いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

買い控えは続くよあと3年半

2007年09月06日 | たまには意見表明
 博報堂DYパートナーズの調査によれば、視聴者の4割近くが地上デジタルへの移行に積極的ではなく、アナログ停波間際の2011年まで今までのテレビを見ると回答したそうです。

 この調査結果は一般的な消費者の実感に合っていますね。既に地上デジタルを見ている人は3割弱。留意しなければならないのは、これは首都圏と京阪神でインターネットのアンケートにより調べた数字だということです。地方では地上デジタルの普及率がもっと低いのは当然ですし、ネットを使わない視聴者も恐らく地上デジタルへの対応は遅くなるでしょう。

 アンケートのバイアスを考慮すれば、恐らく視聴者の半数が停波されるまでアナログテレビを見続けるだろうということになります。2011年になるまでデジタル機器の集中した代替需要は発生しません。その代り、アナログ停波が近付けばパニック的な需要が生じ、市場は大混乱に陥ることが予想されます。

 このパニックに乗り遅れれば、一時的にでもテレビのない生活を強いられることになりますね。その際に、「受信可能な受像機を持っていない」としてNHKの受信料支払いの義務はなくなりますから、多数の解約が発生すると予想されます。視聴者が大幅に減少しますから、企業はテレビでの広告費を削減するでしょう。

 こうした大混乱は、別の立場にある業者にとっては大きなビジネスチャンスです。スカパーやケーブルテレビ、新しく市場に登場するインターネットテレビなどが一斉に「工事費無料キャンペーン!視聴料も3ヶ月間無料!」などと積極的に視聴者を囲い込むでしょう。地上波の視聴者が一気に有料放送に移行する可能性はあります。

 地上デジタル側のNHKや既存民放としてはどうしたらいいでしょうか?答えは単純なものだと思います。「地上デジタルへの移行を知って」などという意味不明のキャンペーンではなく、地上デジタルの不便を解消することです。「視聴者がお金を出して地上デジタルに替えてくれれば、高い薄型テレビもアンテナも売れるし、新しいレコーダーも売れる。録画メディアからもお金が取れるし、コピー制限があるからDVDパッケージや携帯の映像コンテンツも売れる。業界みな丸儲けでウハウハ!」なんて顧客不在の前提にしがみ付くから普及しないのでしょう。当たり前ですよ。

 現状の地上デジタルで視聴者にどんな利益がありますか?大きな不便と追加費用の見返りは、静止画の画質がいいことぐらいでしょうか。動きの激しい場面ではブロックノイズが目立ちますからね。視聴者から見ればデメリットばかりで、とても取引に応じられる条件じゃありません。

 これから3年半の国民的買い控えをじっと見たくなければ、少なくとも「地上デジタルは不便」などと言われないようにすることです。放送利権の象徴であった「コピーワンス」(著作権ビジネスの側に言わせれば「世界で一番進んでいる」そうですが)をほんの少し緩めて「9回コピー、1回ムーブ、孫コピー不可」なんて不可解なだけ。この程度で「地上デジタルへの移行を知って」なんて笑うしかないですね。視聴者は「朝三暮四」の猿ではありません。「移行したければ勝手に移行して下さい。我々はアナログ放送が止まるまでこれで十分です。」と半分の視聴者が考えていたらどうしますか?今回の調査はまさにそれを示唆しています。

 今まで家庭で録画した番組の編集は自由だったのですから、デジタルでも自由にするべきです。メディア間のコンバートも自由だったのですから、デジタルでも自由にするべきです。それが権利者に無断で商品化されたのなら、それを取り締まればいいだけでしょう。優良顧客である大多数の視聴者を敵視して手足を縛っておくような真似をするから反発を食らうので、多くの視聴者は著作者とアナログ時代のような良好な関係を保ちたいと思っているはずです。

 コピーガードによる「不便なデジタル」が解消されない限り、私はアナログ停波の見直しを主張します。停波が延期されれば、少なくとも普通サイズのテレビとレコーダーの売り上げは回復するのではないでしょうか。
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