ALQUIT DAYS

The Great End of Life is not Knowledge but Action.

春の雪

2018年03月22日 | ノンジャンル
3月に入り、春めいてきたと思っていたら、
お彼岸になって関東・甲信での雪。

冬の寒さが厳しかったことを思い出させるが、
この時期の雪となると、もう一つ思い出す
ことがある。

断酒して5年ほど経った頃だろうか、東北の
震災があり、電力不足から、どの工場も
予備として発電設備を整備するのに躍起と
なっていた。

国内の設備メーカーは飽和状態で、海外より
輸入する検討も進められた。

かなり大型の設備を導入することになったものの、
その納入までが非常に大変で、製造現地に何度も
飛んだが、半ばノイローゼに近い状態に陥っていた。

ようやく納入が完了してやれやれと思いきや、
今度は稼働においてトラブルが続き、その度に
現場へ急行した。

年末に調整が終わり、これで年を越せると
思いきや、紅白を見ている途中で緊急の電話という
こともあった。

多発するトラブルを一つ一つ解決し、ようやく
まともに稼働ができるようになったのが翌年の3月。

最後の補修、調整を行うために、前泊で現地入り
したが、夜が明けると、一面雪で真っ白だった。

設備はもちろん屋外である。
指先もつま先も凍えて感覚がなくなる中、作業を
終えて始動・運転確認をした時に、まともに
動いてくれた感激は忘れられない。

導入検討から一年、納入から半年以上経って、
ようやく落ち着いたのである。

散々苦労し、精神的にもまいっていた。
何度も心が折れそうになり、逃げ出したくなることも
数えきれなかった。

それまでの様々な苦悶からの解放となるべき日が
まさかの雪であったことに、何か妙に深い
感慨があったのを憶えている。

雪降る中に咲くのでもなく、咲いた中に雪が降る
のでもなく、雪と花が一体であるかのような、
そんな不思議な感慨であった。