三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

戸塚ヨットスクール 1

2011年08月31日 | 映画

「東海テレビドキュメンタリー傑作選」が上映されたので、齊藤潤一『平成ジレンマ〜戸塚ヨットスクールと若者漂流〜』と『光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』を見た。
本村洋氏が記者会見の席上、被害者の気持ちを考えて取材をしてほしいと、かなりきつい口調でメディアを非難している場面が『光と影』にあるが、本村洋氏のメディア非難はテレビで放映されたのだろうか。

それはともかく、
『平成ジレンマ』は戸塚ヨットスクールを一年間取材したもの。
戸塚宏氏は年に70回の講演をしている。
体罰の目的は進歩、体罰は人格を作る、なんてことを話し、それを教育関係者や親は熱心に聞いているのだから、これは何なんだと思った。
逮捕される前の訓練風景の映像を見ると、その体罰たるや、殴る、蹴る、海に頭をつけるなど半端じゃない。
これだけでも傷害事件として送致すべきだと思うすさまじさである。
それにもかかわらず、戸塚宏氏の講演を熱心に聞く親の気持ちが私にはわからない。
親たちは自分の子どもを殴ってしつけているのだろうか。

映画を見ながら、ジレンマとはどういう意味か疑問に感じた。
・戸塚宏氏のやり方は間違っているが、ヨットスクールを必要とする人がいるというジレンマ
・戸塚宏氏の体罰は必要だという理念を実践できないジレンマ
この二つのジレンマが考えられるが、製作側は後者のほうではないか。

それで、公式サイトを見たら、こんなふうに書いてある。
「戸塚ヨットスクール事件」から30年――あの時代が裁いたものは何だったのか。
1980年代、社会問題となっていた非行や登校拒否の子供達を、激しい体罰を含む訓練で再教育していた戸塚ヨットスクール。訓練生の死亡や行方不明事件を起こし、時代のヒーローから一転、戸塚宏校長は"希代の悪役"として裁かれることになった。マスコミ報道と世論に圧される形で、体罰は教育界から排除、戸塚事件は時代の象徴となった。(略)
あのとき時代は何を裁き、今にどう繋がっているのか。モンスターペアレンツの出現や学級崩壊など混迷を極める教育現場。平成ニッポンが抱えるジレンマが、スクリーンに浮かび上がる。

齊藤潤一監督はインタビューでこう語っている。
事件が起きるとマスコミは一転して、バッシングしました。戸塚校長とヨットスクールを社会的に抹殺したわけです。でもマスコミは戸塚校長を非難するだけで、ヨットスクールの代わりに情緒障害児たちの受け皿になるものを作ろうと提案し、積極的に動いたようには思えません。『平成ジレンマ』というタイトルには、自分も今、所属するマスコミに対しての自省の意味も込めています。

「子どもの頃の躾が大事なことを実感しました。自分にも小学生の娘がいます。でも、ヨットスクールに預けるのは、ちょっと考えますね」とも話している。

どうも違和感があるので、『平成ジレンマ』を書籍化した東海テレビ取材班『戸塚ヨットスクールは、いま』を読んだのだが、ますますイライラがつのった。

戸塚ヨットスクールには以前は訓練生が100名前後いたが、現在は11歳から29歳までの10人。
戸塚宏氏たちが逮捕される以前は非行少年が主だったが、今はひきこもり、ニート、不登校などの「情緒障害児」である。
「体罰は封印され、そこにはかつての緊張感はない」と『平成ジレンマ』のHPにある。

『戸塚ヨットスクールは、いま』に、体罰は、暴力か、教育かという二元論は馬鹿げていると書かれてあるが、戸塚ヨットスクールでしていることは体罰ではなく、単なる暴行である。
体罰の必要性について『戸塚ヨットスクールは、いま』に、戸塚宏『教育再生』から引用されている。
「体罰とは、相手の進歩を目的とした有形力の行使、力の行使である。体罰を受けた子どもは先生の言うことを聞く。言うことを聞いた結果、成長する。これは、「子どもを進歩させる」という教育の目的にかなっている。つまり、単なる「暴行」とはまったく異なる」
訓練生の首をつかみ、海に何度もつけていたコーチの言い分。
「あの子はね、訓練をよくさぼったんです。身体は強い子だったので、体罰をしたら、伸びると思ったんですよ。それで、しっかりやらないと、こういう目にあうんだぞと」

訓練生の間でイジメやケンカがあるが、誰も助けてくれないし、コーチたちが注意することはしない。
学校でいじめにあったという小学6年生の丘晃君(11歳)が夏休みに一ヵ月ほど来る。
「ヨットの準備や後片付けの時、「早くしろ」「ノロマ」「ボケ」などと罵声を浴びせる。そのうちに、顔を平手で殴ったり、身体を蹴ったり、さらに暴力はエスカレートして、拳で顔を殴ったり、棒で叩いたりする。
ホームシックといじめで、いつもメソメソ泣いている丘晃君。頼りは大人だけ。いじめられると校長やコーチのところに逃げ込む。しかし。校長たちは知らぬふりで助けようとはしない」

戸塚宏氏はイジメを推奨する。
「群れの中で進歩していくには何が必要か。それが「いじめ」。子どもはいじめられるから進歩する。いじめのない子どもの群れは意味がない。仲良く遊ぶだけでは進歩はない。なぜ、子どもはいじめられると進歩するのか。いじめは弱い子の弱点を突く。いじめられた子どもには、怒り、悲しみ、不安といった不快感が生じる。その不快感を排除したいという思いが、子どもを行動にかりたて、いじめられっ子を進歩させる。そして、その効果があって、ある程度進歩が認められるようになると、もうそのことでいじめられなくなる」
ただし、いじめ方には注文をつける。
いじめの理由は行動を対象にするべきで、ヨットが上手に操縦できないとかの理由でいじめるのならいいが、肉体的なこと(デブとかブスとか)で恥をかかせても進歩につながらないから、そういう時は戸塚校長やコーチはいじめた訓練生を叱る。

二ヵ月後、丘晃君は「戸塚校長がもう良いと言うまでスクールにいなさいとお母さんに言われた」というので、正式の訓練生になる。
戸塚校長が両親に「一ヵ月の訓練では不十分で、このまま中学生になってしまっては手遅れになる」とアドバイスしたからである。
戸塚ヨットスクールの入校金は315万円、生活費は毎月11万円。
丘晃君にはそこまでして入校させなければいけない問題があるように思えないのだが。

丘晃君の写真には「いじめられる丘晃君」と「勇ましい顔つきになった丘晃君」という見出しがついている。
使用前と使用後みたいである。

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5 コメント

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お久しぶりです。 (ふくえんじ)
2011-09-03 15:55:39
この作品、地元の単館シネマで見ましたが、かつては一度卒業したらほとんど帰ってくることはなかった訓練生が、現在ではしばらくするとまた帰ってくるケースが多いという点が、なんか重く残りましたね。
ラスト、体験入学のような形で入ってきて、後に正式に訓練生となった小学生の男の子が去っていく際に、「がんばれ」ではなく「また来い」と言われるあたり・・・家庭や学校よりも戸塚ヨットスクールの環境のほうがまだマシなのかな?と驚きました。
ある意味で戸塚ヨットスクールというのは、極端な一つの受け皿で、積極的にそこに預けたい人は少ないんじゃないかとも思うのですが、そこに預ける以外の選択肢があるのか?ないのか?そのあたりは気になりましたね。
うば捨て山 (円)
2011-09-04 19:47:58
訓練生が自主的に戻ってくるのではなく、親が連れ戻し、送りこんでいるわけでしょう。
どうすることもできなくなって、それで戸塚ヨットスクールに預ける。
これは現代のうば捨て山だと思いました。

他の選択肢がない、というわけではないと思います。
その一つである「べてるの家」について、次回から書く予定です。
豆知識!! (スペルマン)
2011-09-06 17:58:26
戸塚ヨットスクールで思い出しましたが、俳優の山本太郎のデビューはたけしの元気が出るテレビでの高校生ダンス甲子園のコーナーなのだが、そのチームの名前は…
アジャコングVS戸塚ヨットスクールズ
というチームで出場した。(本当)
ダンスが上手い、下手以前に完全にイロモノ扱いだった…(他のチームの衣装は学生服やブレザーなのに対し、山本太郎のチームのみビキニパンツで身体中ワセリンでテカテカにして出ていた…)
戸塚ヨットスクールで思い出しました。くだらなくてすいません。
新知識 (円)
2011-09-06 20:41:50
これですね
http://www.youtube.com/watch?v=fjYc6U3QFvk
山本太郎はもうお笑いはしないんですかね。
もったいない。
他のグループもうまいと思いますが、今はどうしているんでしょうか。
アジャコングという名前、初めて知りました。
世の中には私の知らない楽しいことが山ほどあるんですね。
いやはや
埼玉県警 不祥事 : 羽生警察署 巡査 が証拠品の児童ポルノ等を署内で複製、上司らに配布 (羽生警察署 署長は鷲平保雄 )
2016-10-20 19:22:44

埼玉県警 不祥事 :
羽生警察署 警備課 巡査長 が証拠品の児童ポルノDVD等を警察署内で複製、上司らに配布、
課長らが「自分もほしい」と言って複製を依頼、
羽生警察署 署長は鷲平保雄

http://blog.livedoor.jp/livdoorsaitam/


□証拠品のわいせつDVD複写 巡査長懲戒免職 埼玉県警 [朝日新聞]


埼玉県警 羽生署 警備課の巡査長(27)が証拠品のわいせつDVDをコピーし署員に配っていた問題で、県警は5日、わいせつ図画頒布と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供)容疑で巡査長を書類送検し、懲戒免職にした。


また、コピーを依頼した同課長(55)=同日付で依願退職=らを停職1カ月の懲戒処分とするなど、当時の上司ら計9人を処分した。


調べでは、巡査長は2月下旬~3月上旬、証拠品として押収したわいせつDVDを勤務時間中に署内でコピー、課長と別の課の巡査部長(49)に計14枚を配り、別の警部補(36)にもパソコンに取り込むかたちで画像を提供した疑い。

課長に配ったとされる9枚のうち1枚が児童ポルノだった。


DVDは、同署が2月に群馬県内のわいせつDVD卸業者を、わいせつ図画頒布容疑で家宅捜索した際に押収。巡査長と巡査部長はDVDの検分を担当していた。


コピーに使ったとされる複製機も押収品で、巡査長は自分用にも20枚ほどコピーしたという。


警部補への提供が最初だが、それを知った課長らが「自分もほしい」などと言って依頼したという。

巡査長を最も重い処分としたことについて、県警は「断ることも可能で、厳重に証拠品を管理していた部屋に入った責任は重い」とした。


階級を利用した強制や金銭の授受はなかったという。

高橋克郎・監察官室長は「職員がこのような恥ずべき犯罪行為を発生させたことは誠に遺憾。

職員への職務倫理教養と証拠品のより厳格な管理を徹底し、県民の信頼回復に努めたい」などとコメントした。

▽関連記事

http://www.asahi.com/national/update/0705/TKY200707050336.html



一般財団法人 埼玉県警察福祉協会 評議員 鷲平保雄(羽生警察署 署長時に不祥事があり処分)


[ 一般財団法人 埼玉県警察福祉協会 ]

役員及び評議員


会長
加藤憲

副会長
三田勇、石田昌彰

理事
井上長次郎、横澤完治、久保田茂、宮本悦郎、清野邦夫、小河進(*)、村山幸央

監事
秋葉勝、榎本幸雄

評議員
田中實、鷲平保雄、金子賢治、千葉照實、増田一二、貝沼知、渡邉恒雄、髙石光治、篠崎義則、茅根勝、矢嶋富士夫、藤間敏、堀口勉、片岡公雄、石川奥睦夫、横井伸二、中村悟、中村繁幸、布施周雄、関口明男、稲村祥、前島栄吉、荒井義雄、吉原昌一、長島利昌、星野明義、寒河江拓二、小林隆男、高山津、齊藤譲治、橋本宗久、高花忠二

引用: http://keiyu110.org/about/structure/


(*)小河進 (平成16年度 埼玉県警察学校校長の時に業務上横領)
http://blog.livedoor.jp/saitamalivdoor/archives/3297533.html

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