駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

巡り合わせ

2009年02月22日 | 人生
 昨夜は後輩の送別会に顔を出した。彼は15年ほど後輩で私の後の後を引き継いで病院で頑張り、じり貧になりそうな病院をなんとか踏みとどまらせた人物である。一緒に働いたことはないが、患者のやりとりやいろんな会合で親しくなった。赴任当初は私生活を犠牲にしてまで頑張るような人には見えなかったのだが、地位が人を変える、地位が本来の力を引き出すというのか、7年前内科を主宰するようになってから、見違える活躍を見せた。
 病院の内科を任された時、特別優れた検査機器が揃っているわけではない、特別学会で名が売れているわけでない。さてどうするかと考えた結果、若い人の教育に目を向けたのである。満を持した準備が新しい研修医制度の発足に奏功し、充実した研修内容が注目され、全国から研修医を呼び寄せることに成功したのだ。集まった研修医を文字通り心血を注いで面倒をみたところ、それが良い評判となってフィードバックされ、地方の中病院としては異例の高順位を実現した。(最近はネット社会でいろんな情報が医者の卵の間を飛び交い、ミシュランよろしく研修病院の点数が付くらしい)。
 出来れば病院に残って欲しいと思うのだが、親父さんの後を継ぐ予定は変えられず故郷へ帰ると言う。偉そうに威張る人ではなく、カジュアルな雰囲気で兄のように研修医に慕われているのを見てうらやましく感じた。自分は当時の院長と相性が良くなく、ごたごたしたのに嫌気がさして辞めてしまった(医者は独立できるので辞めることが出来た)が、踏みとどまれなかったのは若い人の教育の場を奪われたせいもあるなと振り返る。後悔はしていないが、もし歯車が違っていれば、また別の人生もあったなと思わされた夜だった。
 
コメント (2)
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