新世界に来るたびに思うのは、よくもまあこの狭い範囲に、同じ業種の店が集まって、それぞれ成り立っていること。串カツ屋がその筆頭で、ジャンジャン横丁のゲートをくぐり、商店街を抜けて通天閣がそびえる通りまで、何十軒と軒を連ねながら、どこもそこそこ入っている。大声で必死に客引きしてたり、インパクトある看板やオブジェで目を引いたり、客取り合戦は熾烈だが、全体的レベルが高いのもよく分かる。
とは言え、店頭を何重にも行列が折り返す突出した人気店もあり、ともに食べたが実際、えらくうまい。だから、周辺の同業店が気の毒なほどガラガラでも、「並んでいると時間がかかりそう。こっちの店が空いているから、いこうか?」とならない。大阪の客が味には厳しい由縁である。
界隈に数店舗を有する「だるま」も、行列必至の人気串カツ屋だが、通天閣そばの店舗では店頭でテイクアウトをやっていた。カップ入り4本500円と、食べ歩きには数も値段もお手頃。フライヤーでカツをどんどん揚げ、ソースをクルリとからめ、テンポがいいから列が滞らず、5分も並べば買えるのがありがたい。
客がズラリ列をなす店頭を尻目に、通天閣直下の広場でいただくと、テイクアウトながら人気店の味はそのままだ。薄目の衣がクリスピーで、牛串は肉がグッとかみごたえあり、エビは軽く熱が加わりプリッ、タンのつくねはほっこり柔らかで肉の味に厚みがある。
熱々を通天閣を眺めつつかじるのは、店で食べるのとはまた違うローカルさがあって、なかなかいい。これも熾烈な串カツ競争の、ひとつの戦略なのかも。食べ放題のキャベツがないのと、自分でソースをつけられないのは、やや物足りないが、店にしてみればこれならソース二度漬けの心配もないか?