駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

2009年高血圧ガイドライン

2009年02月14日 | 医療
 高血圧の治療と言えばきちんとした厳密な方法と指針があると一般の方は思われるであろう。ところが高血圧の治療法に明確なガイドラインが示され一般医に広く浸透し始めたのはこの十数年のことだ。1980年以前はいろいろな指針はあっても統計的な処理が十分な臨床研究に基づいたものではなく、比較的狭い範囲の経験に基づいた特定の学派の方針と国外の研究とを摺り合わせたものであった。
 こうした指針は十分に科学的とは言えないということで、統計的に意味ある手法で大数(少なくとも数百例)の症例を比較検討し、その結果を盛り込んだ治療指針が五年ごとに高血圧学会から出されるようになった。それを積極的に一般医に浸透させる努力が十年ほど前から始まっている。今年は改定の年でガイドライン2009が出され、一般医への普及のため、指導的な会員が解説に全国を回っている。その説明を聞いていると、かなり科学的にはなったものの、細かい数値や境界領域の数値はデータが不十分なため、作成委員の間でかなり討論というか、要するに揉めたようで、声の大きい人の意見が通ったらしい?。科学的手法を駆使してもグレイゾーンが残るのは当然なのだが、その辺りの決着の付き方はいずこも同じようで、笑ってしまった。
 町医者はこのガイドラインを参考にしながら診療するわけだが、ガイドラインは万能ではない。こうしたマススタディを個に当てはめる時にはどうしてもあるずれがあり、その辺りを調整して匙加減することは最前線の医師に委ねられている。
 しかしこのガイドラインの説明会にすら出てこない医師も相当居るわけで、患者さんにも匙加減を味わうなにがしかの意識が求められている。
 
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