昨日のブログで少し説明しておきましたが、岐阜県の幹部の退職金のことで、住民監査請求しました。
このことは、特に呼びかけなかったので、16名。入れ違いで11名分届いたので、追加提出しておきます。
地方自治法は、給与や手当てについて、支給する場合は「額と支給方法」を条例で規定することとし、条例に基づかずには支給できないとしています。
しかし、後記のデータのとおり、岐阜県だけが、「予算の範囲内において退職給与金を支給することができる」 としています。
この条例に明記しないという「岐阜モデル」は、「究極の隠し方」のひとつというしかありません。「退職金」を県民に見せないことは極めて恣意的。
裁判では、名古屋市の議員の費用弁償(日当のようなもの)に関して前例があります。
2004年の名古屋地裁の判示は、
「 『・・その費用を弁償するものとし,その額は,予算の範囲内で市長が定める。』と規定し,費用弁償の額の決定を市長に一任し,かつその支給方法について何ら触れるところがないから,・・本件条例は・・無効というほかない。」
としました。 2005年の控訴審・名古屋高裁も同旨の判示です。
過去20年間の退職金の返還が実現すれば、裏金返還金充当とみなすことも相応に合意できるし、それが、裏金返還と県幹部の責任の履行を強く求める県民の意思にも適うと要望しておきました。ま、20年以上前の裏金分は法律上、使ったもの、やったもの勝ちだから、悔しいけど、仕方なし。
昨日の住民監査請求の内容や証拠は下記に紹介します。
あわせて、知事にも要望書を出しておきました。
他県の人は、ご自分の所の知事の退職金をご覧ください。
なお、記者会見では、副知事や出納長の実際の額は、知事の「0.7」より率が低いかも知れないが、そのことすら県民には分からないと話しました。
記者から「2人の副知事のうちの一人は国から来ていて、そちらには退職金は無いと聞いた覚えがある」と質問されましたが、「条例にはそんなこと書いてないから、分かりません」と答えました。
今回のポイントは、「県民に見せない退職金の支出」ということなんです。
同時に、関係文書も「人事課」と「議会事務局」に情報公開請求しておきました(文末に紹介)。
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● 岐阜県常勤の特別職三役の退職金にかかる住民監査請求書
(岐阜県職員措置請求書)
第1 本件事実が分かった経過と概況
1. 誘引としての県庁ぐるみの裏金作りと裏金隠しの発覚
請求人らの2006年9月29日付け住民監査請求の趣旨(第1 県庁ぐるみの裏金作りと裏金隠しの発覚、 1.事実あるいは経過 2.裏金の費消と裏金隠し 3.隠ぺいの事実 4.岐阜県の情報公開における不正隠し 5.意図的な「調査せず」という方針 6.裏金発見のチャンスはあった 7.以上、どの点からしても、前知事ら幹部の悪意に起因することは明らか)を援用する。
2. 県議会質問で明らかになった退職金隠し(支給額と方法の隠蔽)
岐阜県の常勤の特別職三役(知事、副知事、出納長)の退職金にかかる規定に関して、今般の「平成18年第4回岐阜県議会定例会(9月21日開会10月12日閉会)」の一般質問で問題とされた。
議会で答弁された退職金の額の算定根拠が条例に明記されず、内規において示された「給与月額の0.7」を根拠としていたというものであり、県は条例改正の意向を答弁した。
3. 常勤特別職三役の職員に支給された退職金の額の推定
岐阜県の「知事、副知事及び出納長給料その他給与条例」第1条において、知事の月額134万円、副知事の月額106万円、出納長の月額92万円と規定されていることを基とし、2人の副知事と出納長の退職金の合計は、議会で答弁された「月額の0.7」が三役全員に20年前から適用されていると仮定したときの退職金の額は、以下である。
1期4年間あたりで、
知事は 134×12月×0.7×4年=4502万4千円
副知事は106×12月×0.7×4年=3561万6千円
出納長は 92×12月×0.7×4年=3091万2千円
この際、副知事は2人であるから、4人の1期分の合計は以下である。
4502万4千円+(3561万6千円×2)+3091万2千円=1億4716万8千円。
即ち、20年間の返還請求でみれば、1989年、1993年、1997年、2001年、2005年の5回分の支給であるから約7億円と推測される。
なお、別件請求において住民監査請求している「梶原知事職」分を減ずると、本件住民監査請求の対象物は、おおよそ5億円と推測される。
4. 退職金の究極の隠し方
通例48ヶ月+就任月の49ヶ月が基本となることから一層問題視されているところ、岐阜県の場合は、どのようであったかも計れない。
この条例に明記しないという「岐阜モデル」は、「究極の隠し方」のひとつというしかない。全国でも岐阜県だけであって、退職金を県民に見せないことは極めて意図的というしかない。
第2 違法性と損害
1. 地方自治法は、「額と支給方法」を条例で規定することとしている
(1) 法律が、条例にその具体的内容を定めることを委任している場合、条例は法律が個別的、具体的に委任した事項について定めを置くことができるにすぎず、条例の規定が法律による委任の限界を超えたり、その趣旨に反する場合には、当該条例は当該法律に反して無効となる。その範囲は、法律で明示されている場合はそれにより、明示されていない場合にはその法律の構造や趣旨・目的、他の法令との整合性等を勘案して解釈することになる。
(2) 地方自治法第204条第1項は、「普通地方公共団体は、普通地方公共団体の長及び・・常勤の職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない」、同第2項「普通地方公共団体は、条例で、前項の職員に対し、・・手当又は退職手当を支給することができる」、同3項は、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」として各種給付を条例で明記・規定することを定めている(給与条例主義という)。
第204条の2は、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第203第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない」としている(第203第1項の職員とは、県議や各種委員など非常勤職員)
(3) この制度の目的は、住民の代表者である議員によって構成される議会が、支給に関する条例を制定する過程で、その必要性、合理性を慎重に審議することで、当該自治体の財政の健全化及び透明化に資することにある。また、その支給基準が条例によって定まることにより、支給の対象となる職員の身分が安定する効果もある。
前記地方自治法は、「額」を条例で定めなければならないと規定しているから、条例自体にその金額を明記するか、その具体的算出方法を定めるなどして、少なくともその規定によって、誰が見てもその金額を同一のものとして確定し得ることが不可欠な要件である。
2. 本件条例の規定
「岐阜県の知事、副知事及び出納長給料その他給与条例」(本件条例という)の第4条第2項は、「知事等が任期を満了した場合は、予算の範囲内において退職給与金を支給することができる。」と規定し、退職金の支給の有無及び支給の額の決定について、予算執行権を専権的に有する知事に一任しているのである。
結局、本件条例の規定によっては退職金の支給金額を確定することはできないから、明らかに、法第204条第3項の趣旨に反しており、本件条例における退職金の規定は無効である。
その支給方法については、第5条において「一般職員の給料及び手当ての支給の例による」とされているだけであり、この点からも違法で無効である。
3. 岐阜県の損害
よって、本件条例に基づく本件退職金の支出は、公金支出の根拠を欠いており、地方自治法第242条の定める「違法な公金の支出」に当たることは明白である。よって、当該支出相当額の損害がある。
本件住民監査請求人は、民法の定める20年分(本件では、前記の約5億円と推測)を根拠なく支出された損害であるとして請求する。
4. 回復を怠ることの違法
前記過去20年間に法令の根拠なく支出された退職金の全額は、返還されねばならないところ、職員には地方自治法による時効はあるが、知事の賠償責任は民法が適用される。
現知事等が、過去20年分の「各交付時の知事及び交付決定者」と「受益者」に対して、各自の該当する退職金相当分の損害(含利息)の回復を怠ることは違法である。
5. 差し止め請求が無視された場合の損害
本件差し止め請求分が支給された場合は、「各交付時の知事及び交付決定者」と「受益者」が弁済する義務を負う。
6. 遅延損害金
今回の裏金使途の一つに「幹部の退職時のせん別」に充当したとされていることからすれば、それは許されない二重退職金であるし、本件退職金隠しに悪意があることは疑いないから、少なくとも民法規定の年5%の遅延損害金をつけて返還すべきである。
第3 本件住民監査請求の特質
1. 正当理由の存在
本件において請求期間が1年を途過したことには正当理由がある。
岐阜県の特別職三役の退職金にかかる規定に関しては、今般の県議会の一般質問で問題とされ、県が条例改正の意向を答弁した。県議会(議員)が初めて指摘するほどであるから、退職金額とその支給の方法が定められていない、そのような状態で退職金が出されていた、という事実は県民が知ることができることではない。
仮に条例を見たとしても、「支給する」ではなく「支給することができる」との規定であるから、実際に退職金が支給されているかいないかも県民にはとうてい知ることができない。
もし支給した場合であっても、その額も「内規」として秘密にされてきたのである。地方自治法に「額と方法」を明記することが定められ、実際に全国の自治体が明記していて岐阜県の例は稀であることからみても、本件支出が意図的に県民に見えないように制度上も秘密にされてきたのである。
なお、仮に1995年の情報公開条例制定以後において公開請求しても、退職金の額は「職員の私生活にかかる個人情報」として非公開にされたことは明白である。
以上、岐阜県の常勤特別職の退職金の支出及びその支出額は、県民が知ることができないように秘密裏にされてきたのであって、今般の県議会ではじめて明らかになったのだから、住民監査請求の期間が途過したことには正当理由がある。
2. 怠る事実
条例の提案権を有する知事やその補佐の副知事、会計における法令適合性の審査権限と監督責任を有する出納長が、地方自治法の定めに反して違法な条例を制定しもしくは改めずに、県民に隠して自らの退職金の支給を受けてきたのであるから、歴代の岐阜県の常勤特別職の職員には、不法行為責任がある。よって、現知事がそのことによる岐阜県の損害の回復を怠ることにかかる請求には期間制限は及ばない。
第4 個別外部監査の実施の求め
裏金問題も含めて、違法な退職金を支出してきたなど、岐阜県の法令遵守の自覚のなさは著しい。諸般から、監査委員や監査委員事務局には本件裏金事件を監査する適格が無いことは明白である。今、必要なことは、県民・国民の納得の行く「結論」である。
以上の理由により、地方自治法第第252条の43に規定する住民監査請求の特例の規定及び岐阜県外部監査契約に基づく監査に関する条例第3条(個別外部監査契約に基づく監査)の第5項を発動して、外部監査人による個別外部監査を実施することを求める。
第5 監査委員に求める措置
過去20年間において、岐阜県知事、副知事、出納長ら常勤の三役特別職職員に支給した退職金につき、次の趣旨の措置をとるよう(外部)監査委員に求める。
1.過去20年間に支給した退職金の全額の返還(含む利息)(「梶原知事職」分を除く)
2.前項につき、各交付時の知事及び交付決定者と受益者に対して、各自に対応する退職金相当分の損害(含利息)の返還請求・賠償請求をしない場合の知事の違法な怠る事実の是正
3.退職金支出の根拠が欠如した状態での常勤の特別職三役への退職金支出の差し止め
4.現状で支給した場合は、知事及び交付決定者と受益者が弁済する義務を負うとの通告
以上
第6 請求者
「くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク」 寺町知正 他 名
以上、法第242条第1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。
2006年10月12日
岐阜県監査委員 各位
別紙事実証明書目録
第1号証 2006年10月5日付け県議会の一般質問の報道記事
第2号証 岐阜県の「知事、副知事及び出納長給料その他給与条例」
第3号証 全国都道府県の知事らの退職金の規定の仕方の比較
以上
●第1号証 報道記事
● 第2号証 当該条例
(ここでは、インターネットでリンク)
知事、副知事及び出納長給料その他給与条例
● 第3号証 全国都道府県の知事らの退職金の規定の仕方
出典・「人力検索はてな 2004.06.26」
http://q.hatena.ne.jp/1088215058
■退職手当の額=
「退職の日の給料月額」×「在職期間(月数)」×「次に掲げる割合」
○「退職の日の給料月額」はURLの一覧表中「知事報酬@1月」で示している額。
○「在職期間」は、1期分であれば、「48月」。
○「次に掲げる割合」は、各都道府県例規集によるデータ
「100分の80」・・青森、岩手、宮城、秋田、茨城、群馬、千葉、長野、京都、兵庫、和歌山、徳島、福岡
「100分の75」・・石川、静岡、三重、広島、佐賀、長崎、大分
「100分の70」・・新潟、福井、愛知、滋賀、奈良、鳥取、島根、岡山、山口、愛媛、高知、熊本、宮崎(注)、沖縄
「3分の2」 ・・鹿児島
「100分の66」・・香川
「100分の65」・・山形、福島、山梨
「100分の60」・・北海道、栃木、埼玉、東京、神奈川、大阪
○富山県は、「議会で議決する額とすることができる」
○岐阜県は、「予算の範囲内において退職給与金を支給することができる」
○宮崎県は、さらに平成16年1月1日に上記算出額に100分の50にする条例を定めた。
● 岐阜県・特別職の退職金の規定に関する要望書
2006年10月12日
岐阜県知事古田肇様
くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
事務局 寺町知正 ほか県民有志
岐阜県山県市西深瀬208
Tel/fax 0581-22-4989
岐阜県・特別職の退職金の規定に関する要望書
今回の岐阜県の裏金作りと裏金隠しに関連して、県議会で、常勤の特別職三役(知事、副知事、出納長)の退職金にかかる規定に関して議論されました。
議会で答弁された退職金の額の算定根拠が条例に明記されず、内規において示された「給与月額の0.7」を根拠としていたというものであり、県は条例改正の意向を答弁したと聞きます。
私たち県民は、このことを、新聞報道で初めて知りました。
また、このような退職金の決め方が岐阜県だけであることも分かりました(添付資料「全国都道府県の知事らの退職金の規定の仕方の比較」)。
自治体の常勤の特別職に対する退職金ついては、廃止、減額など見直しの機運が高まっています。
ぜひ、制度を適正にされるよう期待いたします。その際に、退職金支給を継続する場合には、過去に遡って改正条例を適用するということは絶対になされないよう、強く要望いたします。
なお、私たちは、本日、別途、これら退職金に関して住民監査請求しています。
住民監査請求人の立場からすれば、9月29日の住民監査請求のうちの梶原前知事への退職金とともに、常勤の特別職三役の退職金は、過去20年間に条例の根拠なく違法に支出された公金として、県に返還されるべきものと考えます。
住民監査請求の対象物、訴訟になったときの訴訟物として、「この返還されるべき退職金」と、別途申し立てている「過去20年間の裏金としての損害の返還金」は別物であることは明らかです。
が、県の「金庫」からすれば、最終的には同一視してよいともいえますので、どんな理由にしろ、当該退職金の返還が実現すれば、裏金返還金充当とみなすことも相応に合意できるとことだと認識しています。
それが、裏金返還と県幹部の責任の履行を強く求める県民の意思に適うともいえます。
以上、知事におかれては、条例改正の際に、決して遡及適用されることのないよう、お願いいたします。
以上
● 2006年10月12日の情報公開請求
「知事、副知事及び出納長給料その他給与条例」に関して、岐阜県の常勤の特別職三役(知事、副知事、出納長)の退職金にかかる次の文書
●当該条例の制定・改正の経過とそれぞれの内容が分かる文書
議会への提案理由や説明などに関する文書・資料。
議会での質疑・質問・答弁などの記録。
●答弁の「内規」について
内規の制定・改正の制定時期ごとに、経過とその内容の分かる文書
●1985年以降の三役のそれぞれの氏名、在任期間の分かる文書
着任の前と後の職の分かる文書や記録
●それぞれの退職金支給の支出伺、命令、決定権者などの分かる文書
●2006年10月4日の県議会での質問と答弁の記録
(3番4番は議会は不要)
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精力的なご活動ぶり、読むたびに拡がっているのが
感じられます。
おふたりとも、どうぞお体もときどき休めてくださいね。
そろそろ稲刈りの頃でしょうか。
>毎日、気を引き締めて読ませていただいてます。
⇒うわぁ、こちらも引き締まります(嬉)
>精力的なご活動ぶり、読むたびに拡がっているのが感じられます。
おふたりとも、どうぞお体もときどき休めてくださいね。
⇒ありがとうございます。
>そろそろ稲刈りの頃でしょうか。
⇒ええ、やっと、その季節になりました。しばらくは天気がよさそうなので、助かります。