯の紹介文)といいますが、うーん、学校現場から見るとかなり頭をひねってしまいます。
 さやかちゃんはそう言われたせいかちっとも勉強しなくなり、お父さんは弟をプロ野球選手に育てたいとそちらに夢中。さやかちゃんと妹にかかるお金は、頼りたくないからとお母さんが出していたそうです。
 で、まあ、この方が、いわゆる「叱らない育児」を実践されているんですね。最後には、受験勉強で授業中に寝てしまうために保護者召喚されたのに、それならさやかはいつ寝たらいいのかと、先生を説得したのだそうです……。
 わたしの高校時代の先輩に、Z会トップの方がいらしたんですが、授業中寝てばかりで学年順位は二桁(でも東大に行きました)だったという話を思い出しました。
 さやかちゃんは確かにギャルにはなったけど、お母さんが嫌がるようなことはしなかった、煙草のことは隠していた、というようなことが描かれていました。ニュアンスとしては、モンスターペアレントと言われるかもしれないが、お母さんの子育ては正解、という感じ。
 いや、でもね、子どものすることを肯定してばかりいるのも、よくないことをしているのに庇うのも、その子のためにはならないと思うのですよ。一般論かもしれませんが、周囲は迷惑することの方が多い。
 で、表紙には「ダメな人間などいません。ダメな指導者がいるだけなのです」と書いてあります。
 ……自分はダメな指導者ではない、ということですよね。いや、実際に内容も参考になるし、実績のある方なんでしょう。でも、学校の教師をけなす必要があるのでしょうか。
 そういうもやもやがなんとなく消えないのです。

 「何回言ったらわかるの?」は約500回とか、インプットとアウトプット、無駄な繰り返しは脳が嫌がるなど、学習に関わる部分はすごくおもしろい。
 この塾、無制限に来て学習していいコースがあるそうですが、百数十万円を前払いしなければならない。それを、わずか千五百円で分けていただけるので、凡人教師のわたしにはたいへんお得な買い物でした。今後活用しますね。