くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「サラの鍵」タチアナ・ド・ロネ

2014-03-08 20:36:31 | 外国文学
 「サラの鍵」(新潮社)とてもよかった。
 数年前にも読んでみたいと思ったのですが、なにしろ翻訳小説苦手なので、読まないまま忘れていました。今回ブックガイドに取り上げられているのを見て本気で探しましたとも。
 文庫にはなっていないらしい。
 単行本は2010年の出版で2300円もします。そりゃ図書館で借りるでしょう。ネット検索したら、映画化したものが真っ先に出てきました。
 近くの図書館で探したけれど見つからなくて、ちょっと足を延ばしました。普段大人向けの外国文学の棚を覗かないためでしょうか。新潮社セレクトブックスの一冊と聞いたので背表紙で探したら発見できました。
 大戦中のフランスで行われたユダヤ人狩り。少女は、弟を納戸に隠して鍵をかけます。ここなら決して見つからないから。戻ってきたら出してあげる。
 ところが、両親とともに家畜列車に乗せられたサラは、パリから遠くに連れて行かれてしまうのです。
 わたしが感じたのは、生き残った者の悲しみでした。両親はおそらくアウシュビッツに送られ、弟は納戸でどうなっているのかわからない。サラの胸にある焦燥。
 これだけでも読み応え充分なんですが、平行してある女性ジャーナリストの現実が描かれます。「ヴェロドローム・ディヴェール」から六十年の節目の年。ナチスだけではなくフランス警察もユダヤ人迫害に加担していたことを知ったジュリアは、自分がこれから住むことになるアパートで、かつてあった事件を知ります。
 サラとはどんな少女なのか。弟はどうなったのか。
 全体に溢れる緊迫感から、ページをめくる手が止まりません。
 後半で明かされるサラの願いとその破綻が、つらい。
 彼女はサバイバーとして、自分ひとりが生き続けることに罪悪感を持っていたのかもしれません。
 ジュリアのアメリカ人としてパリに生きる違和感のようなもの(夫婦関係もそうですが)と、サラの苦しみがリンクしていく感じがします。
 娘のゾーイがいいです。健気で。
 生きるということ。
 フランスにもこのような虐殺の事実があったことを、大概の人は知らないと言います。それを知ること、そして忘れないことが、大切たと思いました。