吉田恵輔監督の映画は、能力がないのに、自分には能力があると思い込む主人公が巻き起こす混乱を描いていて、話としてはおもしろいのだが、主人公にまったく共感できなくて、見ていて不愉快になる。
『さんかく』の主人公なんて、信じられないくらいうぬぼれが強いし、同棲している女がこんなだめ男に惚れ込んでいて、見ていて腹が立つ。
その点、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』はうまくできている。
脚本家を目指して十年以上も頑張っているものの、コンクールに応募しても第一次選考にも通ったことがないという34歳が主人公。
もう一人は、自称天才で、映画の歴史を変えると自信たっぷりに大言壮語しているが、脚本を書いたことがない男。
大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』(2004年刊)を読んでたら、小説家を目指す若い人の中には「大真面目に大風呂敷広げる」人が少なくないとあった。
豊崎由美氏が
まだなにもしれないうちから、じぶんに大物感を抱いてる。根拠のない自信がある。そういうのって今の若い人たちの一部に共通する感覚なのかも。世界のとらえかたがそうなのかな。
と言うと、大森望氏がこう答える。
RPGの主人公的な全能感を無根拠に持ってるとか。最初から選ばれた人間であることに慣れている。
そうか、ドラクエか。
自分には神が与えた使命があるから、どんな困難も乗り越えることができ、そうして優れた人間になることができる、という夢は気持ちがいい。
『ばしゃ馬さんとビッグマウス』の名言。
夢を叶えることが難しいことはわかっていたけど、夢をあきらめることがこんなにつらいなんて知らなかった。
正確にはこのとおりではないが、そうだなあと思いました。
夢というと聞こえがいいけど、要は妄想。
妄想に耽るのが好きなんですよ。
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