いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

クラウンの新型ハイブリッド

2012年11月05日 | 自動車
 クラウンが12月にモデルチェンジだそうです。1970年代から2000年代にかけて、実家では何台かクラウンを乗り継いでいましたが、当時からクラウンのイメージは公用車、タクシー、年配者用で、間違っても運転を楽しむ人向けではありませんでした。その後のクラウンは大型化、高価格化が進んでより公用車のイメージを強め、一般サラリーマン家庭の自家用車としての選択からは外れたため、極楽家でも興味を持っていませんでした。ただ、トヨタの新技術やコンセプトを先行採用してくるので、モデルチェンジだけは目を離せないんですね。

 鍵になるのがこの文書。最初に書いてあるAR系ガソリンエンジンが、今度のクラウンの主力エンジンになると予想されています。2AR-FXEは昨年からカムリに搭載されている4気筒エンジンで、今のところハイブリッドシステムのみで使われています。カムリは商品企画としてはかなり驚きのハイブリッド専用車。動力性能と燃費、静粛性などが非常に高いレベルで達成されており評価は高いようです。

 不思議だったのは、カムリのハイブリッド化の後も、同クラスのハイブリッドシステムを持つエスティマハイブリッドが据え置かれたこと。これは少し古い2.4L4気筒の2AZ-FXEを搭載しており、カムリと同じ2AR-FXEへの換装ですぐにでも商品力が上がるはずなのに、それを見送りました。結果として同じクラスに2種類のハイブリッド用4気筒エンジンを並列して生産、在庫するという、けちな(誉め言葉でもある)トヨタとしては不自然なことになっていました。つまり、決定版がもうすぐ出るから待てということだったんですね。

 もう一度トヨタの文書を見ると、「世界最高の最大熱効率38.5%」とあります。ガソリンエンジンの熱効率、すなわちガソリンを燃やした熱エネルギーのうち、運動エネルギーに変換できる割合は長らく30%を下回っていました。最新のエンジンで30%台前半というところでしょうが、それが40%近くになり、ディーゼルに肉薄してきたということです。もっとも、熱効率の最先端を走る大型船舶用のディーゼルコンパウンドエンジンでは驚異の50%です。埼玉工業大学 小西教授の講義ノートが公開されていますので参考にさせて頂きました。

 このトヨタマジックは、故兼坂弘さんが「毒舌評論」で予言されていたように、アトキンソンサイクル(トヨタのはバルブタイミングの変化によって仮想アトキンソン動作する機構なのでミラーサイクル)における膨張/圧縮のレバー比を大きくできるようになったことに他ならないと見ます。「トヨタのコドモもやっとエンジンが作れるようになったか」と彼岸で兼坂御大が笑っているかも。

 もしこれが本当なら、6月ごろに流布した「レクサスGSに小型ハイブリッドを追加か」というニュースとも符合するわけです。現行GSも先代にあったV8を落として、廉価版として2.5L V6を追加するという、世界市場を相手にしたプレミアムカーらしからぬ消極的な商品企画にやや戸惑いましたが、この新型ハイブリッドでかなり魅力が増すように思います。少なくとも動力性能において、日本ではトヨタブランドで売っているカムリとの逆転が生じていたのは販売面で著しく不利だったでしょう。ボディ剛性と後輪駆動の希少性のために、遅いクルマに500万円を支払う人は珍しいはずですから。

 もちろん、この新型AR系ハイブリッドがエスティマハイブリッドやレクサスHSにも積まれるのでしょうね。相対的に低負荷状態で使われることの多い上級車こそ、パーシャル負荷で燃費のいいミラーサイクルが威力を発揮すると予想されます。

 またトヨタは同じAR系のエンジンをターボ過給することも考えているようで、これまた兼坂さんの予言どおり。膨張比を大きく取ることでエンジン温度が下がりすぎるため、(ハイブリッドでない場合は)過給しないとエンジンが回らなくなる、ということだったと思います。複雑なバルブタイミング制御と過給、および燃料噴射や点火の制御を乗り越えて、世界初のミラー+ターボを市販するのなら、これまた興味津々です。VWなどがエンジンの勢力図を一気に書き換えたダウンサイジングターボの潮流に強烈な反撃ができるでしょうか。
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