目の前にいる動物の次の動きを、瞬時に予測するには、どうしたらよいか? 視覚、聴覚などで得られる感覚信号だけから動物の外面的な動きを把握し、そのデータから推算して次の運動を予測する仕事は簡単ではない。多数の筋肉の伸縮による動物の運動は、複雑な脳神経活動によって制御されている。この筋肉運動を、たとえば高速コンピュータを使って、ロケットの軌道予測に使うシミュレーションプログラムの計算のように実行しても、かなり時間をとる上に、たいていは観測データが少ないのであまり正確な予測はできない。まして、コンピュータよりずっと計算速度が遅い脳神経系を使う情報処理として実行しようとしても、とても実用の速度には間に合いません。
そこで、(拙稿の見解では)哺乳動物の進化の過程で別の方法による、動物の動きの高速予測法が開発され、実用化された。それが、動物を駆動する内的要因として、意志、意図および欲望というものを想定して、それを推測することで次の行動を予測する方法です。