Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

イタリアの田舎に流れる時間の贅沢さ

2011年07月18日 | R.Dore

津軽通信、番外編 第3のイタリア雑感

http://www.telework.to/sasWeb/tsu-italy.htm

に以下のようなコラム(1998年のもの?)があります。

『ボローニャからの追想』

ボローニャは、最古の大学のある古都です。ローマ法がはじめて講義されたという由緒ある大学があり、今なお学生の街として趣のある観光地でもあります。私は、ここからフェラーリの工場(モデナ近郊)にでかけたり、またボローニャが最近つくった工業団地を見てきました。

しかし、もっと刺激的だったのは、イタリアの時間のゆるやかさでした。まず、働くのは9時から12時まで。昼から3時まで、昼食とシエスタ。さして大きくない町ですので、ほんと店も銀行も大学もすべて閉まり、町全体がひっそりとなりました。そして3時から夜7時まで、また稼働しはじめて、町もにぎやかになります。夜8時になっても外は明るく、晩飯には早すぎます。ようやく暗くなってくる9時頃から晩飯になり、レストランも人が多くなります。

なるほど、なんと言おうが、グローバルスタンダードで忙しくなろうが、このゆったりした時間の流れは変えないというところです。

ところで、日本でも有名な社会学者のロナルド・ドーア(イギリス)は、引退後イタリアに住まいを移しています。その場所は、このボローニャから南に30キロ行った、グリツアーナ・モランディという小さな村です。

彼は、午前中までの仕事が終わると、昼下がりには、いつものバー「ピーナ小母さんの店」に出かけるのが日課です。そのバーには、アル中の老人、運転手のフランコ、カストロ髭の男などの常連客が集まり、ビールを飲み、トランプをして、政治談義に耽るとか。また、政治から一転して、新しいイタリアの料理法、ブドウのでき具合、痴話喧嘩、愛のもつれなど、庶民生活の細かな話がとめどなく繰り広げられるのです。

ときには、誰かが60年代のカンツオーネを歌う。ドーアは、何時もその話の輪に加わり、つたないイタリア語でお喋りを楽しむのです。

ドーアは、戦後すぐの日本に来て、農村に入りフィールドサーベイをした根っからのフィールド派です。日本語をあやつり、ごはんとみそ汁を食べて、村民らと酒を飲み、農地改革前後の日本の農村の変化を分析した学者です。その彼が、今はイタリアにいて、70歳の人生を楽しんでいるのです。

このグリツアーナ・モランディ村では、15世紀から変わらぬ家並みが残っています。昨日と同じ今日がまた終わると、またいつもの同じ明日が始まっていく、そんな村です。明日、昼になりシェスタになると、村一軒のバー「ピーナ小母さんの店」にいつもの顔ぶれが集まり、お喋りがいつものように始まり、そこにドーアも又加わるのです。

以上の話は、柳原和子「日本学者R・ドーアの戦後50年」(中央公論、95年7月号)からの引用ですが、何度このエッセイを読み返しても、イタリアのたゆとうような時間のリズムがうらやましく思えるのです。

どうやら、イタリアはイタリアであり、昔からちっとも変わっておらず、人がなんと言おうがこのイタリアン・スタイルがいいということのようです。マフィアが捕まろうが、首相が変わろうが、経済がおかしくなろうが、一人一人はシェスタを楽しみ、バーでのお喋りに耽り、政治談義をする。そして、夜は家族でディナーを囲んで、平安な時間を持つ。つくづく、うらやましい時の過ごし方を思うのでした。

このコラムは、ほとんどが癌でお亡くなりになったノンフィクション作家で柳原和子さん

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E5%8E%9F%E5%92%8C%E5%AD%90

の文の引用であるようですが、とにかく、柳原さん、コラムの執筆者と同じように、このイタリアの田舎でのリズムが、大変貴重なものの思えます。

さて、このコラムにあるロナルド・ドーア氏ですが、実は私は2005年と2008年の2回、彼のお宅を訪問させてもらっています。

この柳原さんがドーア氏を訪問してからおよそ10年後の訪問ですが、村の生活の様子は、当事とほとんど変わりなかったことを覚えています。

参照:D

http://blog.goo.ne.jp/afternoon-tea-club-2/d/20080227

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