3風の国
いくつものの雲の中を通りぬけると、上の方に三角のピラミッドのような形をした真っ白い雲が浮かんでいました。
「変わった形の雲だなあ」
「あの中に風の国があるんだよ」
リムは三角の雲の下の方にぽっかりとあいているトンネルの中にたくやを連れていきました。トンネルを通りぬけると、雲のじゅうたんの上に色とりどりの大きなたまごがいくつも並んでいました。
「まだ春風のたまごがひとつぐらい残っているかもしれないからさがしてみよう」
リムはとびまわりながら春風を呼びました。
「おーい、春風やーい」
「春風、いたら返事をしてくれよ」
たくやも呼びました。
するとグオーンと音がして黄緑色のたまごがグラグラゆれて、中からうずをまいた緑の風が出てきました。
「だれだ、おれさまを起こしたのは!」
「つむじ。起こしてごめんなさい。まだ寝ていて下さい」
リムがぺこぺこ頭を下げました。
「まだ寝ていろだって、起こしておいて何をいうか!」
「やっかいな風を起こしちゃったな。つむじは春風といっても、春の嵐なんだ。あまのじゃくなんだよ」
リムがたくやにささやきました。
「嵐でもふいてくれればうれしいよ」
たくやがいうと、つむじはニヤッと笑って、
「じゃあ、たまごの中にもどろうかな、おっと、いい忘れてたが、春風のたまごはガルがぬすんでいったよ」
「えっ、ガルが?」
リムは口を大きく開けました。
「ガルって?」
「冬将軍なんだ。たまごをぬすむなんて、ひどいよ。春風のたまごがみつからないと、ずっと春にならないんだよ」
「ええっ、そんなあ」
たくやは、お母さんの病気がずっとなおらないといわれたようようで涙が出そうになりました。
「リム、ガルのところにいって、春風のたまごをとりもどそうよ」
「うん。でも、ガルは強いんだ……。口から白い息をはいて、息がかかったものはみんな凍っちゃうんだよ」
リムはブルブルふるえています。
「ハハハ、おれさまならガルをやっつけられるぜ」
つむじがぐるっと一回転しました。
「じゃあつむじ、いっしょにいってくれよ」
リムがいうと、
「いやだね」
つむじはフンとそっぽを向きました。
たくやは、つむじには反対のことをいえばいいのだと気づきました。
「じゃあ、リムとぼくでガルをやっつけるから、つむじはこなくていいよ」
「オレ、いく。ガルをやっつけてやる!」
つむじは、ぐるぐるまわりながらすごい勢いで風の国を出ていきました。たくやとリムは、あわてて後を追いました。
つづく