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てらまち・ねっと



 昨日は、5人の弁護士と弁護団会議だった。
 事件は、「県の行政委員」に対して月1回ほどの会議に「月額20万円前後」の高額な報酬を支給していることは違法、という争い。

 一番先行していた滋賀県の事件、つまり大津地裁で「違法」、大阪高裁で「選管委員長を除いて違法」、という判決だった。
 昨年の滋賀県の上告に対して、最高裁が先月24日に弁論を開いた。
 高裁判決を最高裁が見直す場合は、最高裁は弁論を開かなければならない、だから、「見直す」意味ととるのが通例。

 最高裁の判決は、来週12月15日と指定されている。
 理屈からいえば、「選管委員長を除くように、他の一部の委員もいいでしょ」という観点で、「月額でも良い、悪い」の基準のラインを引くか、判断し直しのために高裁に差し戻すか、の可能性はある。
 でも、流れからすれば、「月額も違法ではない」と判決するのではないかとみられる。
 理由は、行政や議会には「裁量がある」ところ、月額か日額かは裁量のうち、ということ。

 一方、こちらの岐阜地裁の住民訴訟の弁論は12月14日。
 複雑な思いだ。
 今日のブログ末には、行政委員の問題と裁判についてまとめたダイヤモンド・オンラインの相川さんの記事「地方自治“腰砕け”通信記」を記録。

 (このブログの関連エントリー) 
 2011年9月28日ブログ ⇒ ◆住民訴訟:仙台市の非常勤、報酬違法 「月数日に30万円不合理」 仙台地裁/「判決全文」にもリンク

 2010年7月13日ブログ ⇒ ◆非常勤行政委員に月額報酬の返還・差し止め住民訴訟/今日弁論/岐阜地裁

 2010年4月29日ブログ ⇒ ◆行政委員の高額な月額報酬の返還と差止め訴訟。大阪高裁判決。岐阜県知事は日額方向に見直しか

 2009年2月4日ブログ ⇒ ◆行政委員の月額報酬は違法/支出差し止めを命じた大津地裁判決/日本中、同じ状態

 2010年2月21日ブログ ⇒ ◆住民監査請求/委員らは不当利得として4億3310万円返せ

 2010年3月29日ブログ ⇒ ◆住民監査請求は却下された

   2010年4月18日   ⇒ ◆行政委員の月額報酬は妥当か/4月26日に提訴することに

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●行政委員の月額報酬の是非で弁論 最高裁、判断見直しか
     朝日 2011年11月24日21時29分
 滋賀県が非常勤の行政委員に対し、実際の勤務日数にかかわらず月額で一定の報酬(約19万~23万円)を支給しているのは違法だとして、住民が県に支出の差し止めを求めた訴訟の上告審弁論が24日、最高裁第一小法廷(横田尤孝〈ともゆき〉裁判長)であった。裁判はこの日で結審し、判決は来月15日に言い渡される。

 一、二審は、実際の勤務日数が少ないことを理由に支出の差し止めを命じ、県側が上告。上告を退ける際には必要ない弁論が開かれたことで、結論が見直される可能性がある。

 弁論で県側は、自治体の財政が厳しくなっている社会情勢を考慮すべきだとした二審判決に対し、「裁判所が地方議会の裁量を制限するものだ」と主張。
 住民側は「一審判決後、全国二十数県で行政委員の報酬が日額制に改まった。行政の動向に逆行すべきではない」と反論した。


●大津市:非常勤行政委員、月額から日額制へ 報酬審決定 /滋賀
               毎日新聞 2011年11月11日 
 大津市の特別職報酬等審議会(会長=真山達志・同志社大教授)は9日、月額制としている非常勤の行政委員の報酬を日額制に改めることを決めた。「地方自治法の原則に従うべきで、例外規定には当てはまらない」と判断した。11日に目片信市長に答申する。市によると、日額制になれば全国の中核市や県内自治体で初。
 大津地裁、大阪高裁で県が敗訴した月額報酬の違法性を巡る訴訟=最高裁で係争中=を受け、市が審議会を設置。慎重な意見も出たが、「月額制とする合理的な理由は見当たらない」と結論づけた。【加藤明子】

●行政委員報酬 月額から日額制、加速
          東京 2011年10月30日 朝刊
 教育委員会や公安委員会など自治体の行政委員会委員(非常勤)の報酬について、月額制を違法と判断した二〇〇九年の大津地裁判決後に、神奈川、茨城、群馬の首都圏の三県を含む二十九道府県が日額制を導入したことが分かった。
 報酬制度を検討中の石川県が調査した。
 一方で同判決後、月額制を容認する判決が東京地裁など六地裁で続いており、司法判断の行方を見極めながら対応を図ろうとする自治体もある。 (横井武昭、室木泰彦)

 選挙管理委員長を除く行政委員の月額報酬について、大津地裁判決は勤務日が少ないなど実態に合わないとして初めて違法と判断。月額報酬を疑問視する声が高まった。

 調査によると、判決後に日額制を導入したのは二十九道府県あり、このうち静岡など四県がすべての行政委員会委員の報酬を日額制に変えた。神奈川、茨城、群馬など十七道府県は、一部の行政委員会の報酬を日額制にした。残る愛知など八県は月額報酬を低く抑え、勤務日数に応じ日額報酬を加算する月額・日額併用制とした。

 一部を日額制とした十七道府県のうち、勤務日数を基準に日額制に改めるかどうかを判断したのは神奈川など五県。神奈川の場合、拘束時間が長いなどの理由で、公安委員と、監査委員の一部は月額制を維持した。他の十二道府県は、勤務日数に業務の特性を加味して判断した。

 一方、千葉など十二府県は全行政委員会で月額制を維持した。
 また東京、埼玉、栃木など六都県は、判決前から一部に日額制を取り入れていた。
 大津地裁で争われた事案は上告中で、十一月二十四日に弁論が開かれる。大津地裁判決後の宇都宮など六地裁判決は、すべて月額制を合法と判断しており、大津地裁判決も最高裁で覆る可能性が指摘されている。
 石川県は検討委員会を設けてどう見直すか検討しており、最高裁判決後に決めることにしているが、一部委員からは「結論が延びるほど(月額制で)多くの税金が投入される」との声も出ている。

 ルール形骸化で「もらいたい放題」の行政委員
住民訴訟で原告に軍配を上げた仙台地裁の気概

      ダイヤモンド・オンライン 【第39回】 2011年12月9日 相川俊英 地方自治“腰砕け”通信記


原告側がめったに勝てない住民訴訟
仙台地裁の判決がイメージを覆した!


 住民が行政(自治体)を訴えるいわゆる住民訴訟で、原告側の勝訴となるケースはめったにない。日本の裁判所は行政の違法行為を指摘する住民側ではなく、相手側に軍配を上げるのがほとんどだ。

 そうした司法の判断に「結局、裁判官も行政マンと同じお役人にすぎない」と、不信感を募らす住民も少なくない。裁判官が自分たちの訴えをきちんと受け止めず、行政側の言い分をそっくり鵜呑みにしているとの不満である。

 住民訴訟はいつも住民敗訴――。そんな半ば諦めの声が全国に広がる中で、誰もがびっくり仰天する判決が飛び出した。仙台地方裁判所が今年9月、ある住民訴訟で原告勝訴を言い渡したのである。
「それほど働いていない人にこんなに支払うのは、税金の無駄遣いだ。そもそも日額制が原則なのに、特別な事情のないまま月額制にしているのは、不当だ」

 こう語るのは、「仙台市民オンブズマン」のメンバーで弁護士の齋藤拓生さん。
 齋藤さんら「仙台市民オンブズマン」は、仙台市が非常勤行政委員に月額で報酬を支払っているのは勤務実態に合わず不当だとして、報酬の支出差し止めを求める住民訴訟を起こしていた。月にわずか2、3日しか勤務しない非常勤行政委員に、月額約10万から約30万円もの報酬を支払っているのは、違法だと訴えたのである。
 これに対し、仙台地方裁判所は9月15日、「非常勤行政委員の報酬は、勤務に対する給付としては著しく不合理だ」と認定し、齋藤さんらの訴えを認める判決を下した。

 自治体の中で重要な役割を担う存在でありながら、何をやっているのか住民からはよく見えない部署がある。その代表事例と言えるのが、監査委員会や教育委員会といった行政委員会だ。専門知識が必要とされたり、公正中立な立場が求められる業務を合議制で行なう、自治体の執行機関の1つである。

行政委員会の設置は、法律の定めるところにより、権力の集中を排除する意味もあって、首長から直接の指導や監督は受けない。また、委員は専門家など一定の選任資格が定められ、議会での選挙や同意などによって選ばれる。
「人格が高潔で識見のある者」が就く特別なポストとされた。委員には任期があり、また、自らの意に反して罷免されることはない。職務の独立性を保障しているのである。

 市町村に設置される行政委員会は、教育委員会や選挙管理委員会、人事委員会または公平委員会、監査委員会、農業委員会、固定資産評価審査委員会の6種類。都道府県には教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員会、公安委員会、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会の9種類である。

「日額制」を原則と規定する地方自治法
例外の月額制を逆手に取った行政委員

 各種行政委員は一部を除き、ほとんどが非常勤である。また、各委員会には事務局が常設されており、自治体職員が常勤スタッフとして配置されている。彼らが委員の職務を補助する建前となっている。

 地方自治法は、こうした非常勤の行政委員の報酬について「勤務日数に応じて支給する」とし、「日額制を原則」と規定している。その上で、但し書きに「条例で特別の定めをした場合、勤務日数によらずに報酬を支給できる」と書き加えている。
 この規定は、1956年の法改正で盛り込まれたもので、当時選挙管理委員会や人事委員会などの非常勤行政委員が、常勤職員とほぼ同様に出勤していた実情を反映させたものだ。

 各種行政委員を一律で月額制にしたり、法律で個別に月額制するのも妥当でないと考え、自治体の自主性を尊重して条例による例外(月額制)を認めることになったのである。

 つまり、非常勤行政委員の勤務実情により、例外的に月額制を採用してよいというのが、そもそもの法の趣旨である。

 ところが、である。ほとんどの自治体がいつの間にか原則と例外を逆転させ、非常勤行政委員の報酬を月額制にしてしまったのである。同時に、行政委員のポストを特定団体や議員、自治体OBなどの指定席に変えていった。

 まるで、委員にふさわしい「人格が高潔で識見のある人物」が、行政周辺にしか存在しないかのようになっていった。
 こうして行政委員と行政の馴れ合い関係が深まり、行政委員の職務は事務局の手の平で踊るだけになっていった。独立した執行機関というよりも、単なる事務局の追認機関に変質していったのである。

 行政委員会制度の形骸化、ないしは、御用委員会化だ。もちろん、全国の自治体に共通して見られる現象である。

仙台市の言い分に説得力はまるでなし
勤務実態を丹念に分析した画期的な裁判

 仙台地裁の裁判官は、非常勤行政委員の勤務実態を詳細に分析し、その上で判決を下している。膨大な議事録を読み込み、さらには非常勤委員らの証人尋問まで実施した。

 これにより、「勤務時間以外に事前準備などに相当の時間を費やす」「本業の活動が制限される」「人材確保の見地から月額制が必要」といった仙台市の主張は、ことごとく退けられた。

 なにしろ、当の非常勤行政委員らから「総選挙だからといって大変ということはない」(選挙管理委員)「本業に支障はない」(人事委員)「委員に就任するまで月額報酬制を知らなかった」(監査委員など)といった証言が飛び出したのである。仙台市の言い分に説得力がないことが明らかになったのだ。

原告の齋藤弁護士は「当局が提出した書類や主張だけで判断する裁判官が多い中で、議事録を読み込み、委員の訊問まで行なって勤務実態を丹念に分析した上での画期的な判決だ」と、評価する。

平均勤務日数2.0日で29万8000円?
全国に見られる行政委員のやりたい放題

 では、非常勤行政委員の勤務実態とその報酬はいかなるものだったのか。裁判所の認定(06年度から09年度)によると、監査委員(有識者)の月平均勤務日数はわずか2.0日で、月額報酬は29万8000円。日当に換算すると、14万9000円になる。
 市選挙管理委員は月平均1.7日の勤務で、報酬は月20万3000円。日当換算で11万9000円となる。会議への出席が主な仕事で、独自に調査や研究を行なうことはなく、会議も1時間程度で終わる。

 なんともおいしい仕事ではないか。人格が高潔な人物に対してとはいえ、いったい何のために高額な報酬を支払い続けるのか。その実態を知れば知るほど、疑問が膨らむはずだ。そして、その原資が血税であることに着目すれば、怒りが沸き上がってくるのではないか。

 非常勤行政委員の月額制を違法とされた仙台市は、9月27日、日額制では行政委員の成り手がいなくなると思っているのか、判決を不服として控訴した。ちなみに、国の非常勤行政委員は日額3万7000円以内で、各庁の長が定める日当制となっている。
 非常勤行政委員は全国の自治体に存在し、そのほとんどが月額の報酬を手にしている。しかし、そうした事実を知らずにいる住民も多く、是非をめぐる議論は一部の自治体にとどまっている。

 全国の自治体が早急に改善すべき課題であることは、間違いない。


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