最近の館山で売り出しているご当地グルメ、というかご当地丼が、炙り海鮮丼だ。三段重ねの特製丼は上段にサザエと炙り海鮮の串、中段は旬の地魚の刺身、下段はちらし寿司の豪華版。当地の山海の味が、まさに凝縮したスーパー丼である。
まずは上の器から攻めるべく、串の刺身を網で軽く炙る。そのまま食べてもうまい鮮度抜群のを、火にかけていただくのだから実に贅沢。軽く色が変わった「たたき」ぐらいがお勧めだそうで、メダイやスズキなど白身の淡い旨味が活性化し、特製のタレに引き出されること。ホクホクとシャッキリが相かぶさる食味も、なかなか新鮮だ。マストアイテムのつぼ焼きサザエも、グッとかみごたえある身にワタの苦味が芳醇。
忙しく上段を炙り尽くしたら、中段の刺身に移行。こちらはシコシコ弾力あるカンパチにトロ甘いメジマグロ、そしてザッとかっ込むとシャクシャクで脂がトロリのアジたたきと、赤身と青魚の鉄壁のフォーメーション。炙り串と合わせ地魚八種が決まりなのは、里見「八」犬伝にかけているのだとか。
最下段の花ちらしは、名の通り特産の花をイメージした、華やかな色合いに和む。錦糸卵の黄と菜の花のお浸しの緑のコントラストは、猛暑の中で春爛漫の花畑を思わせる。ボリュームある海鮮を二段平らげた後に合わせてか、やや軽めの量なのも締めご飯にはありがたい。
汁物もキンメのアラ汁で、ここでの今が旬の魚介はコンプリートしたのでは、と思うほど。1600円の値段以上の満足度、特に魚介の多彩さと鮮度は文句なしだろう。二日に渡って味わったローカル魚のすべてが、この三段に集約されていると思えば、自身の館山の旅の行き着くべき先はまさに、この一丼だったのか?