アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

シンクス:スクール・スティンクス

2010-03-11 22:40:11 | 音楽
『シンクス:スクール・スティンクス』 ホットレッグス   ☆☆☆

 ホットレッグスとは何者か? ロッド・スチュワートのヒット曲とはまるで関係ない。これは、実は10ccの前身バンドなのである。エリック・スチュアート、ロル・クレーム、ケヴィン・ゴドレーというメンツからなる、つまりグレアム・グールドマン抜きの10cc。うーむ、レア・アイテムだ。マニア向けである。

 私は大昔、ホットレッグスの『叩けよ、さらば開かれん』というLPレコードを持っていたが、その中にこれらの曲の大部分は、というか多分全部が収録されていた。ああ、あのレコードは今どこへ行ってしまったのだろう。結構好きだったので、世の中がCDに移り変わってからもCD化されないかと時々チェックしていたのだが、影も形もない。が、ある日突然このCDを見つけ、購入したのである。懐かしかった。10ccといえば「スタジオの魔術師」と呼ばれる通り華麗でウイットに富んだサウンド・プロダクションが身上だが、このホットレッグスのアルバムはまだフォークっぽい。バックはアコースティック・ギターだけなんて曲が結構あるし、ノリのいい曲もアレンジが荒く、素朴だ。けれどもその中にもこの人たちらしいユニークな発想とチャーミングなコーラスはちゃんとあって、これはこれでなかなか魅力的だと思う。ただし、おそらく10ccを知らない人がいきなりこれを聞いても駄目だろう。やはりマニア向けである。

 なんといっても『ネアンデルタール・マン』がケッサクだ。ロル、ケヴィン、エリックの三人が新しく買った機材のチェックのために適当に録音したらUKチャート第2位のヒットになった、という冗談のような曲だが、そのせいで急遽ホットレッグスという名前でこのレコードが制作されたわけだ。しかしまあ、ふざけきった曲である。「ぼくはネアンデルタール・マン/君はネアンデルタール・ガール/さあネアンデルタールの愛を交わそう/このネアンデルタールの世界で」という歌詞を簡単なコード進行の上で延々繰り返すだけの曲だ。やたらでかい音でパーカッションが入っていてヴォーカルは小さい。歌っているのは主にロル・クレームのようだ。しかし中間部のブリッジなど単純ながら10ccらしい茶目っ気とアイデアがあって、なんとなく最後まで飽きずに聴かせてしまう。しかし、これがヒットするというのも凄いな。

 それにしても、『叩けよ、さらば開かれん』には収録されていた『トゥデイ』が本作には収録されておらず、これが痛い。なんせ『トゥデイ』はホットレッグス+グレアム・グールドマンで作成された、つまりまさしく10ccメンバーの手になる超初期の楽曲であり、かつ名曲だからだ。ヴォーカルはケヴィン・ゴドレーで、初期10ccに通じる美メロのバラードである。ちなみにこの曲は『Strawberry Bubblegum』というコンピレーション・アルバムに、フェスティバルという別ユニットの名義でアレンジを変えて収録されている。私が知る限りでは、これが現在入手可能なこの曲の唯一の音源のようだ。


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6 コメント

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なんと! LP持ってました (acealice)
2013-02-28 13:32:14
初めまして。
10CCファンで80年代初め、このLP持ってました。今は手元になしです。ヘンな歌がいっぱいで。あ、ケヴィンの声は大好きです。LPジャケ開けると血のついたボロきれやらヌード写真やらチョコバーのかけらやら…およそ英国のワルガキの机の中はこんな感じィ?!なね。私は後にアリス・クーパーファンにもなるのですが、スクールズ・アウトであれ?このジャケットパクった?アリスって思いましたねww
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はじめまして (ego_dance)
2013-03-01 10:10:46
このLPを持っておられたということは、私と一緒で、かなりディープな10ccファンとお見受けしました。最近「コンプリート・セッションズ」が出て「Today」のオリジナル・バージョンも聴けるようになり、喜ばしい限りです。このヘンな感じがいいですね。

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なんと10CCファンですか! (acealice)
2013-03-01 19:40:24
こんにちは!『TODAY』iいいですよね。~today today today~って。10CCのアルバムで一番好きなのはファーストアルバムと『シート・ミュージック』かな。でも『チャンネル・スイマー』とか『ウォータフル』とかも好きで『パリの一夜』も好きです。ま、ほとんど好きなんですね。G&Cも好きです。特に『イズミズム』と『バーズ・オブ・プレイ』最高です。
1989年にミニコミ連中とイギリスのストロベリースタジオに行きましたよ。その後彼らのマネージャーと連絡が取れて1993年に10CCが来日した時東京のANAホテルで2時間くらいお話したりサインしてもらったり写真撮らせてもらったりしました。
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10cc (ego_dance)
2013-03-03 11:17:15
10ccとG&Cには特別な思い入れがあります。初期四枚は全部好きですが、よく聴くのは『オリジナル・サウンドトラック』と『びっくり電話』で、初期のシングルをB面も込みで収録した『Early Years』も愛聴盤です。G&Cは『イズミズム』が好きですね。

それにしても10cc本人たちと話をしたことがあるとは羨ましい限りです。しかも2時間も。曲の話なんかしたら楽しくて仕方がないでしょうね。
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そうですね… (acealice)
2013-03-04 08:17:43
ミニコミの中に秘書をされていて英会話のできる方がいて、後は片言でも通じる程度の人がほとんどで、私は聴きとり不能状態でしたから、曲の話なんて夢のようw。来日コンサートパンフに子供が描いたような恐竜の絵があったのですが、エリックが私に『これは恐竜だよ』と言って。さすがにダイナソーは分かった…という程度ですハハ。グレアムには編集長からこれまでのミニコミ誌(20冊くらい)を渡すと興味深そうにページをめくっていましたね。仕事休んで…東京、名古屋、大阪を皆で追っかけ。ステージパスをもらい、皆とステージ裏で会ったり、コンサート時の写真も撮らせてもらってさすがに恐縮しましたね。いい思い出です。
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Unknown (ego_dance)
2013-03-07 11:33:02
なるほど、それはいい思い出になりますね。やっぱり羨ましいです。
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