三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

戸塚宏の脳幹論

2006年09月16日 | 問題のある考え

某氏より「選択」(2006.6)の「誤解に耐え抜く「戸塚学校」―「子捨て」の時代の救世主なのだが―」という記事のコピーをもらう。
「非行、不登校、家庭内暴力などの様々な問題を抱えた情緒障害児」をいったい誰が「直す」のか、戸塚ヨットスクールしかないじゃないか、と戸塚宏をヨイショした記事であるが、それなりの説得力はある。

しかし、今は相談窓口は行政や民間などさまざまある。
そして、不登校やひきこもりは直さなければいけない障害なのか。
そもそも非行や家庭内暴力はそれぞれ状況が違えば、原因も違う。
それなのに、すべて同じ手法で直すというのも強引な話である。
たとえばガンだって、それぞれ症状、原因が異なるから、症状、原因に応じて治療しないといけない。
どんなガンにも効果があるという治療法はアヤシイと考えたほうがいい。

民間療法の中には、どんな病気も治りますという主張をよく見かける。

先日、新聞にサメ軟骨の広告が入っていた。
それによると、悪性・良性を問わず各腫瘍、関節リウマチ、神経痛、関節炎、椎間板ヘルニア、腎炎、ネフローゼ、難聴、動脈硬化、眼精疲労、角膜炎、円形脱毛症、肉体疲労などに効果が期待できるとある。
ガンと円形脱毛症を一緒にするのはどうかと思う。
戸塚ヨットスクールもこれと似たり寄ったりである。


戸塚ヨットスクールのHPにこういうことが書かれてある。

登校拒否の子は、その後どうなるのですか?
小中学校は義務教育で、留年されては困るのであらゆる手段で登校拒否児を卒業させてしまいます。当然、高校に入学できない子が出てきます。また、高校や専門学校に入学しても続かないことが多く、(今度は義務教育ではないので)すぐに退学となります。高校中退者が毎年10万人も出るのは、主としてこのためです。いずれにせよ家でぶらぶらするだけの「無業者」になります。その多くが犯罪予備軍と言ってよいでしょう。奈良県・月が瀬村で女子中学生を車で跳ね、殺した25歳の男もその1人です。神経症の症状がひどい場合、精神科に入院させられてしまうケースも少なくありません。今、日本の精神科のベッド数は諸外国に比べてとんでもなく多くなっています。
登校拒否を長く続けていると、色々な行動異常が現れてきます。まず、自分の部屋に閉じこもってテレビ・ビデオ・ゲームばかりやっている子は、急速に「夜型」になります。深夜3~4時頃まで夜更かしをし、起きてくるのが午後2~3時頃になり、昼夜逆転します。食生活も不規則で、肥満して顔色が悪くなってきます。 そういう状態が1~2年続くと、感情が不安定になって、周囲に当たり散らしたり、物を壊したりするようになります。やがて、母親や父親に暴力をふるうようになります。これが、家庭内暴力です。そして、登校拒否と家庭内暴力に密接な関係があるように、実は、無気力・喊黙(かんもく)・非行なども、「心の病」として共通するものがあります。これらをまとめて『情緒障害』と呼びます。

学校に行かない子供は犯罪予備軍であり、心の病気であり、家庭内暴力をするようになる、とはひどい言いぐさである。
脅して、そして救いの手を差しのべるというのは悪徳商法のよくある手口。

戸塚宏によると、脳幹論によってすべてが解決する。

「選択」の記事に脳幹論が説明されている。

文明が発達したことによって現代人は精神を十分に鍛えられる機会を失い、その基礎を司る「脳幹」が虚弱化している、という仮説だ。「情緒障害児」に見られる様々な問題も、要するに根はそこにある。
とすれば、トレーニングによってそれを強くする以外ない。物理的負荷をかけることで肉体を鍛えるように、精神的負荷をかけることで脳幹を鍛える。

脳幹を鍛えることによって「喘息・アトピー・花粉症・マザコン・出社拒否など」の状況もすべて克服できると主張している。
どんな病気も直せるなんて、インチキ療法と同じである。
「選択」の記者は戸塚宏の脳幹論について専門家に問い合わせたのだろうか。

「脳幹活性ペンダント イフ」というものが売られている。
このペンダントを犬や猫の首にかけるだけで、波動によって脳幹を刺激して活性化させ、病気を治すというものである。
この商品、戸塚宏の脳幹論からアイデアを受けたのではないかという気がする。

(追記)

戸塚宏と脳幹論を批判したブログ記事です。
脳幹論への具体的な批判
https://ameblo.jp/jd92u-fdxmf93l2-d/entry-10969478988.html
精神科医から見た戸塚ヨットスクール。
http://amapsymed.hatenablog.com/entry/2016/07/17/094744
私も齊藤潤一『平成ジレンマ〜戸塚ヨットスクールと若者漂流〜』の感想を書いています。
http://blog.goo.ne.jp/a1214/e/65f00c835fc497de71a351f608e975b5
http://blog.goo.ne.jp/a1214/e/58c98316c9fb88dd55f38aecc4ecad60

コメント (9)
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