アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

リメンバー・ミー

2009-08-23 13:43:43 | 映画
『リメンバー・ミー』 キム・ジョングォン監督   ☆☆☆☆

 『八月のクリスマス』が良かったのでもうひとつ韓国映画をDVDで観た。再見である。これも結構いい。

 「時空を越える」系の話である。こういうストーリーは『ある日どこかで』とか『ジェニーの肖像』とか他にもわりとよくあって、韓国の同時期の映画『イルマーレ』もそうだ。プロットがかなり似ている。『イルマーレ』は異なる時代に生きる男女が郵便受けを介してつながったが、この『リメンバー・ミー』では無線機を介してつながる。ちなみにこの無線機で時を越えるというアイデアは、『オーロラの彼方へ』というアメリカ映画でも使われていた。

 『イルマーレ』は時を越えて通信できるようになった男女が恋をし、「時空もの」につきもののタイムパラドックスを利用して過去を変えようとする、といういわば王道的なプロットであるのに対し、この『リメンバー・ミー』はもっと屈折していると言っていいかも知れない。変化球なのである。どこが変化球かというと、まず時を越えて通信する二人の恋物語ではない。なんとなく惹かれあうのだけれども、これはむしろそれぞれの時代におけるそれぞれの恋の顛末を描いた映画である。一方は悲しい結末を迎え、もう一方は幸福な結末を迎える。それからもう一つ、これは運命が変わる映画ではなく運命を変えない映画だ、ということ。これは結構大きなポイントだ。これによって人間の運命というものの神秘をより強く感じさせる仕上がりになっている。二回出てくる守衛のおじさんの「歳月の流れは壊せないもの」という言葉が、この映画の世界観を表している。

 従って未来が変わりそうになるとかそういう派手なクライマックスはなく、わりと地味な結末を迎える。しかしこの控えめな感じがこの映画には似合っている。本作のクライマックスは主人公の男女二人がたった一度だけ出会う場面だ。言葉はない。ただ見つめ合って、別れる。その時ソンウの顔の浮かぶかすかな微笑み。G線上のアリアがこの場面を叙情的に彩っている。

 ソンウを演じているキム・ハヌルは清楚な感じがなかなか良い。しかし20年後の登場でも眼鏡をかけているだけで他は全然変わっていない、というすごい女性だ。いくらなんでももうちょっと老けさせたらどうだろうか。2000年に生きる青年チ・インを演じるのはユ・ジテ。吉川晃司をひょうきんにしたような顔の青年で、短髪を白髪っぽく染めている。しかしこの青年、「おれの容姿が標準以上だから気後れして出てこれなかったんだろ?」などと結構高飛車である。そんなにもてるのかこの男は。

 すぐ映像がスローモーションになったりと多少自己陶酔気味の演出ではあるが、ロマンティックな映画を観たい人にはお薦めである。それにしても『八月のクリスマス』のところでも書いたが、これもエンディング・クレジットで大甘のバラード曲が流れる。こういうのはいい加減やめた方がいいと思う。ちなみにこの曲は歌なしで劇中のBGMとしても使われているが、出だしのメロディが何かに似ているなとずっと気になっていたら、エンド・クレジットのところで思い出した。『殺しのドレス』のテーマ曲である。すっきりした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿