駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医者の薬

2013年04月03日 | 医療

         

 医者は楽しい仕事だろうか?。

 こうした設問自体が無体なもので、多くの仕事と同じように楽しい時も嫌な時もある。同じようなことをしていても、楽しいと思う医者も居るだろうし辛いと思う医者も居るだろう。

 私の場合、正直に言えば心晴れぬ日も多い。何と言っても患者さんの願いや希望を十全に叶えることは難しいからだ。それが自然経過であっても、経過が悪ければ御不満の方もおられるし稀ではあるが離れて行かれる方もおられる。慢性疾患相手の駅前の総合内科医は患者の生活に立ち入って、雨水が石を穿つように生活習慣を改善させなければならないのだが、思うようにはゆかないこともある。たかだか二三回診た総合病院の若い医師にもう少し痩せさせるようにと注意を受けて鼻白むこともある。

 それと何時まで経っても辛く感じるのは、何をしていても何処に居ても何時でも電話が掛かってきて、生活を中断させられることだ。幸いこれは、だんだん減ってきており、最近では週に二三回程度になった。

 逆に思わず心和むのは、思わぬところでお礼を言われることだ。こちらは忘れていても、患者さんや家族は憶えており、二十年前にお世話になりましたなどと街で頭を下げられることがある。先日も介護保険審査委員の委任状を百名ほどの委員と共に受領に行ったのだが、市長代理の局長が挨拶をされ、やれこれで終わりかと腰を上げようとしていたら、五十年配の局長がつかつかと近寄られ二十八年前に**病院でお世話になりましたと頭を下げられたのには驚いた。見覚えもなく(二十八年で老けられた?)、ああそうでしたかとお辞儀を返したのだが、帰り道の心は軽かった。

コメント (2)
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