暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

羨望

2020-10-21 | 心から
万能の神になりたかった。
幼い頃から何でも出来た。
人並みに、人よりほんの少し楽に。
大体のことはこなすことができた。
だからこそ万能に憧れた。
一芸に秀でた彼らを見送る日々。
労せずとも手に入れられるからこそ、
手にし続ける努力を怠っては、
ただただ願望だけを募らせて、
何にもなれないのが私だからだ。

一握は乏しく、足りず、
片方を得れば残りをこぼす。
出来ることから始めるべきだ、
決して多くを望むことなく。
あなたが羨ましい、
外に出て人と会話し、
当たり前に生きていられるあなたが。
道を歩けば失意にまみれ、
強すぎる五感にうずくまり、
泣きながら同じところをぐるぐると回る、
万能のいきものになれたならば。
きっとあなたと同じように、
当たり前の顔をして生きられる。
免状を得ることができる。
だから万能の神になりたかった。

なぜ私はのうのうと呼吸をしているのだろう。
灰がじりじりと燃えていく、
肺がじくじくと腐っていく。
人並みに、人よりほんの少し楽に、
何をもこなせたところで意味がない。
だって一人では何も出来ないのだ。
人間になりたい。
当たり前に生活をして、
当たり前に会話をして、
当たり前に外を出歩き、
当たり前に感動できる、
人間に、なりたい。
呼吸をするだけで精一杯ならば、
一握など何の意味があるだろう。
役割をこなすことさえできなければ、
一握など何の足しになるだろう。
あなたのようになりたかった。
あなたたちのようになりたかった。
私にとって、あなたたちは、
万能の神に等しいからだ。

コメントを投稿