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生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

父の遺してくれた物(その4)

2006-11-21 06:47:43 | 家族
今日これからまた実家にいきます。妹が仕事でフランスに行っているので、訪れる人も少なく、寂しさを感じている母と共に時を過ごそうと思っています。


父は「永遠のことば」を読み始めたころ(2年半前)から少しずつ変わってきました。母や妹やわたしに「ありがとう」とよく言いました。それまでは決して口にしなかった言葉です。


今年の4月、癌がかなりすすんでいて、肺にも転移していることがわかったとき、医師の薦めでホスピスを捜しました。父には吉祥寺に買い物に行くと嘘をついて、母と妹と3人でホスピスを見学にいったのです。わたしたちが家に戻ると、留守番をしていた父の機嫌は悪く、
「ぼくが具合が悪いのに、お前達は呑気に買い物か」
と怒鳴ったので、わたしたちはあわてて父の機嫌をとり、
「具合どう? 大丈夫?」
と声をかけると、
「もう、いいんだ、ほっといてくれ」
と怒って2階に上がって寝てしまいました。
こんなふうにすねたのは、1回きりでした。



その後、ホスピスに入院したとき、春に見学して予約を入れておいたから入れたのだと説明すると、「そうだったのか……。ありがとう」と涙を流して言いました。
父は末期癌で余命がわずかだと知っていても平安でいられたのですが、その秘密が三浦綾子さんの言葉に隠されている気がします。



寝たきりの、何も自分の言葉でものの言えない人も、思っていることの心の中はすばらしいですね。(一方)口に出して言えるわたしたちが「ありがとう」という言葉を出さずに生きております。わたしたちはこの口で何かを言う義務があると思います。

でもわたしは、病気というのはマイナスばかりじゃない、いや長い病気であっても病気は病気なりにプラスの生活があるんじゃないかと思います。病気で失ったものはいったい何だろう、と考えたら健康だけだったんですね。健康は確かに失われたかもしれないけれども、その代わりに得たものは真実の友でした。

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