暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

おかす

2023-07-04 | 
楽しげに弾む声から逃げ出した
屋根と屋根の隙間で煙草を吸いながら
自販機のさみしい灯りを眺めながら
ゆっくりと肺から煙を追い出していく

秘密の場所を侵した彼女は
いつの間にか隣にならんで座り
少し先に見える自販機のあかりを眺めていた

彼女はわたしの
わたしの秘密を次々に侵す
手をつないで 体を寄せ合い
囁きあって 視線をかさねる
煙と煙がからまりあうようにして
彼女がわたしの秘密になった

いつの間にか当たり前の顔をしている彼女の
求めるままに唇を重ね
わたしはわたしの舌が噛みちぎられる音を聞いた
わたしはわたしの血がすすられる音を聞いた
唾液とまざりあい煮こごりのように滴るそれを
丁寧に ていねいに舐めてはすする
いつの間にか隣にいた彼女は
いつの間にかわたしをうばい
わたしの秘密を次々に犯す
わたしは一度も求めなかったのに

何が欲しいのと尋ねれば
あなたの全てと素知らぬ顔
煙草の煙がひとりさみしくのぼっていく
わたしは床に倒れ伏している
血と涙の水溜まりに浸ったつまさきは
それでも汚れたつまさきでしかない

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