日本に旅行にきて、オークラや東京ステーションホテルに泊まる外国人はほんの一部だと思います。
しかし、ホテルにかかわらず、日本独自のものが姿がどんどん破壊されたり、無国籍風の鉄骨の巨大な箱がバブルの頃のように次々と建設されていくことが『破壊』『暴力的』と感じる日本人や日本を愛する外国人、少なくないでしょう。
ニューズウィーク (2014年7月15日)
東京の伝統美を「破壊者」から守れ
By レジス・アルノー
http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2014/07/post-866.php
ホテルオークラは最先端のホテルではない。「古風」と言ってもいい。最新のiPhoneを発表する舞台に、このホテルが選ばれることはまずない。
だがホテルオークラは東京にとって、間違いなく掛け替えのない重要な資産だ。赤坂の草月会館のホールと同じく、ホテルオークラのロビーは戦後の日本の卓越した力強さを見事に映し出している。
現代アートの祭典「ニュイ・ブランシュ」の発案者でパリ市長助役文化担当のクリストフ・ジラールは言う。「日本で泊まるのはいつもオークラだ。もしホテルがロビーを少しでもいじったら、もう二度と泊まらない」。ジャック・シラク元仏大統領も、フランス大使館ではなくオークラを定宿にしていた。
そんなオークラが5月、本館の建て替えを発表した。プレスリリースには「オークラ建築の基本である『日本の伝統美』を継承しつつ、設備面においては最新の機能を装備いたします。(中略)日本および世界のお客様の多様なニーズにお応えしていく予定です」とある。
この言葉を信じていいものか。オークラの大株主は建築関係の企業だ。大成建設、三菱地所、新日鐵住金、鹿島、森トラスト......。スカイツリーや六本木ヒルズ、開業したばかりの虎ノ門ヒルズや建て替えが予定される新国立競技場などに携わってきた「破壊者」たちが、オークラの建て替えに関わることになる。
建築が始まれば、彼らは自ら株を所有する系列会社にコンクリートを売ることができる。まったく商売上手な話だ。オークラが発表したイメージ図を見ると、新しいビルはまるで平壌か香港にでも建っていそうな味気ないものになるようだ。
建物「保護」の名を借りた暴力
東京には長年にわたる「リノベーション」の名を借りた「文化・芸術の破壊」の歴史がある。フランク・ロイド・ライトがデザインした帝国ホテルは関東大震災でも倒れなかったが、日本の建築業界に倒されて60年代に建て替えられた。最近では東京ステーションホテルが改装された。改装前の面影はほとんどなく、東京ディズニーランド駅とでも呼びたくなるような、作りものっぽさばかりが目立つ姿になってしまった。これらは建物の「保護」という名を借りた、日本文化に対する暴力ではないか。
(後略)
今、「日本の景観を壊す電柱をなくしていく」という動きがあり、これの先鋒になっているのが自民党の小池百合子氏。
電柱は気になっても、日本的景観の破壊は気にならないのでしょうか?
先月、虎ノ門ヒルズが開業した時に書いたブログ
国民に「パンがなければお菓子を食べればよいのに」と言いそうな安倍首相
http://blog.goo.ne.jp/afternoon-tea-club-2/d/20140611
のなかで紹介した安倍首相のスピーチには、彼が思い描いているのは、「日本を単に投資家にとって魅力のある国にすること」というのがしっかり読み取れます。
日本にシャンゼリゼ、カジノ、無国籍風の巨大なビルを建てることが、どうして「美しい日本」となるのでしょうか。
そういえば、数年前、「老朽化」といって多くの反対を押し切って巨大ビルに生まれ変わった東京中央郵便局。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E9%83%B5%E4%BE%BF%E5%B1%80
欧米では、この旧ビルより古い建物がきちんと改修されて保存されていますが、日本には改修技術はないのでしょうか。
この建物が解体される少し前、近くの新丸の内ビルで夜、友人と食事をしました。
そのとき、レストランが併設されていたテラスに行って夜景を見に出たとき、そこのいた守衛の若い男性が、何とはなしに話かけてきてくれて夜景の説明もしてくれました。
その彼が寂しそうに、
「毎日観てきた、あの中央郵便局のビルも、もうじき建て壊されてしまいます。」
と言ったのが、印象に残りました。
「パリのシャンゼリゼを真似る」という言葉を鵜呑みにし、自分でもそれをスピーチに使う安倍首相、シャンゼリゼが新しい建物ではなく、何世紀も前の建築物に囲まれてできているから美しく魅力的、ということくらいわからないものでしょうか。