晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

しし座γ流星群

2009年11月16日 | しし座流星群
久しぶりに、しし座流星群が話題になっています。

フランス出身の天文学者ボバイヨン氏の予報によると、今年のしし座の
ZHRは500個に達するとか…、その後この予報は下方修正されましたが
この数字を見て2001年のしし座流星雨の記憶がよみがえってきました。


そう、2001年11月18日-19日に見られたあの流星雨…
今考えてもあれは夢だったのでは…と思える出来事でした。

あの日何があったのか、記憶の糸を紡いでみましょう。

2001年11月18日の日曜日、その日はベガルタ仙台がJ1昇格を決めた日で
仙台は大いに盛り上がっていた。NHKローカルでは急遽、昇格特番を始めた。

そのテレビを横目で見ながら流星観測の準備を行い、22時過ぎにさあ出かけよう
としたとき、2階から当時4年生の娘が、「流星見に行くの?あたしも行く!」と
言って降りてきた。こっそり行くはずだったが気配を察知したようだ。

何日も前から行きたいと言ってはいたが、観測時刻は深夜2時から明け方まで
である。どう考えても小学生には無理な時間帯だ。

ましてや本当に流れるという保証はない。しかし何度も「お願い!」と真剣な目で
訴えられては連れて行くしかない。たぶん、観測地に着く前に寝てしまうだろう…、
という気持ちもあったので渋々同行させることにした。1時間遅れの出発だ。
観測予定地は北上川の河口にある長面海水浴場、車で2時間半の道のりである。

三陸道を北上するとフロントガラスには雨がポツポツ…、北西の季節風にのって
雲が上空を流れている。時雨だ。海沿いまで雲が流れたら見ることはできない。

結局、無駄足になるかもしれない。しかし、現地の天気は現地に行かないと
分からない。前進あるのみだ。

石巻を通過して国道45号を北上、さらに車を走らせ曽波神を通り過ぎたとき、
信じられない光景を目にした。

フロントガラスの向こうを火球がゆっくり流れ、山の向こうへ消えていった…。
「え…、今のは何?」

「まさか…」運転席側の窓から空を見ると…(脇見運転はやめましょう)

なんと暗い空の向こうで流れ星がぴゅんぴゅん飛んでいます。
「わわわ、始まっている!」時計を見るとまだ0時半を過ぎたばかりです。

後ろの座席にいる娘に
「外見て!流れ星が流れてる!」と言うと
「うん、さっきから見えてる…」と言う返答。

「え~、何で教えてくれないの~」と聞くと
「だって、流れ星だと思わなかった~」と答える娘…、
「……」(じゃ~、何に見えたんだよ~)

とにかく急がなくては。ピークの時間が早まったのだろうか? 
などと考えながら飯野川橋を右折して北上川沿いに東へ。

ここまで来ると辺りは真っ暗だ。運転席側の窓から空を見ると
「どひゃ~」次から次へと流れ星が飛んでいる。まずい、
観測地を変更しなければ、この辺でどこか適当な場所は…、

少し進んだところで左側に農道が見えたので、それを直進。
車道からかなり離れたところで車を止めて外に出てみる。
周りは田んぼだ。遠くに街灯がいくつかあるが、ここで妥協しよう。

早速、観測準備です。まずコットを組み立てて、その上に
寝袋を広げる。これで娘の観測場所は完成。

娘に「流れ星数えてね~」と頼み、こちらはカメラのセッティング、
フィルムはASA100のフジクローム。リバーサルである。
レンズはキャノン50mm F1.4 固定撮影だ。

「わ~」オリオン座を突き抜ける流星が2つ同時に流れる。

空に平行線が一瞬浮かんだ。
「2つ同時に流れる流星が見られるなんて…」
「すご~い」娘も大喜びです。

「だめだ、レンズを広角に変えよう」下を向いてレンズを外した瞬間…、
「シュボッ…」突然辺りが昼間のように明るくなり地面に自分の影ができた。
「わあ~、すご~い」娘の声が聞こえる。1時45分に流れた「-8等級の大火球」だ。

すぐ上を見るが、当然火球は見えるわけもなく…「おお!流星痕だ!」
しかもとびきり特大です。ニコンの双眼鏡で流星痕を見ていると「わー!」
流星痕のすぐ脇をさらに火球が流れた。(なにが起きているんだ~、すごすぎる)

北の空では火球が何個も流れ…


至る所で流星痕が揺れ動き…


東の空を見ると放射点から流星が飛び出す様子がリアルタイムで分かる。

星座線入りの写真はこちら→PHOTO

南の空では弓の名人オリオンが何度も射抜かれ…


そして西の空では…

星が地面に向かってまっすぐ降り注いでいた。

どこを向いても星が流れている。気づくと両手を広げて空を仰いでいる自分が
そこにいた。「この世の中にこんな瞬間が本当にあるなんて…」

思い起こせば29年前の1972年…、父と姉と3人で見たジャコビニ流星群の世紀の
空振り…、あの日からいつか見たいと思っていた流星雨が今目の前にある。
「もう2度と見ることはできないだろう。しっかり目に焼き付けよう…」

時間が過ぎると放射点が高くなり、どこを向いても星が地面に向かって
降り注ぐ。まさに「星降る夜」である。このまま時間が止まってくれたら…。

その時ふと娘を見ると、寝袋の中でブルブル震えている。
「わっ、寒いのか?」「…ちょっと、」
無理もない気温は4度、時間はまもなく4時だ。限界である。

車のエンジンをかけて娘を車内に避難させ、撤収開始です。
空を見ると、数は少なくなったがまだ流れ星が飛んでいます。
今日は平日月曜日です。娘の登校時間が迫っています。
まだ流れ星が流れる空を気にしながら、車を走らせた。

あれから8年…、娘は高校3年生になったが、今でもあの夜のことを
思い出して話題にしている。「今年は流れるかな~」と…

今年、ベガルタ仙台が7季ぶりにJ1昇格を決めた。ということは…
ひょっとしたら流れるかも~、
しか~し、17日-18日の予報は今のところです。
天気予報が良い方にずれることを期待しましょう!