駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

薬だけって、どういうこと

2014年08月26日 | 世の中

            

  足が浮腫んだから、診てほしいとNさんがやってきた。二年に一度ほど風邪を引いたとやってくる71歳の男性だ。何でも三週間ほど前から夕方になると足が浮腫んでくるらしい。出された足を見ると成る程、くるぶしが隠れるほど浮腫んでいる。

 さてと話を聞き始めると、二年前から通りの向こうの某医院で高血圧の薬を貰っていると言う。どれどれとお薬手帳を見せて貰うと高血圧だけではなく脂質異常症や抗血小板薬も入っている。

 「なんだ、血圧やコレステロールの薬を貰っているじゃない。そこで診て貰らってよ。わざわざ、ここに来ることはないよ」。

 「いや、そこは薬を貰いに行ってるだけだから」。

 「えー、だって血圧やコレステロールの薬に血管が詰まるのを防ぐ薬を貰っているんだから、浮腫みも診てくれるはずだよ、話してみた?」。

 「いーや、でも薬を貰っているだけだから」と不満そうだ。

 「あのね、血圧やコレステロールの薬を出すと言うことは身体全体を診ますということなんですよ。私が診察すれば今飲んでいる薬を変えたり止めたりすることになるかもしれないんだよ、それは困るでしょ。とにかく、向こうで話をしてみてください」と差し戻してしまった。

 別に邪険にしたつもりはないが、話を聞いて貰う医者、薬を貰う医者と妙な使い分けはよして戴きたい。そういえば、この前、

 「隣の家が建て増しで、境から10cmの所まで迫ってきたのよ。これって違反じゃない」。

 「うっ」と詰まると

 「先生に聞いてもしょんないんだけど」と言うおばさんが居たな。看護師まで

 「聞いて貰うと気が済むもんね」だと、ニャロメ!

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私は二歳

2014年08月25日 | 診療

                  

  Hきんさんは八月生まれだ。先日受診された時、椅子に座ると二本指を立てて「私は二歳」とにっこりされた。きんという名前は長生きする名前なのだろうか、102歳になられた。当院に4名居られる100歳以上、男一人女三人、のトップを走っておられる。100歳以上の方はみな何とか一人で歩け、耳は遠くても頭はしっかりしておられる。耳元で話せばきちんとした会話が出来る。

 Hさんは現代史をそのまま生きてこられ、戦争未亡人になられたが三人の子供を育て上げ、今は長男夫婦と住んで居られる。と言ってもこの二年ほどのことで100歳までは独居だった。

 やや面長の目元の涼しい穏やかな方で、皺の中にある笑顔を見ながら「私は三歳」が聞きたいと思ったことだ。

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There is no place like T

2014年08月24日 | 小考

           

  ユリカモメに乗り両脇に迫る高層ビルを抜けて竹芝辺りに来ると、東京湾越しに林立するビル群が見えてくる。この程度の都市景観は左程珍しくないという声も聞こえるが、私は比類ない都市景観と思う。私が知っている大都会はニュヨーク、ロンドン、パリそしてローマぐらいだが、中でマンハッタンの方がビルの高さや稠密度では上と言われる方も多かろう。私が東京を特別で比類ない大都会と感じるのはそのflneなところにある。

  上手く一言で表現出来る日本語を思い付かない。きめ細かく清潔で繊細な街並みと申し上げればよいのだろうか。勿論そんな所ばかりではないという反論もあるだろう。しかし、限られた私の経験からの感想を首肯される方は多いと思う。

  地方の時代と言い書きされる方が多いが、地方に骨を埋める足場から発言して頂きたい。時々訪れて、地方の時代と教えて頂いても鼻白んでしまう。

  女性MR(独身)の中に、退社して東京の会社に再就職された方が何人も居られる。何故かは詳しく存じあげないが、東京の魅力が預かっているのは間違いない。

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つまらんこと

2014年08月23日 | 小考

                 

 安陪首相が広島災害の報にゴルフを直ぐ止めなかったとか橋本聖子議員がキスを強要したとか、反省を求めてもよい事柄ではあっても、重大なミスや大きな問題ではない。地位のある者を咎めてやろうという底意が見えて、浅薄な問題提起に思える。適当な言い訳や説明をするだろうが、それでお終い。言いがかりのような取り上げ方は詰まらない。

 外交、エネルギー問題、特定秘密保護法、憲法解釈変更など、本筋根幹の問題に迫らなければ、眼が逸れるだけだと思う。

 事故や惨事は誰それが悪いよりもどうすれば防げたか、詰まるところどう報道していれば防げたかを検証して戴きたい。

コメント (2)
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つまんないなあ

2014年08月22日 | 人物、男

                

 つまいないなあなどというと不謹慎だと言う人が居るかも知れない。勿論、悲しい、寂しいという気持ちもあるが、つまんないというのが一番正直な気持ちだ。

 数日前主治医から、一昨日は奥様からお電話で失礼とは思いますがと、亡くなったという連絡とお礼が入った。 

 Kさんは七十八歳だった。宿痾の糖尿病があったとは言え、もう少し生きられたかも知れない。少なくともまだまだ元気と感じさせてくれる方だった。今回も当然二三週間で退院できると思って送り出したのだが、思いかけず亡くなってしまった。十七年前脳梗塞で倒れてから通院を始められ、六年前に心筋梗塞を起こされた。最近は不整脈もあり、年に一度くらい心不全で病院にお世話になっていた。

 元々運動神経が良かったのか右の片麻痺は通院を始められてからも回復し、ひょこひょこと器用に歩かれた。、言葉もスムースではないが当意即妙で、不自由な動きや軽い息切れに不平も言われず、「先生、トルコはいいところだよ、一遍行ってみな」と勧めてくだすった。そうかというので一度はと思っていたイスタンブール訪問を叶えることができた。

 通院していたのに心筋梗塞を起こしても恨みがましいところは皆無で、「ははあ、だいぶんいいよ」と笑っておられた。いつも「じゃあ、また」とにっこりしながらひょこひょこと診察室を出ていかれた。不平や愚痴を言われず、調子悪くて入院を勧めた時も「そうね」と素直に従がって頂けた。又会えたと楽しい患者さんだった。

 正直、こうした患者さんはそう多くはない。会えなくなってつまんないなあ。

コメント (4)
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