昔は四国の玄関口といえば、連絡船が着く高松だった。桟橋で下船した客は、列車への乗り換えで足早にホームへ向かう。その途中、構内のスタンドうどんに吸い込まれ、最初の一杯をすする人たちも。小さいスタンドうどんとあなどるなかれ、玄関口として恥ずかしくないクオリティで、高松市街の人気うどん店に挙げられる実力派だった。
瀬戸大橋が開通して以来、鉄道で四国へ渡る際のゲートタウンは、高松から坂出に変わった。夜行寝台電車「サンライズ瀬戸」利用で松山へ向かう際、朝7時過ぎに着いてここで乗り換えに。駅構内にうどん屋はないが、玄関口でのまず一杯を試してみたく、乗り継ぎ時間を利用してタクシーで5分の「いきいきうどん」を訪れてみた。
セルフ式のカウンターが右に延び、奥ではうどん玉をのばす兄さんや、グラグラ沸く大釜に麺を放ってゆでる親父さん、そして愛想よく接客するおばちゃん。広い客席では出勤前らしいつなぎを着た客が数人、朝うどんを黙々とすすっている。
オーダーはまず、カウンターの入口でベースとなるうどんを選び、進みながらトッピングやサイドオーダーをチョイスして、最後にまとめて支払う仕組み。うどんの品書には、かけより釜玉やぶっかけが目立つのが、さすが本場。トッピングは揚げ物類が充実していて、天ぷらはエビはもちろん、イカにイワシに鶏にするめとバラエティ豊富。かき揚げは直径より厚さが驚愕。どれも皿からはみ出すほどでかいのに、数十円〜200円程度の安さがすごい。うどん屋というよりも、総菜屋の様相である。
高松のうどんスタンドでは、きつねうどんがお約束だったので、ここでも巨大な揚げに大エビ天、さらに珍しい半熟玉子天をトッピング。ざっとまぜてズッ、といくと、柔らかめの麺にしょっぱめのつゆがよくからむ。カツオだしが効いたつゆは香り高く、山盛りネギにきざみのりが爽やかな食べ応え。香りの重層感があるうどんで、玄関口の朝うどんとして充分、及第点の実力だろう。
高松駅は連絡船の廃止後に改築され、現在は駅ビルを併設したしゃれた建物になった。うどんスタンドもこざっぱりした感じにリニューアルし、かつての庶民的たたずまいとは趣を違にする。今日の店はいかにも、香川の普段使いのうどん屋といった感じ。うどん県の玄関口にはやはり、こんなローカルなうどん屋が似つかわしい気がする。