政治討論会などを聞いていると政治家は何を聞かれても言葉に詰まることなく、時にはペラペラあるいは滔々と持論を展開する。ああ言われればこう言い返したり、、ええそれは・・とはぐらかす才能に感心というか呆れていたのだが、実も我々(私だけではないと思う)もそうだと気が付いた。
患者さんはあれこれ細かいことを気にされる、時にはとてつもないことを相談されることもある。それでも、言葉に詰まって返事ができないということはなくなった。どう返事すればよいだろうなと考えながら口の方が勝手に動き、差しさわりのないこと言って間を持たせてくれる。その僅かな時間に答えが浮かんできて、自分でも驚くような巧妙な返事をしている。長く最前線で診療をしていると、いつの間にか何にでも答えることができるようになる。勿論、答えることができるだけで、必ずしも最善最新の答えでないことも多いだろう。
まあしかし、実は質問の方に無体なものも多く、それなりの答えで十分と心得る。中には最初聞かれた時は耳を疑うような質問もあって、ぐっと言葉に詰まったことがあったが、今では世の中の何でもありに晒され慣れてきた(とてもここには書けない怖い話やおぞましい話を聞かされてきた)。
町医者と政治家とではちょっと違うかもしれないが、何を聞かれても答えることのできる能力(仕事に関して)は特別に優れた能力と言うわけではないと申し上げておきたい。
答えも結局は中身が問題なのだが、答えというものは大抵は質問に釣りあったもので、中身や深みのある答えが出てくるかどうかは半ば質問側の力量に掛かっている。