「天下一品」のラーメンを初めて食べた時の驚愕は凄まじく、以来どっぷりファンになってしまった。さっぱりした野菜ベースのスープは、麺がからまるほどドロドロに濃く、飲むというより食べている感じだ。
チェーン店だがもとは京都で屋台から始まった、京都ローカルのラーメン。東京で見かける、醤油スープで上品な「京風ラーメン」と比べ、かなり個性が強い一品である。
そもそも京風ラーメンとは、京都の外の人間が和風ラーメンを称したもので、ご当地ラーメンではないらしい。京都市街屈指のラーメン激戦区・一乗寺の東大路通界隈を行くと、個性的あふれるラーメン屋が軒を連ね、「京風」ではなくリアルな京都スタイルのラーメン事情がよく分かる。
聞いたところ前述の天一に加え、澄んだ醤油スープの新福菜館、背脂醤油スープのますたにラーメンが、主たる京都ラーメン3系統との説がある。天一の総本店は激戦区の近くの白川にあり、ファンとしては原点の味を試したかったが木曜は定休日。そこで案内者の勧めで、目と鼻の先にある同系統の「満月堂」の暖簾をくぐった。
麺のメニューは「ラーメン」のみで、ご飯つきの定食が昼の人気メニュー。運ばれてきたのは白濁の濃厚スープに細麺、具は薄めのチャーシューにネギがたっぷりと、見た目は天一のラーメンを思わせる。
スープをごってりからませ、ドゥルドゥルとすすると、甘みのあるさっぱり味の中に、一本芯が通った印象。同じ醤油ベースだが、各種野菜から煮出した天一のスープに対し、ここのは鶏豚骨を使って旨味に奥行きを出している。豚骨のクセがいかにもラーメン、といった風味で、パンチがあり病みつきになりそうな味わいである。
やや濃厚な分、たっぷりの青ネギが爽やかな存在で、茶碗飯とともにサラッと食べ切れた。意外な組み合わせが、定食についた鶏唐揚げ。揚げたてジューシー、スパイシーだが、ゴロリと3つは主たるおかず並みのボリュームだ。
この唐揚げ、京都ではラーメンのサイドオーダーとして、ポピュラーなものらしい。ラーメンの組み立てだけでなく、セットにまで京都スタイルあり。東京の天一ではチャーハンセットが定番な私にとっては、これは胃袋に驚愕!