駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

言霊は響くけれども

2013年04月25日 | 町医者診言

                    

 安倍政権の前へ外への方向性には賛成しているが、その中身については疑問があり賛成しかねるものも多い。国益とか正しい史観という表現は、内容を素通りしては張りぼてに過ぎまい。

 益とか正とか、良いように響くけれども中身を煎じつめなければ、好印象を与えることに依って反対しづらくして異論を排除し、自分の言い分を通そうとする魂胆が透けて見える。国民というのは誰のことか心配になる。果たして私は員数に数えられているのだろうかと思うこと人も多かろう。

 歴史の見方に正しいは相応しくない形容詞に思える。歴史の見方は常に流動的で微妙に較正されながらゆっくり収斂してゆくものだと思う。

 俺が正しい私が正しいという大声は中身の吟味なくしては、羊頭を掲げているに過ぎない。世界平和のためだ、人類の幸せのためだと言われて誰が反対できるだろう。で、何をどうすると尋ねるのを忘れてはならない。

 異論異質を受け入れることができる能力が、破綻暴走を防ぐと臨床医学から学んできた。

 蟷螂の斧は承知。

 

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縁の切れ目

2013年04月24日 | 世の中

          

 半年前までは月に十回ほど勉強会や講演会に出席していた。それが最近では半数以下の三四回に減った。薬品メーカー主催の講演会に殆ど行かなくなったためだ。

 薬品メーカー後援の講演会は高血圧糖尿病高脂血症に話題が偏り、内容は勿論勉強になるところもあるのだが、どうしてもメーカー寄りの我田引水色が抜けず、公平公正とは言い難い。それに高脂肪高カロリー高塩分食は身体に良くないと講演をしておきながら、会の終了後、和洋中華の豪華な立食パーティがあり食べ過ぎてしまう。そして家に戻るのが午後十時前後と遅くなり、若くない私は翌日疲れが残ってしまう。というわけで、出席数は激減した。

 もうひとつ、あまり後味の良くない現実的な変化もあった。こうした薬品メーカー後援の講演会は事前に是非御出席をとタクシー券を持ってきてくれることが多いのだが、某メーカーは私が主力薬品をジェネリックに変えて売り上げが大きく減ったせいか、タクシー券を持ってこなくなった。ちょうど親しかった前任者が転勤となり担当が交代したせいもあるのだろうが、よい気持ちはしない。その薬は非常に高価なので積極的にはジェネリックを使っていなかった私も厚生省の指導路線に乗ったのだ。

 中にはタクシー券を要求する医師も居るようだが、私にはできない。勿論タクシー券がないから行かないというわけではなく、興味がある内容の講演であれば出かける。

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隠れた認知の問題

2013年04月23日 | 人生

                           

 頼まれてグループホームにも往診に行っている。グループホームの建前は認知症の方の共同生活の場となっているが、ホームによってさまざまで楢山もある。楢山的でないところが優れたホームかと言えばそうでもない。入所後の扱いもさりながら、入所時の選別で差が出ているように見える。八十を過ぎた認知の人がどうなってゆくか、厚生行政の方も本当は分かっておられると思う。

 認知の好々爺の行き着く先が惚惚爺であれば、受け入れることも可能かもしれないが、問題行動(暴力)が出てくるとなかなか難しい。こうした学術論文があるかどうかよく知らないないが、第一線で診ていれば人は偏りのある方へ認知が進む傾向があるのがわかる。こうした書き方は露骨に過ぎるかもしれないが、ちょいと意地悪ばあさんは会話も成立しないほど認知が進んでも、なんだか嫌な人を不快にする呼びかけや返事をするようになる。

 Tさんは歩けずいつも車椅子に座っているのだが、一日中大声で数を数えている。「いち、に、さん、しー、ご・・」。とそばを通りかかると突然、「あんたはいくつ」と大声で呼びかけ睨みつける、慌てて「ろく」。と答えれば「さん」。とつばきを飛ばし大声で威嚇する。数を数えるのに飽きる?とシャツを噛むのでシャツの首回りが円形に濡れている。聴診しようとすれば引っ掻くので、一人ではできない。別に危害を加えるのでなく診察をしようとしているのだが、刺のある眼で睨む。内容のある会話は成立しないのだが、周りのことが何も分からないというのではない。普通の感覚では申し訳ないが親愛憐憫の情は湧かない。

 人間の尊厳とは何か、時にグループホームからの帰り道考えてしまう。

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無口もほどほどが

2013年04月22日 | 診療

             

 女性患者さんの話好きも時に困るが、これは診断遅れに繋がることは少ない。男の患者さんの中には、殆ど話をしない人が十人に一人くらい居られる。今はどうか知らないが、昔は男はペラペラしゃべるものではない、やたらとニコニコするものではないとされていた。三年に片頬位が宜しいという表現もあったくらいだ。

 今も躾かある種の男性の特性か、無駄話をしない一群の男たちが居る。どういうものか物作りに携わるあるいは携わっていた人に多いようだ。

 「お変わりないですか」。

 「はい」。

 「調子はどうですか」。

 「いい」。などという会話に安心していると、

 受付に、Nさんこの頃変です。何度言っても保険証を忘れたり、採血検査の約束を忘れたりで、認知じゃないですかと昼休みに言われる。家族に連絡すると、この頃物忘れがひどくなったとか、車の運転が危なくなったという証言が挙がってくる。慌てて、専門医に紹介すると、アルツハイマーですなどと言う返事が返ってきておやおやと冷や汗を掻く。

 「はい」。とか「いいえ」。だけでない話をさせた方がいい訳だが、この人たちは口が重く、話題にしやすい仕事の話や昔の話は矛盾なくできるので、初期の認知を見逃してしまうのだ。

 Nさんはアルツハイマーの診断がされ、家庭ではそうした目で保護されているが、実家に帰ると昔話ばかりなので実家の人達は認知に気付かずこの頃ちょっと服装がだらしないと奥さんにお小言が回ってきてしまう。実は・・とまだ言いだせないのですと奥さんが悩んでおられた。

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三浦八段コンピューターに敗れる

2013年04月21日 | 趣味

                    

  将棋A級三浦弘行八段がコンビュータソフトGPSに敗れた。得意の矢倉に組みながら先攻され押し切られたようだ。「どこが悪かったかわからない。結果に責任を感ずる」。悄然とする三浦さんの写真が出ていた。

 これでコンピュータソフトの三勝一敗一分となり、対人間棋士との団体戦はコンピュータの勝ちとなった。二十年前ヘボの私に角落ちでも勝てなかったコンピュータがA級プロ棋士に勝つようになった。大きな衝撃を感ずる。

 今後、将棋連盟はどうするのだろうか?。正直、羽生や渡辺がコンピュータソフトに負けるのは見たくない。将棋への興味を失うことはないだろうが、プロ棋士の解説を聞きながら、ここでコンピュータソフトならどう指すだろうかと思うようになるだろう。そのコンピュータの示す指し手をプロ棋士は解説できず、エーそんな手があるのかと驚くようでは、人間の私は詰まらなく感じると思う。

 勿論、チェスでは既にコンピュータが人間の世界チャンピオンに勝っているし、科学の世界では気象の予報や物理化学で人間には不可能なシミュレーション計算に用いられている。そして、将棋のソフトを開発したのは人間なのだから、がっかりせず当然の帰結と受け取れば良いのかも知れないが、なまじヘボ将棋ザル碁をたしなむものだから、どこか残念な感じがしてしまう。

 三浦八段はどうぞご自分を責めないで下さい。コンピュータは強かった。

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