暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

桜煙

2013-04-05 | -2013
転がるように坂を駆け降り
それでも私の足はいともたやすくきみを追い越す
鈴の音を鳴らすとはまさにこのこと
さぞやさぞや楽しいのだろう

熱を持った頬を包み
赤らむ鼻先に唇を落とす
きみは小首を傾げていたね
とてもとても不思議そうに

息は白く立ち上る
熱は内からわきあがる
煙はもうすぐ止むはずだ
春がそこに来ているのなら

私はそれを愛と名付け
きみは何にも名付けなかった
ただただ笑って転がり降りた
帰る道より還る途だと

柔らかな頬を包み込み
ひどく冷たいキスを贈ろう
きっと私は凍えているのだ
だからこんなにも冷たいのだ

煙が絶えて青い空が覗くころ
春は間もなく訪れる
私に、誰かに、ほかならぬきみに
山に海に、坂を転げた谷底に

コメントを投稿