カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

メモ二題。「メンコン蛙」と「笹原」のこと。

2006-06-27 14:47:16 | Weblog
 メモ二題。「メンコン蛙」と「笹原」のことです。



 まずは、北原白秋の歌に出てきた「メンコン蛙」のことです。

 北原白秋歌集『黒檜』から。

土もぐるメンコン蛙(がへる)眼ばかりを上のぞかせて吼ゆとふかなや  北原白秋

ラヂオにはメンコン蛙(がへる)くくみ啼き鳴る瀬のうつつ螢が飛ぶも  北原白秋

 韓国語の「メンコンイ」がかなり怪しい気がします。。。

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ソウルアカデミーブログ
http://seoulac.exblog.jp/1905305

第 45号 ソウルアカデミー ニュース ■□■
□■今週の知っとく単語、会話及び韓国文化―李 芝善先生

「じむぐりがえる」

 皆さんは「メンコンイ」というフランス語のような韓国語を聞いたことがありますか?
 メンコンイとは何だと思いますか?日本は韓国よりも早く田圃から彼らの歌声が聞こえて来ますが、ちょうど今頃ですね。メンコンイとはメンコンイ科の両生類の一つで、「じむぐりがえる」のことを言います。普通の蛙とは泣き声が違いますので、皆さんも聞いたらすぐ分かると思います。体は4cmほどで、背中は青みを帯びた黄色です。頭と胸に薄い黄色の柄があり、蛙に似ていますが、もっとずんぐりしてみずかきがありません。夜に土中から出て活動し、曇った日や雨が降る時メンコンメンコンという音を出します。
 この言葉にはもう一つの意味がありますが、見た目が鈍い感じからでしょうか…。愚な人、または、不器用で、言葉が息苦しい人などを冷やかし調でいう言葉ですが、親しい関係でも、自分自身にも使えます。不器用なところが魅力で、かわいい時に使ってみてください。使い方によっては、悪い言葉にもなりますので、使う時には親しみを込めて言いましょう。(了)

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 次いで、「笹原」のことです。

 宮柊二歌集『多く夜の歌』の「父最期」の一連より。

花をもて埋(うづ)めし父のなきがらを一夜(ひとよ)守(も)りつつ蛙(かはづ)ききけり  宮柊二

笹原の笹のつばらに朝日来てこの静けさの悲しき朝かも  宮柊二

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【塚本邦雄 著『百珠百華 葛原妙子の宇宙』(砂子屋書房、2002年)巻頭の「百韻朗朗」より】

 先蹤(せんしょう=先人の事跡)のない文学はない。(中略)藤原俊成に「紫式部、歌よみの程よりも物書く筆は殊勝の上、『花宴』の巻は殊に優あるものなり。源氏見ざる歌よみは遺恨の事なり」なる名言(一喝)を吐かせた、『六百番歌合』のお題「枯野」における、左方、藤原良経の歌「見し秋を何に残さん草の原ひとつに変る野辺のけしきに」に対する、右方人(みぎかたうど)の陳難(=相手方の歌に対する非難、難癖、文句)「『草の原』聞きつかず(=このような歌で『草の原』が使われるのを聞いたことがない)」にしても、右方人は必ずしも俊成の一喝に恥じてばかりいる必要もなく、あれは「先蹤」の複雑微妙な存在と本歌取りのむづかしさを洞察した俊成に劣らぬ名言であった、と考えようによってはいえるのではあるまいか。すなわち、「草の原」が源氏物語出典の言葉であることぐらい、時の右方人も十分に承知していたはずだ。(中略)「源氏見ざる歌よみ」どころか、十分に読破していたからこそ、「草の原」が、源氏物語の「花宴」では瑩域(えいいき)・墓所として用いられており、「花宴」に出てくる朧月夜内侍の歌など、そのように解釈しなければ意味不明になると理解していた。だからこそ、右方人は「墓所(くさのはら)聞きつかず」と言ったのだ。古歌に「草の原」を一首の中にまじえた例は三十や五十ではきかないだろう。もちろん源氏物語以前にも多々あったはずだ。右方人のあの発言は、「花宴」で最もクローズアップされた「墓」の忌詞(いみことば)風表現としての用語をば、事もあろうに、歌合歌に用いるとは「聞きつかず」、と幾分の諷刺の気持ちも込めて発せられたものだ。そして、さらに皮肉な事に、詠んだ当人である良経自身も、この「草の原」に、源氏物語風、忌詞風の意味など、いささかも期待してはいなかったと思われるのだ。(後略)

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 深読みかもしれませんが、宮さんの二首目、「草の原」=墓、という源氏物語にある忌み言葉的用法を踏まえて、「笹原」を詠まれたのではないか、とふと思いました。どうなのでしょうか。。。
コメント
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