前半に魚介の燻製でワインが進んだ、チャテオあくさんでのひとり燻製ナイトも、肉類の燻製盛り合わせから後半戦に突入する。シャブリからグラスの赤ワインに切り替え、まずはとけるので先に、と勧められた、ごってり脂っぽいフォアグラを。
続いて主役のハムとベーコンを攻める。熟成に一年かける生ハムの脂がヤバイ旨さで、しょっぱく燻製香ばしく脂甘く、もう強烈。米と麦の麹を用い、瀬戸内の湿度で仕上がるそうで、「土地の自然な気候で食は育まれる」とご主人。ベーコンも透明な脂身がジュクッとくるが、ここの料理は脂もたれず体にいい。
ご飯とデザートに移るのが少し早いと思ったら、見透かされたように小鉢のアテをサービスしてくれた。チーズらしく、パルミジャーノのようにコクと酸味があり、削りながらワイン一本いけそうだ。自家製の「植物性」、つまり大豆が素材のチーズと聞き、牛乳ならぬ豆乳発酵のチーズかと驚く。
生卵にモヤシ、ネギに発酵醤油がかけ回された小鉢と、玄米に塩をかけた二口ほどのご飯で締め、デザートにも「ひと口でどうぞ」と謎かけ的一品が。正体はバナナの燻製で、しかも皮ごとの燻製。食感は歯ごたえザックリでバナナに思えず、中はトロリとバナナクリームの甘さ。
デザートをいただいている途中、ご主人が匙にのった料理と、ドリンクをサービスしてくれた。指示に従い、匙のを一口でいった後にドリンクをグッといくと、これまでのすべての料理の後口をリセットする、高貴な甘さの組み合わせだ。ドリンクは「ペドロヒメネス」という数十年もののデザートシェリーで、2年寝かせたゴルゴンゾーラとの年季もの同志の出会いの妙で、締めに圧倒的な甘い幸福に浸れる。
三度目の訪問も、満足のうちに大団円となった燻製ナイト。自分にとっては、カキよりもお好み焼きよりも、これぞ広島の味である。吉本の某料理好き「兄」にも似たマスターとの、ほのぼのした燻製トークも楽しみに、今度の訪広時も路面電車でゴトゴト再訪しようか。