三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

戦争と死刑と脳死移植と安楽死

2012年08月23日 | 戦争

憲法9条第二項に「国の交戦権は、これを認めない」とある。
ダグラス・ラミス『要石:沖縄と憲法9条』は、交戦権についてこのように説明している。
「交戦権は侵略権ではない。軍事行動を行う権利なのである。つまり、戦争で人を殺しても、殺人で処罰されずにすむ権利である」

「交戦権というのは、兵隊が人を殺しても罪にならないという権利です。つまり、戦場で兵隊がやることは、普通は犯罪です。私たちがやれば殺人犯になる。あるいは、兵隊みたいにたくさんの人を殺せば、クレイジーだと思われて精神病院に入れられるかもしれない。だけど、兵隊は、交戦権があるからこういうことをやっても犯罪にならない、罪にならない。
罪にならないということは二つの意味があって、逮捕されない、法的に罪にならないということと、もう一つは罪悪感を感じる必要がない」
つまり、交戦権を持たないということは「戦場で人を殺す権利はありませんという意味」なんだそうだ。

なるほど、そうか。

たとえば、日本への無差別爆撃による焦土化作戦を立案したカーチス・ルメイ将軍からしたら、無差別爆撃を非難される筋合いはないことになる。
だからというわけでもないだろうが、ルメイ将軍は、日本から勲一等旭日大綬章をもらっている。

交戦権という考え方は、脳死による臓器移植とか安楽死とかにも通じる。

以前は脳死による臓器移植は認められていなかったし、安楽死をしたとして逮捕された医師がいる。
罪悪感を感じるかどうかはその人によるけど。
だけど、法律が作られると、罪に問われない。

死刑も同じ。

死刑制度がない国で処刑すると、リンチ、もしくは虐殺ということになり、当事者は処罰される。
死刑が法律で認められると、関係者が罰せられることはないし、罪悪感を持たなくていい。
もっとも、死刑の場合、執行に立ち会う刑務官は罪悪感を持つように思う。

「フォーラム90」Vol.124に、小川秀世弁護士の「袴田事件の現状と展開」という講演録が載っている。
警察・検察の証拠捏造、証拠の非開示はひどいものである。
たとえば、袴田さんは事件を起こした時に着ていた服を味噌樽に隠したとされた。
その服は袴田さんには小さすぎるし、1年2カ月も味噌に漬かっていたのに白いままなど、捏造されたことは明らかである。
ところが、証拠として採用され、袴田さんは死刑になってしまった。

小川秀世「我々は気楽に今、捏造と言っていますけれども、これ、重大事件ですよね。死刑になるような強盗殺人事件、放火事件、そういう事件で証拠を捏造したっていうのはどういうことなんですか。

しかも、僕は警察官がやったと間違いなく思っているわけですけれども、これって袴田さんが死刑になるかもしれないということがわかっていながらやっているわけでしょう? これって殺人じゃないですか。殺人の実行行為でしょう」

証拠を捏造した人(警察官?)は逮捕されないし、たぶん悪いことをしたとは思っていないだろう。
再審が開始されたら、殺人未遂罪で告発したいと、小川秀世弁護士は言っているが。

死刑制度を認めることは、証拠を捏造し、無罪の証拠を開示せず、そのことで無実の人が死刑になっても、証拠を捏造したり、証拠の開示を拒む人は罪には問われず、罪悪感を感じる必要がないことも認めることである。
死刑制度の廃止を求めることは、ただ単に死刑をやめろということだけでなく、どんな人の命であっても命を奪う権利は誰にもない、と訴えることだと思う。

追記
冤罪なのに死刑が執行され、後に冤罪だとわかっても、裁判官や法務大臣は殺人罪には問われないんでしょう(国家賠償はあります)。
でも、おかしいと思いませんか。

こんな記事がありました。
「足利事件」菅家さんを獄中に突き落とした最高裁判事たちの豊かな老後
最高裁の判事も人間だから間違いは犯します。
間違えていたことを知ったならば、「ごめんなさい」ぐらい言ってもいいのではないでしょうか。

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78 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
風立ちぬ (となりのみよちゃん)
2012-08-23 20:05:44
戦争・死刑・脳死移植・安楽死、重いテーマが並びました。どれも、本当は、ひとつひとつ、きちんと考えていきたいことですが、最後の行に、しっかりと主張が述べられています。わたしも、そう思います。日記で訴えるのも、一つの手段です。ここは、賛同する方のコメントが、ぜひ見たいところです。

誰だって、本音は、畳の上で死にたいと思っているのではないでしょうか。でも現実はどうもそうはいかないようです。自分の生の終わりが人に左右されてしまいなんて、悲しいことです。

憲法に関していえば、日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、、、」とありませんでした?世界を見ると前提そのものが壊れそうですね。

ところで、魯迅がこんなこといっています。
奴隷になりたくてもなれない時代
しばらく安全に奴隷でいられる時代
今の日本はどっち?
それとも、円さん、なにかもっと適切な文、考えます?
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パンとサーカス ()
2012-08-24 16:46:26
憲法の前文には「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」ともあります。
ところが、橋下大阪市長が竹島や慰安婦問題について発言しているそうです。
河村名古屋市長もそうですが、わざわざ煽り立てるようなことを言わなくてもいいのに。
なんだか2チャンネル的状況になってきました。
古代ローマは国民の不満をそらせるためにパンと見世物を提供したと言われています。
小泉劇場という言葉があるように、政治も見世物になっているところが現代の悲劇ですね。
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『史記』酈食其伝 (となりのみよちゃん)
2012-08-24 21:55:37
王者は民を天ほど大事なものとし、民は食を天ほど大事なものとする。

毛沢東が当時あれだけ農民の支持を受けたのは「みんなに一碗のごはんを保障するから、協力してくれ」とメッセージして、それが効いたからとか。

でも、今は、そういう時代ではないですし。民を天ほど大事に考えているのは、どなたなのか?見極めたいものです。
案外、橋下さんや河村さんは、わかりやすくていいかも。河村さんなんて、何考えてるのか言動見てるとバレバレなのでは?

以前韓国に行ってきました。韓国の地図の竹島って日本で見る地図より、大きいんです。あれっと思いまして、違う地図見ても、やはりそうだったのです。本当の大きさは、どうなのかなってその時思いました。まさか日本の地図の方が正確なのでしょうね。
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乱世の英雄・治世の能臣 ()
2012-08-25 17:37:40
エリートが共産党に入り、民衆が八路軍を支持したのも、当時の中国の情勢だと当然だと思います。
でも、何度も書きますが、革命が成功してからが問題ですよね。
維新という名前を使えば、それだけで国会議員になれそうな雰囲気です。
でも、やってることと言えば、公務員叩きみたいな、一種のいじめです。
治世の姦賊になりそうです。
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望蜀 (となりのみよちゃん)
2012-08-25 18:32:58
むり、むり。そんな歴史に残るような人に例えるなんて!

後漢の光武帝に関する故事から
「人は足るを知らざることに苦しむ。既に隴を平らげて復た蜀を望む」
「井の底の蛙、大海を知らず」
このあたりの人物関係は、今の政界より、もっと複雑です。でも歴史に残ってる人の話っておもしろいです。

井の中の蛙、大海を知らず。天の高きを知る。っていう、格言もできましたけど、今の議員さんたち、そういう展開にもなっていない・・・


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Unknown (てるてるぼうず)
2012-08-26 08:31:24
私の性格は激しい。
悪い奴らは皆死刑にすればいい・・・と、思っていました。
仏教(浄土真宗)に出会って「どんな人の命であっても命を奪う権利は誰にもない」と思うようになりました。

ところで
>兵隊が人を殺しても罪にならないという権利

戦闘員が戦闘員を殺してもじゃないですか、戦闘員が非戦闘員を殺せば殺人罪だと思うのですが。
その逆も同じ。

無差別爆撃は虐殺ですわ。
私の叔父も焼夷弾を頭に受けて16で亡くなりました。
私の祖母(叔父の母)は戦争の映画が嫌いで、見たくないと目をつむっていました、私は好きで見ていたんですが、祖母の気持ちがようやく解るようになりました。
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コメントありがとうございます ()
2012-08-26 14:22:08
>となりのみよちゃんさん
曹操は「蜀を望まない」と言ってるそうですし、「井の中の蛙」は荘子にあるそうですね。
中国では引用しても典拠を示さず、自分の言葉のように書きますから困ります。
ある先生は「井の中の蛙、井の中を知らず」と言われました。
自分のいるところすら知らない。

>てるてるぼうずさん
>戦闘員が戦闘員を殺してもじゃないですか
たしかにタテマエはそのとおりですが、非戦闘員を殺しても、「戦闘員だと思った」と言えばOKなんじゃないでしょうか。
イラクやリビアの爆撃は差別爆撃ということになるんでしょうけど、一般人が大勢被害に遭っています。
実質は無差別爆撃です。
それでも罪には問われない。
今は交戦権とか宣戦布告とか関係なしで、どんどこどんとやってますよね。
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久しぶりに (となりのみよちゃん)
2012-08-26 14:43:27
コメントのお礼を、ついでに、言われて、テレテレ。ほんとうに、有難いと思ってくださってるのか、少し、疑問?
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Unknown (Unknown)
2012-08-28 07:12:45
足利事件の一審の裁判は、被告人自身が罪状認否で自白をしてたんです。
弁護人も、それに同意しました。
つまり、最初は、彼が犯人であることを前提に裁判が行われてたんです。
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それで? ()
2012-08-28 16:00:25
たしかに一審の当初はそのとおりです。
菅家さんは警察や検察の取り調べで犯行を自白していますが、 第一審の途中から否認に転じ、無罪を主張しました。
しかし、上訴審では弁護側はDNA鑑定の再鑑定を求めましたが、認められていません。
http://www.watv.ne.jp/~askgjkn/saiban.htm
無実なのに自白する人は珍しくありません。
警察や検察の取り調べがおかしいということでしょう。
それと、無能でやる気がない弁護人がいるということ。
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