カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

「ベルリン・フィルハーモニー」で火事

2008-05-21 10:41:01 | Weblog
 20日午後、世界的に著名な建築家で、少ない予算で個性的に、そして音響効果も考えた設計をしたといわれるハンス・シャローンの代表的建築作品、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団本拠地「ベルリン・フィルハーモニー」で火事があったようですが、幸い大事にはいたらなかったようです。。ドイツの名建築のホールでの火災と聞くと、昔、第二次世界大戦によって、自分の愛した美しい町並みや農村、歌劇場などが次々と瓦礫と化していく様を目の当たりにしたリヒャルト・シュトラウスが、愚かな戦争で失われてしまった古きよき文化への惜別を込めて作曲したといわれる《メタモルフォーゼン》のことを思い起こさせます。。。

 +++以下引用部分です+++

《ベルリン・フィルの本拠地で火災 演奏予定に影響か》
(2008年05月20日23時01分朝日新聞記事)

【ベルリン=金井和之記者】世界的に有名なベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が本拠を置くベルリン市内のコンサートホールで20日午後、屋根の一部などが燃える騒ぎがあった。
 DPA通信などによると、燃えた屋根は大ホール部分で、少なくとも消防車20台が出動した。出火当時はランチ演奏会が行われていたが、聴衆は避難し、けが人はいない模様。出火原因は不明だが、建物内で修繕工事が行われていた。
 放水の影響のため、大ホールで今週末に予定されていた演奏会は別の場所での開催を検討しているという。

http://www.asahi.com/international/update/0520/TKY200805200367.html

 *****

建築家染谷正弘(そめや まさひろ)氏のブログ記事より
http://blog.smatch.jp/sumai/archive/130

画像:ホワイエからホールへの階段(染谷正弘氏のブログより)

(前略)
このコンサートホール「ベルリン・フィルハーモニー」(工事期間1956年~1963年:1963年完成)は、建築家ハンス・シャローン(Hans Scharoun,1893生-1972没)の設計。直角が一箇所もありません。有機的建築、表現主義的建築といわれています。
「人は直角になんか動かない」、そんなコンセプトのもとに建築はできています。この写真は、ホワイエからホールへの階段ですが、そのコンセプトをよく象徴していますね。

 *****

Berlin Philharmonic Hall(写真いろいろ)
http://www.greatbuildings.com/buildings/Berlin_Philharmonic_Hall.html

 +++以上で引用終ります+++
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

The MATTHEW BOOKS

2008-05-20 15:57:25 | Weblog
 何人もの方が最近しばしば日記に書いていらっしゃる話題で、知りました。。。

The MATTHEW BOOKS
http://www.matthewbooks.com/index.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

斉藤斎藤(筆名)さんについて

2008-05-20 15:31:21 | Weblog
 興味深い記事なのでメモさせて頂きます。。。

 ***

http://www5e.biglobe.ne.jp/~kosakuok/keiji/349162488085316.html

記事タイトル:斉藤斎藤(筆名)さんについて
--------------------------------------
投稿者:奥村晃作氏

彼が歌を始めた時の筆名は渡辺○○であった。○○は本名だが、(奥村としては)伏せておく。始めて半年くらい経った折であろうか、渡辺○○は次の歌を発表した。

あいしてる閑話休題あいしてる閑話休題やきばのけむり

奥村はこの歌を絶賛した。この折は、その意味は解けなかったけれど。
おそらく作歌一年余りを経たある時、歌人として立つ折の自分の筆名は渡辺○○ではないことに気付き、あるべき名前(筆名)斉藤斎藤を掴み取ったのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読売日本交響楽団の定期演奏会

2008-05-20 12:38:01 | Weblog
 今朝は昨夜からのだいぶひどい雨と風が続いています。近所の神田川は、朝方に橋の上から覗いたとき、水嵩がかなり増えていて、濁流が渦を巻いていました。この雨風、お昼過ぎにはやむそうなのですが、土砂崩れなどの被害がないことを祈ります。
 昨夕は、雨の降りだす前にサントリーホールに出掛けて、正指揮者下野竜也氏の指揮による読売日本交響楽団の定期演奏会を聴いてきました。開場直前、ホールの前では作曲家の湯浅譲二さんらしきお姿などもお見かけしました。
 まず、音楽評論家東条碩夫氏のコンサート批評日記から引用させて頂きます。

***以下、引用部分です***

音楽評論家・東条碩夫氏のコンサート日記より
《5・19(月)下野竜也指揮 読売日本交響楽団》
http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-209.html

 会場はサントリーホール。
 ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲、山根明季子の「ヒトガタ」、コリリアーノの「ザ・マンハイム・ロケット」「ハーメルンの笛吹き幻想曲」という作品を並べたプログラムは、定期とはいえ、いかにも大胆で、意欲的である。
 下野は曲間のトークで、「ゲテモノ担当のシモノといたしましては」と聴衆を笑わせた。アルブレヒトが去ったあと、読響の現代音楽初演路線を背負って立つ若い正指揮者、下野の奮闘を讃えたい。こういうレパートリーだと、客席に隙間が多くなるのが残念だし、心配にもなるが、読響には御大スクロヴァチェフスキや嵐のラザレフなど客寄せ万全の指揮者たちもいることだから、そのへんのバランスはなんとかなるのだろう。
 山根の作品は読響の委嘱曲。正直言って私にはさほどの感興を呼ばなかったが、異なるテンポが入り乱れる部分の曲想には、些かのスリルを覚えたのは事実だ。あとで作曲者が登場したトークで、「それぞれの時間」というキーワードを聞いて、なるほどと感心したものである。
 一方、コリリアーノの「ザ・マンハイム・ロケット」は少々漫画チックな曲で、ロケットに乗ったイメージで味わう「時空の旅・音楽史の旅」というべきか、いろいろな名曲が見え隠れ。ドタバタと上がって行ったり墜落したりするロケットだが、一瞬笑える。
 最後の「ハーメルンの笛吹き」では、王子様のような派手な衣装を着て、曲の途中から舞台に入って来た瀬尾和紀のフルート・ソロが冴え渡った。
 大詰めでは、「笛吹きのあとについて、子供たちも笛を吹き、太鼓をたたきながらどこかへ行ってしまいました・・・・」という雰囲気で瀬尾と子供たちが客席後方へ姿を消すと、舞台の照明が次第に落ち、オーケストラの演奏も暗くなって行く。さっきまで華やかな衣装の笛吹きがいた場所にも、もう誰もいない・・・・といった寂寥感がいい。
 読響は、打楽器陣を筆頭に、素晴らしい演奏をした。しかし、それにもまして冒頭に演奏された「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲における音づくりの見事さを称賛したい。曲中にその冒頭の和音が引用される「ザ・マンハイム・ロケット」への伏線となるものだが、この演奏がすこぶる良かった。羽毛のような響きの弦に、くぐもった音色の管が調和し、「柔らかく陰翳の濃いハ長調」をつくる。このユニークな音色を実現した下野と読響の呼吸はすばらしい。
 このところ、わが国の卓越したオーケストラの演奏を3つ、立て続けに聴いたことになった。そう、日本のオーケストラもこんなに見事な演奏をしているのだということを、もっと多くの人たちに知ってもらいたい!

***以上で引用終ります***

 私の席は、2階P 3列21番。と書くとよくわからないと思いますが、要はオーケストラのすぐ後ろ側、打楽器奏者のいるところのちょっと上。ふだんは背中の様子しかわからない指揮者の表情、動き、指示を、正面間近つぶさに見られる素晴らしい席でした。
 コンサート冒頭、第一曲目のワーグナー。東条さんも書かれていますが、読響「エンジン」全開の、素晴らしい演奏でした。下野さんの指揮は、まさしく下野流指揮棒ダンス(あえてこう言わせて頂きます)と呼びたくなるような、その動き、表情を見ているだけで音楽を豊かにイメージさせてくれる指揮ぶりでした。ゆたかな音を鳴らせる的確な指揮というのは、なるほどこういうものなのか、とすごく面白かったです。
 二曲目、山根さんの「ヒトガタ」。最初、チェレスタとピアノで提示される音列が、不思議で奇妙で、どこか懐かしい感覚を惹起し、そこからぐんぐんと不思議な山根さんワールドに引きずり込まれていきます。ふしぎな快感とでもいえるでしょうか。それは、絶妙な「音の間合い」による安心感ともいえるのかもしれません。私は「ヒトガタ」というタイトルと、その不思議な音空間から、陰陽道の陰陽師が携帯するという和紙の札「式札(式神)」のことを思い起こしました。。「ヒトガタ」について、プログラムに寄せられた山根さんの文章のなかに次のような一文がありましたので、引かせて頂きます。
「(前略)今回の作品は『ヒトガタ』、つまり文字通りに捉えれば人の形をした《モノ》という題材です。それは人間を形にした人形なのか、捉えきれない他者の模像なのか。それが何であるかはともかくとして、自己が作り出したこれらの様々な形に囲まれつつ考えることは、この世に生まれてきて、誰かと共感したい、ということです。時間を共有するこの空間の中で、様々な形の標本を感じ取っていただければうれしく思います。」
 山根さんの「ヒトガタ」、是非ともまた再演を聴かせて頂きたいです。
 三曲目、四曲目のコリリアーノ作品。私はこれまで、コリリアーノという作曲家の名前を聞いたことはあってもその作品をきちんと聴いたことがありませんでした。こんかいこの二曲を聴いて、こんなに面白い作品を書く人なのかとびっくりしました。

 ドーー・シーラーソオ・ドオ・ドオ・ドオ・・・・・

 今日も、四曲目の楽しいコンチェルトのおしまいの方で出てきたユニークな金管のフレーズが頭にこびりついて離れません。。。

 ドーー・シーラーソオ・ドオ・ドオ・ドオ・・・・・

 昨日のコンサート、おかげさまですごく楽しませて頂きました。有難うございました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白川先生の正法寺HP

2008-05-19 12:28:45 | Weblog
 メモです。。。

お寺の学校で教えて頂いた白川淳敬先生の正法寺HP
http://www.sol.dti.ne.jp/~shiraka/index.html

そのなかの、これまでにインドに何遍も行かれているインド通・白川先生の書かれたカレーに関する日記記事。引用させて頂きます。
「2007/9/18
今日は千代田区の千鳥が淵墓苑で行われた、浄土真宗本願寺派「千鳥が淵全戦没者追悼法要」に雅楽で出勤しました。久しぶりのこの法要でしたし、龍笛の主管もしました。歩きながら演奏する路楽もありましたのでのでちょっとお疲れモードです。ハァ。
帰りにカレーを食べようと思ったら、今日は火曜日、ナイルレストランは定休日。では、と言うことで新宿の八百屋の隣のインド料理へ(店名はパトワール)。タンドールは山宮かまど工業所製。ミックスグリルと裏メニューのトマトスープを注文。このトマトスープ、いつもは料金がかかるのに、今日は「サルビス」(インド人はRの発音をしっかりする)と言って出してくれました。トマトスープはどうやら賄い用のようだ。おいしいので調子に乗っておかわりまでしました。注文したミックスグリルが大変でした。普通、メニューの写真より実物の方が見劣りするのに、ここは逆でした。写真よりはるかに盛りがよいのです。シークカバブ2本、タンドリーチキン2ピース(大きい)、エビをタンドリーチキンのように焼いたもの4尾とサラダとナン1枚。これで1360円だったかな。驚愕の安さ。量も迫力ありました。
 そのあと手の空いたシェフがお食事になった。フルーツと野菜を食べている。ベジタリアンなのかと思って尋ねたらイスラム教徒で今「ラマダン」の時期だそうだ。日中は断食。一日一食夕方に食べるようである。そのおすそ分けが来た。もう食べられません。せっかくなので頑張って食べましたが、さすがにナンは少し残しました。
 良い店です。こういう待遇を受けるのは、常連のようですが、実は今日で2回目です。
 ふしぎな店です。」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今日、明日

2008-05-18 21:36:40 | Weblog
 今日も朝から夕方までお寺で法事や引っ越しのお手伝いをさせていただき、お寺からの帰途、豊島郵便局に寄って、局内の片隅の机で即席の9首を塔短歌会原稿用紙に書き付けて投函。こんかいは小池さんを主人公とした物語短歌のつもりのもの。

小池さんがこぼしたラーメンつゆ三滴をしぼつて日本画描いてゐた姉

この色には小池さんのラーメンつゆがはいつてゐます。姉の作品解説に、春

……

 明日はしごとのあと、夜、山根さんのオーケストラ作品が世界初演されるサントリーホールでの読売日本交響楽団コンサートを聴かせて頂く予定です。たのしみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤ん坊の夢

2008-05-17 06:57:50 | Weblog
 今週は所属させて頂いている本郷のお寺の耐震補強のための建て替え引っ越し作業の山場で、私は日常のしごとの合間に、昨日、今日、明日の三日間肉体労働のお手伝いに伺うことになっています。今日は、肉体労働だけでなくて、法要と法話会もある日です。そんな日々のなか、一昨日は、日本の心理学研究の泰斗でいらっしゃるT大学F先生をご自宅にお訪ねしてご挨拶させて頂いたばかりか素晴らしいご本を頂戴し、昨日は肉体労働の後、友人のAさんの素敵なオーケストラコンサートを聴かせていただきました。今日もこれからお寺です。行ってきます。
 タイトルは、昨日、非常にリアルな赤ん坊の夢を見たことによります。じつは、もうひとりの妹のところがもうすぐ初の出産ということになっていて、甥っ子らしいのですが、そのことが夢にでてきたのかなという感じです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

興味深いコンサート情報

2008-05-15 15:49:27 | Weblog
 興味深いコンサート情報のメモです。。。

 *****

エポケストラ・ニッポン第二回定期演奏会
http://www.epochestra.net/concert/regular2.html?adid=head20080513

日時:2008年5月16日(金) 18:30開場 19:00開演
場所:かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール(1階席のみ)
〒124-0012 東京都葛飾区立石六丁目33番1号
TEL: 03-5670-2222  FAX: 03-5698-1546
交通:京成青砥駅下車徒歩5分(又は京成立石駅下車徒歩7分)
http://www.k-mil.gr.jp/access/sym_access.html

入場料:2,000円(全席自由)
※未就学児は無料で入場いただけます。
当日券もございますので飛び入り鑑賞大歓迎です☆

今回の定期演奏会は、ハイドンとブラームスを取り上げます!
「う~ん名前を聞いただけでも難しそう…」
なんて思っている方でも気軽に来てください♪
ちゃんとしたクラシック音楽を生で聴いてみたいけど、何とかオーケストラの演奏会とか怖くて行けない…
そんな方でも大丈夫!エポケストラの演奏会は着飾る必要はありません
ジーンズOK、パンクOK、ゴスロリOK、どんな格好でもいいんです。
興味本位でもいいんですヽ(´ー`)ノ
そんな方たちの為のエポケストラ・ニッポンですから☆

【プログラム】
●ハイドン:交響曲第100番『軍隊』
●ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
●ブラームス:交響曲第1番

指揮:松井 慶太
管弦楽:エポケストラ・ニッポン

指揮者の松井さんについて(*ドラマ「のだめカンタービレ」千秋役の指揮実演の黒子を担当)
http://ameblo.jp/rani/entry-10060674641.html

 *****

読売日本交響楽団第471回定期演奏会
http://yomikyo.yomiuri.co.jp/season/2008/2008subscription.htm

5月19日(月) 午後7時開演 サントリーホール(赤坂)
指揮:下野 竜也
フルート=瀬尾 和紀

◆ワーグナー : 楽劇<ニュルンベルクのマイスタージンガー>第1幕への前奏曲
◆山根明季子 : オーケストラのための「ヒトガタ」(世界初演)
◆コリリアーノ : ザ・マンハイム・ロケット
◆コリリアーノ : <ハーメルンの笛吹き幻想曲> (フルート協奏曲)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

村上春樹氏:「毎日新聞」ロングインタビュー(memo)

2008-05-15 11:23:32 | Weblog
 興味深いのでメモさせて頂きます。。。

《村上春樹氏:「毎日新聞」ロングインタビュー 僕にとっての<世界文学>そして<世界>》
 作家、村上春樹さんがこのほど毎日新聞の単独インタビューに応じた。『海辺のカフカ』(02年)以来となる大長編小説を執筆中という村上さん。多忙な時間を割いて、最近翻訳した名作への思いから出版界の古典新訳ブーム、「9・11」後の時代認識に至るまで幅広く、熱く語った。【構成・大井浩一記者】

第1回=翻訳文体の限度(賞味期限)は50年
http://mainichi.jp/enta/book/news/20080512mog00m040033000c.html

 村上さんは創作と並行してアメリカ文学の翻訳、紹介に積極的に取り組んできた。そうした中で、「これだけはやりたいと思っていた」重要な作品が、サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、チャンドラー『ロング・グッドバイ』(以下では『L・G』)、カポーティ『ティファニーで朝食を』の四つの長編小説。これらを03年から今年にかけて次々に新訳・刊行した。いずれも各作家の代表作というだけでなく、高校時代以来、何度も繰り返し読んできた「個人的に好きな」作品でもある。
 「フィッツジェラルドはずっと訳してきたけど、それ以外は同時代的なものを中心にやってきた」村上さんが、「古典」に挑むようになった理由は三つある。一つは「だんだん翻訳の手ごたえがつかめてきて、そろそろ僕の腕でもできるんじゃないか」と考えたこと。次に「古い翻訳がちょうど『賞味期限切れ』の時期に来た」タイミング。そして「同時代の新しい作品の翻訳は若い翻訳者がやるべきだ」という考えからだ。
 二つ目の理由については、日本語の文体そのものの変化により、「限度(賞味期限)は50年」と話す。今は1960年代前後の文学全集ブーム時に盛んに訳された作品が、次々と「期限切れ」を迎えているという。
 4作に共通する要素として、村上さんは「都会が舞台になっている」ことを挙げる。確かに『キャッチャー』『ギャツビー』『ティファニー』はニューヨーク、『L・G』はロサンゼルスが舞台だ。「結果的に都会小説みたいな文体の作品が僕の翻訳の中心になっていますね」
 この「文体」こそ、村上さんが4作それぞれに魅力を感じ、探究してやまないところだ。中でも「チャンドラーの文体にすごくひかれる」と言葉に熱を込めた。「あの人の文体は何か特別なものを持っている。何が特別なのか昔から疑問だったんだけど、訳してみてもまだ分からないですね」
 その文体の秘密に対する強い関心は、『L・G』に長文の「あとがき」を執筆したところにも表れている。そこで村上さんは、〈一種のブラックボックスとして設定〉された「自我」の扱いに、〈チャンドラーの創造的な部分〉を見ている。
 一方、フィッツジェラルドとカポーティの文体については「とにかくうまい、きれい、リズムがいい、流れる。これに尽きる」と話した。とりわけフィッツジェラルドからは「文章に対する志の高さ」を得たという。「だから自分の書く小説の文章もまだ直せると思う。それはフィッツジェラルドの文章が僕にとってスタンダードになっているから」
 また、この二人の文章は「僕が書くタイプの文章ではない」と、自らの作品の文体も分析してくれた。「そんなに流麗な文章は僕は書かない。ただ、そういう文章の艶(つや)とかリズムとか流れを、僕はもう少しシンプルな言葉で出したいと思っている」=つづく

第2回=物語の骨格、文章のリズム 名作4作の翻訳通じ学ぶ
http://mainichi.jp/enta/book/news/20080513mog00m040050000c.html

 4作の翻訳は、自身の創作にとって「大きな意味がある」と話す。「物語の骨格は、フィジカルな意味でしっかりしなくてはいけないという気持ちが強くなった」。もう一つ、強調するのが「文章のリズム」だ。「小説が人をひきつけるいろんな要素の中で、リズムは大きい。リズムの滞っている小説は、一部の人が長く読んだり、たくさんの人が短期間読むことはあるけれど、たくさんの人が長い時期ずっと読み続けることはない」
 定評を得ている村上訳の読みやすさも、この辺に鍵がありそうだ。実際、「日本語と英語では言葉の配列が違うから、その通りに訳してもなかなかリズムが出てこない。そこでどうリズムを出すかが翻訳家それぞれの個性になってくる」と話した。
 興味深いのは、「英語の文体を日本語に移し替えていくのは、数学の問題を解くのに似ている」と語る独特の翻訳論。「どうしても解けない数学の命題を一日がかりで考えるのと同じで、なぜここにこの言葉があるのかと、ずうっと考える。向き不向きもあるけど、僕はそういうのが好きだから」
 では、自ら火付け役ともなった最近の古典作品の新訳ブームを、どう見ているのか。村上さんは、教養の「並べ替え」が進行しているという。「新訳を出す価値のあるものが出版されるわけです。並べ替えが行われて、新しい教養の形が見えてくるんじゃないか」。自身も、既に進めているチャンドラー『フェアウェル・マイラブリー(さらば愛(いと)しき女(ひと)よ)』など、「昔から訳したいと思っていた作品」の翻訳に引き続き意欲を示す。
 実は、村上さんにとって特別な存在の小説はアメリカ文学以外にもある。以前から、『ギャツビー』『L・G』とともに「これまでの人生で出会った最も重要な3冊の本」に、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』を挙げていた。「僕が個人的に偉大と考える作家を一人だけ選べと言われたら、ドストエフスキー」と断言する。「『カラマーゾフの兄弟』や『悪霊』が僕にとって意味するのは、小説としての骨格の大きさ。これはもう別格ですね」
 バルザックやディケンズら他の文豪との違いは何か。「ドストエフスキーはだんだんすごくなっていった。モーツァルトやシューベルトのような天才肌というよりは、ベートーベン的というか、苦労しながらたたき上げて、積み上げて、最後に神殿みたいな構築物を作り上げた」=つづく

第3回=新作は大長編に
http://mainichi.jp/enta/book/news/20080514mog00m040054000c.html

 執筆中の新作についても答えてくれた。よく知られるように、村上作品には短編、中編的な長編、そして『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』のような大長編という三つの系統がある。ファン待望の次の大長編は「06年のクリスマスから始めて、1年5カ月ぐらい書き続けている」。つまり『ねじまき鳥クロニクル』を超える、村上さんの最長の小説になりそうだという。また、「僕は宿命的に、一人称の小説から、だんだん三人称の小説に移行している」と、この作品が三人称で書かれることも示唆した。
 新作の背景として、カオス(混沌(こんとん))的な状況に陥った冷戦後の世界に関する認識も語った。その予兆は95年の阪神大震災と地下鉄サリン事件にあり、「9・11」事件後に顕在化した。「僕が今、一番恐ろしいと思うのは特定の主義主張による『精神的な囲い込み』のようなものです。多くの人は枠組みが必要で、それがなくなってしまうと耐えられない。オウム真理教は極端な例だけど、いろんな檻(おり)というか囲い込みがあって、そこに入ってしまうと下手すると抜けられなくなる」
 だが、そうした状況でこそ文学は力を持ち得るという。「物語というのは、そういう『精神的な囲い込み』に対抗するものでなくてはいけない。目に見えることじゃないから難しいけど、いい物語は人の心を深く広くする。深く広い心というのは狭いところには入りたがらないものなんです」
 来年にはデビューから30年の節目を迎える村上さん。その作品は今や40を超える国・地域で翻訳されている。これほど世界的に読まれた日本人作家は過去に例がない。「91年にアメリカのプリンストン大に初めて行って、生協の書店でやったサイン会には30分で4、5人しか来なかった。今はアメリカでサイン会を開くと2時間はかかる。もちろん、うれしいけど、なぜこんなに読まれるようになったのか、よくわからない」
 最後に、理想とする文学について聞くと、即答が返ってきた。「何回でも読み返せる作品です。それ以外の試金石はない。そのために、リズムのいい文章で人の心に届く物語を書きたい。それが僕の志です」(インタビュー・完)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Einstein letter

2008-05-14 14:43:09 | Weblog
 メモです。。。

Einstein letter up for auction by Bloomsbury
(By Jill Lawless, Associated Press Writer,updated 12:19 p.m. ET May 13, 2008)

http://www.cnbc.com/id/24597842/for/cnbc

LONDON (AP) -- Albert Einstein: arch rationalist or scientist with a spiritual core?
A letter being auctioned in London this week adds more fuel to the long-simmering debate about the Nobel prize-winning physicist's religious views. In the note, written the year before his death, Einstein dismissed the idea of God as the product of human weakness and the Bible as "pretty childish."
The letter, handwritten in German, is being sold by Bloomsbury Auctions on Thursday and is expected to fetch between $12,000 and $16,000.
Einstein, who helped unravel the mysteries of the universe with his theory of relativity, expressed complex and arguably contradictory views on faith, perceiving a universe suffused with spirituality while rejecting organized religion.
The letter up for sale, written to philosopher Eric Gutkind in January 1954, suggests his views on religion did not mellow with age.
In it, Einstein said that "the word God is for me nothing more than the expression and product of human weaknesses, the Bible a collection of honorable but still primitive legends which are nevertheless pretty childish."
"For me," he added, "the Jewish religion like all other religions is an incarnation of the most childish superstitions."
Addressing the idea that the Jews are God's chosen people, Einstein wrote that "the Jewish people to whom I gladly belong and with whose mentality I have a deep affinity have no different quality for me than all other people. As far as my experience goes, they are also no better than other human groups, although they are protected from the worst cancers by a lack of power. Otherwise I cannot see anything 'chosen' about them."
Bloomsbury spokesman Richard Caton said the auction house was "100 percent certain" of the letter's authenticity. It is being offered at auction for the first time, by a private vendor.
John Brooke, emeritus professor of science and religion at Oxford University, said the letter lends weight to the notion that "Einstein was not a conventional theist" - although he was not an atheist, either.
"Like many great scientists of the past, he is rather quirky about religion, and not always consistent from one period to another," Brooke said.
Born to a Jewish family in Germany in 1879, Einstein said he went through a devout phase as a child before beginning to question conventional religion at the age of 12.
In later life, he expressed a sense of wonder at the universe and its mysteries - what he called a "cosmic religious feeling" - and famously said: "Science without religion is lame, religion without science is blind."
But, he also said: "I do not believe in the God of theology who rewards good and punishes evil. My God created laws that take care of that. His universe is not ruled by wishful thinking, but by immutable laws."
Brooke said Einstein believed that "there is some kind of intelligence working its way through nature. But it is certainly not a conventional Christian or Judaic religious view."
Einstein's most famous legacy is the special theory of relativity, which makes the point that a large amount of energy could be released from a tiny amount of matter, as expressed in the equation EMC2 (energy equals mass times the speed of light squared). The theory changed the face of physics, allowing scientists to make predictions about space and paving the way for nuclear power and the atomic bomb.
Einstein's musings on science, war, peace and God helped make him world famous, and his scientific legacy prompted Time magazine to name him its Person of the 20th Century.

 ***

Bloomsbury Auctions News 2008-05-13
[Einstein Letter]

http://www.bloomsburyauctions.com/index

One of the highlights of Bloomsbury Auctions’ 25th Anniversary sale on 15th May 2008 is an unrecorded letter from Albert Einstein, in which the theoretical physicist wrote of his religious beliefs (lot 303).
Handwritten in pen in 1954 to the philosopher Eric Gutkind, in this extraordinary letter Einstein writes, ‘The word god is for me nothing more than the expression and product of human weaknesses, the Bible a collection of honourable, but still primitive legends which are nevertheless pretty childish.’ Einstein was Jewish but went to a Catholic primary school, receiving private tuition in Judaism at home. He declined the offer from the newly formed state of Israel to be its second president. In this letter, which was written in German the year before his death, Einstein wrote, ‘For me the Jewish religion like all others is the incarnation of the most childish superstitions. And the Jewish people to whom I gladly belong and with whose mentality I have a deep affinity, have no different quality for me than all other people. As far as my experience goes, they are no better than other human groups, although they are protected from the worst cancers by lack of power. Otherwise I cannot see anything ‘chosen’ about them.’
Although Einstein emphatically rejected conventional religion, he was affronted when his views were appropriated by atheists, whose lack of humility he found offensive.
Einstein’s letter is expected to fetch between £6000-8000 at Bloomsbury Auctions, 24 Maddox Street, London W1S 1PP (Tel: 020 7495 9494 email info@bloomsburyauctions.com) on Thursday 15th May. The sale of the letter would be a fitting way to celebrate Bloomsbury Auctions’ 25th anniversary; today it sells more books than any other auction house in the world.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする