ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFb…宮島 『ふじたや』の、あなごめし

2012年05月11日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 厳島神社の背後の高台に位置する多宝塔の丘は、宮島の隠れたビューポイントだ。道中に見下ろす瓦屋根の屋並み、登り切って塔のたもとから見下ろす厳島神社の伽藍の全景、対岸の山の上の千畳閣に五重塔など、宮島の名所が箱庭的に見下ろせる。右手の先には、広島名物のカキの養殖いかだがびっしりと浮かび、まさに広島を代表する光景といえる。
 このカキいかだが、広島のもう一つの名物魚介であるアナゴに関係していることは、意外に知られていない。いかだのカキについたゴカイなどの生き物が、アナゴのいい餌となっていて、いかだ付近でとれるアナゴは太く腹があめ色の上物に。いかだを見てカキにも誘われたが、いかだの下の方も何だか気になる。お昼はこいつを蒸しあげて丼飯の上に敷き詰めた、あなごめしにしようと、塔の丘のたもとにある「ふじたや」に足を運んだ。

 店は宝物館から大聖院に向かう道の途中にあり、店構えは民家風のこぢんまりしたたたずまい。料理はあなごめしのみで、蒸すのに時間がかかるためビールと、アテにあなご南蛮を注文した。アジの南蛮漬けの要領で、軽く衣をつけ外はカリッと揚げ、中は白身がホクホク。甘酢のタレに唐辛子の辛味が刺激的だが、白身の味が負けていない。うまいのでどんどん食べてしまい、ビール半分ちょっとでなくなってしまうほど。
 まさにそのタイミングで、木の蓋がされた大振りの丼が運ばれてきた。蒸したてで熱いから、とお姉さんに注意されて蓋を開けると、表面をアナゴが整然とびっしり埋め尽くしている。熱いうちにいくと、タレの味が淡くアナゴの白身の淡白さが味わえる。アナゴは外がパリッ、中はかなりねっとり粘っこく、脂がほとんどない純粋に白身の味がする。

 アナゴは大河の河口にあたる湾が、栄養価が豊かな海域のため良質のが揚がるといわれる。大田川河口の広島湾もこの条件にあてはまる。宮島にはあなごめしの店が多く、店ごとにその味を競っている。かつては籠漁が主流だったが、小さいアナゴも捕獲してしまうため、現在は筒漁が中心。その良質のアナゴを使っているので、蒸しあげるだけでふっくらと仕上がるのだ。
 アナゴが柔らかく、かつ味が抜けないちょうどのバランスで、タレの甘さが勝ちがちのアナゴ丼で、素材の素性がシンプルに楽しめる。ご飯がやや軽めで最後までアナゴがなくならず食べ切れるのも、正統アナゴめし。あっさり軽めで、順延したカキ料理などごちそうが期待の晩飯までに腹が減りそうなのもありがたいかも。