マガジンひとり

オリンピック? 統一教会? ジャニーズ事務所?
巻き添え食ってたまるかよ

旧作探訪 #126 - ガンモ

2014-03-09 20:42:55 | 映画(レンタルその他)
Gummo、ハーモニー・コリン監督、1997年・アメリカ
竜巻に襲われて大きな被害を被った米中西部の町・ジーニア。頭部にウサギのぬいぐるみをかぶり、ハイウェイの高架から車に向かってツバを垂らす少年…
『KIDS』の脚本で「子ども・若者が使う言葉をスクリーンに再現できる」と評判をとったコリンの監督第一作。主人公をはじめ、登場するのはアマチュアの俳優ばかりで、ストーリーらしいストーリーはないが、貧困、暴力、病気、薬物依存、同性愛、児童虐待など、普通のアメリカ人の暮らしに忍び寄る荒廃が淡々と描かれる。




どこかの評論家が、こともあろうに『闇金ウシジマくん』を紹介する新聞記事で、「今の日本は格差社会ではない」と断じていた。
理由は「明治時代や昭和初期に比べれば格差は少なく豊かになっている」からだそうな。
そりゃそうだろうよ。
問題は、教育や就職を通じ、親から子へ貧困が引き継がれ、相対的貧困率(特に子どもの)が上がって格差が固定化し、人びとにとって「みんなで豊かになろう」というような希望を抱けない社会に変わりつつあることなのだ。

その一つの表れとして、ウシジマくんも時としてストーリーよりも「お刺身食べたい」とか「甘いパン 甘いパン」とかの断片が印象的で、それでもまだ、凄惨で読むのが苦しい「洗脳くん編」でさえ主人公の出産を通じ、ある種のカタルシスが用意されているのに対し、この『ガンモ』では、あらゆることが断片的で、ドラマ性・ストーリー性が排除され、時間が進んでいるという前後関係さえはっきりせず、どこから見始めても大きな違いがないことが挙げられる。

いまウシジマくんも陳腐な深夜ドラマになっているが、これまでのような映画やドラマのやり方では、今を生きる登場人物たちの感覚を伝えることができない–




マガジンひとり @magoneperson
「学校は(周囲が見て見ぬふりをするなど)いじめを継続させる条件を備えた特殊な場」だけれども過酷な就職競争の中では「前提となる社会環境を問い直す」態度を貫けば負けてしまうので「いじめは決してなくならない。強者が弱者を打ちのめすのは人間の本能」と考える大学生たち–貴戸理恵・東京新聞 2-Mar-2014


結論ありきのじじい評論家と異なり、この女性は大学の教壇に立ち、「いじめをなくす」方向へ学生の意識を導こうと試みるのだが、就職を前にした学生にとって「一人一人の意識を変え、やがていじめのない世の中に」というのは時間がかかり過ぎて呑めない。
見て見ぬふりをし、そういう自分を正当化する。いじめとかに、関わってられない。

こうして、社会の分断は進む。
「希望がない」のは、競争の中で蹴落とされないよう必死な、勝ち組のみなさんも同じことで、むしろ『ガンモ』のみなさんは、町全体が下がっていて、あからさまな富裕層とかを目にすることもなく、それなりに仲間もいて楽しそう。
希望がないこと以上に、その感覚を誰かと分かち合うことができず、孤独だということが最も恐ろしい。死ぬしかない。
在特会の連中も、本当は主義主張などよりも、「仲間とつるむ」ためのコミュニケーション・ツールとして、差別を利用しているんだろうから。
そうした意味では、映画の中でバディ・ホリーの "Everyday" とロイ・オービソンの "Crying" という古い曲が登場人物たちの拠りどころとして効果的に使われており、相対的貧困率が高いといっても、まだまだアメリカは結構豊かなのかもなと–





米公立校48%低所得層 - 2011年、「移民流入で悪化」
【ワシントン=共同】 米国の公立学校で低所得の家庭の子どもが急増し、2011年には児童生徒数のほぼ半数を占める事態になった。低所得家庭の子どもは健康面や学力などで不利な立場にあり、教育専門家は「これこそが米国の教育問題だ」と警告している。

米教育振興慈善団体の南部教育財団(SEF)は、農務省が低所得家庭を対象に実施している昼食費の補助制度を利用している子どもの数を調査。それによると11年時点で全米の公立の幼稚園や小中高校の児童生徒約5千万人のうち48.0%が低所得家庭の子どもだった。

補助の対象となる家庭の年収は物価動向で変わるが、11年は両親と子ども2人で40,793ドル(約430万円)を下回る家庭が対象だった。低所得家庭の子どもの割合は10年間で1割上昇しており「移民の流入や低所得層の高い出生率、金融危機に伴う景気後退で状況が悪化した」(同財団)という。

地域別ではミシシッピ州が70.6%で最大。ニューメキシコ、ルイジアナ、オクラホマ、アーカンソーの各州も6割を超えている。全米50州のうち17州で低所得層の子どもが半数を超える。南部と西部で比率が高い。都市部に集中しているのが特徴で、黒人やヒスパニック(中南米系)の児童生徒の7割前後を占めている。

公立校の運営費は連邦、州・地方の政府が分担拠出しているが、地方政府分は固定資産税の税収が財源になっている。住民が豊かでない地域は税収が少ないことが多く「施設や教員の質も劣る傾向にある」(ワシントン・ポスト紙)とされる。 –(東京新聞2013年12月29日)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Top 20 Hits of 8-Mar-2014 | トップ | Top 20 Hits of 15-Mar-2014 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(レンタルその他)」カテゴリの最新記事