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てらまち・ねっと



 新国立競技場問題をあっさりと転換した安倍氏。
 安保法制への批判をかわす策なのかと「真意が気になる」と7月13日のブログで書いた。
    ⇒◆新国立競技場/為政者の真意は
 《・・そうなのに、なぜこんにあきれたことを推進するのか・・・・今の安倍政権の安保法制邁進の批判の勢いをずらす別の争点を作るとか、マスコミの目先を散らすとか、・・・何か、為政者の真意が気になるところ。》

 衆議院での15日の委員会強行採決、16日の本会議強行採決に続けて17日は「新国立競技場問題の転換」。
 まさに、社会の争点をぼかし、世論を鎮静化し、報道の目先を変えさせる題材を提供するという予定通りの流れだろう。

 マスコミ操作、世論操作は権力者のとる上等手段。
 こんなことを肝に銘じつつ、ブログには以下を記録した。

●自民党「安倍一極」に不協和音 安保法案採決めぐり党内からも異論/j-cast 2015/7/17
●安保法案、「与党分裂参院」で波乱は起こるか /「強行採決」の代償は小さくない/東洋経済オンライン 7月16日 
●社説 民主主義の岐路に立って 安保法案、衆院通過 /中日 7月17日
●社説:法案 参院へ―怒りと疑問にこたえよ /7月17日 朝日
●社説:安保転換を問う 衆院本会議可決/毎日 7月17日

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●自民党「安倍一極」に不協和音 安保法案採決めぐり党内からも異論
      j-cast 2015/7/17
2015年7月16日に衆院本会議で行われた安保法案の採決は、直前に野党が会議場を退出したこともあって、淡々と行われたように見えた。だが、委員会の採決直前に複数の閣僚から「理解が進んでいない」という声が出たり、採決後も、様々なトラブルは「自民党の責任」だと執行部批判も飛び出すなど、党や閣内の不協和音も目立ち始めた。

今後、「60日ルール」が発動されるまでは参議院での審議が続くが、野党からは早くも自民党内の「厭戦気分」を指摘する声すら出ている。

石破氏の発言は民主党に攻撃材料与える「オウンゴール」?

委員会での採決を翌日に控えていた7月14日の閣議後会見では、2人の大臣が異論を唱えた。

「説明が十分だという理解はまだ進んでいないというふうに思う」(塩崎恭久厚労相)
「あの(世論調査の)数字を見て、国民の理解が進んだと言い切る自信はない」(石破茂地方創生担当相)


特に石破氏の発言については、民主党の枝野幸男幹事長が

「政治家なら(採決を)止めるべき」

と反応。結果的に民主党側に攻撃の材料を与える「オウンゴール」になってしまった。

本会議で法案が可決された7月16日にも異論は出た。採決後、小泉進次郎衆院議員(復興政務官)は法案審議について「反省点だらけじゃないですか」と憤った。

「憲法審査会で自民党自身がお招きをした学者の方が憲法違反と言ったことも、自民党自身のやったことですよね?そして、自民党の若手懇談会といわれるああいった場での(「マスコミをこらしめたい」といった)発言のさまざまな影響というのも、自民党自身の責任ですよね」
「昔の自民党のよくない部分の一端が垣間見えるような気がして、結果として法律の理解も進んでいないという状況につながっているのではないか」


共産党議員に「このやり方はしんどい」とぼやく議員も...

村上誠一郎、若狭勝両衆院議員が体調不良を理由に本会議を欠席した。以前から安保法案に反対していた村上氏については事実上の造反だとの見方もあるが、谷垣禎一幹事長は

「腰痛だということで診断書も出てきている。事情を聴く必要など私は何も感じていない」
と不問に付す考えだ。


こういった異論は、今の自民党ではあくまでも例外だ。TBSのニュース23が7月15日の放送で明らかにしたところによると、番組が自民党議員を対象に行ったアンケートに回答したのは402人中わずか5人。党内で明示的な箝口令が出ているかは必ずしもはっきりしないが、議員が党外に向けて発言しにくくなっているのは確かだ。

それでも、中には執行部への疑問を他党の議員に漏らす人もいるようだ。共産党の大門実紀史参院議員は、廊下やエレベーターで与党議員と会った時に聞いた「ぼやき」の内容をフェイスブックで明かしている。

「自民党H議員( 大臣経験者 )は『ほんとは正面突破(憲法『改正』)すべき。このやり方はしんどいねえ』といい、 若手のK議員(1期目、官僚出身)は『もっと地元にほめられることをやりたいです』という」

●安保法案、「与党分裂参院」で波乱は起こるか /「強行採決」の代償は小さくない
             | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト 2015年07月16日 安積 明子 :ジャーナリスト
「強行採決反対!!」などと書いた紙を掲げた民主党の議員たちが、浜田靖一衆院平和安全法制特別委員会委員長を取り囲んだ。そして「反対、反対」と叫びながら、浜田委員長の採決を阻もうとした。議事進行を書いたペーパーをむしり取られた浜田委員長が政府案の採決を取ると、与党の委員たちがそれに応じるように一斉に立ち上がった。

5月15日に国会に提出された安全保障関連法案は、2カ月の審議を経て7月15日午後、混乱の中で自民・公明両党の賛成多数で委員会可決された。この法案、今後、どのような運命をたどるのだろうか。

55年前の7月15日は祖父が首相を退陣した日
そもそも集団的自衛権を限定容認する同法案は、安倍晋三首相の悲願といえる。4月に訪米した際に米議会で演説し、「この夏までに安保関連法案を成就させる」と「公約」した。「60日ルール」の適用が確実になった今、その公約は100%果たされることになる。

そういえば、55年前の7月15日は安倍首相の祖父である故・岸信介元首相が退陣した日だ。日米安保改正と引き換えに政権を去らざるをえなかった祖父と一歩ずつ祖父の夢を果たしつつある現在の自分の立場の違いに、安倍首相はどのような思いを馳せたのだろうか。

だがその代償はじわじわときているようだ。7月の毎日新聞による調査では内閣支持率が42%、不支持率が43%で、第二次安倍内閣発足後初めて、支持と不支持が逆転した。NNNやNHKなど他のメディアの調査でも同じ傾向を示しており、支持率下降は確定的だ。

そこで最近出始めたのが、早期解散説だ。

支持率下落の主原因は安保関連法案だが、これを諦めるわけにはいかない。しかしこのままずるずると支持率を下げてしまうと、9月に予定されている自民党総裁選で波乱が起りかねない。圧倒的な強さで無投票に持ち込みたい安倍首相としては、ここでなんらかの手を打つ必要があるわけだ。

その手段として考えられるのが解散総選挙だ。世論は移ろいやすいので、選挙というイベントを立ち上げることで安保関連法案の悪いイメージを忘れさせようという魂胆だ。さらに野党の支持率が極めて低い「1強多弱」という現状では自民党は負けようがないという点も、解散説の根拠となる。

つい直近には、見事な実証例もある。たとえば朝日新聞の調査によると、前回の衆院選直前の2014年11月には内閣不支持率が内閣支持率を上回っていたが、それでも安倍自民党は絶対安定多数を越す291議席を獲得しているのだ。

「国民の理解が進んでいない」
だが何度も幸運が訪れる保証はない。実際に安保関連法案が審議不足との声が野党のみならず与党にも広がっている。石破茂地方創生担当相が14日の記者会見で、「国民の理解が進んできたという自信は私にはない」と発言。安倍首相も15日の同委員会で、「残念ながら、まだ国民の理解は進んでいる状況ではない」と認めている。

15日午後1時半から開かれた衆院議院運営委員会理事会。民主党の理事を務める笠浩史氏は、「総理自身が国民の理解が進んでいないことを認めている」と述べ、法案の差し戻しを求めた。さらに少数政党も議論に参加できるように自民党の議席を一部譲る話が立ち消えたこと、安保関連法案はもともと11本の法案であるため、113時間の審議を尽くしても1本あたりの審議時間が少ないなど数々の問題点を挙げている。

しかし午後2時半に再開された同理事会で、林幹雄委員長は職権で16日に本会議を開き、法案採決することを決定。これに反発した民主・維新・共産・社民・生活の野党5党は午後3時に党首会談を開き、政府案の採決については「不参加」で合意した。

ただし民主・共産・社民の3党は採決時に退席し、維新の党は単独提出法案の採決後に退席。生活の党は討論・採決ともに欠席するなど、それぞれの行動に各党の思惑がにじみ出る。「少数会派にもいろんな意見がある」と、その直後のぶら下がりで岡田克也民主党代表が述べたように、野党だからという理由だけで一枚岩になれるわけではない。

法案が参院に送られてからは、どうなるのだろうか。
参院は「選挙制度改革問題」を抱えており、10合区12増12減案を提唱する公明党に民主党が相乗りしている。合区について党内の反対が強い自民党は、2合区10増10減案の維新の党から、「こちら側に乗らないと、公明・民主側に付く」と言われてやむなく同調している。つまり、与党が分裂しているのだ。

さらに、11合区案を提示していた脇雅史前参院自民党幹事長が「憲法違反になるような法案を作るわけにはいかない」と会派を離脱するなど、混乱の要素がある。

さらに2016年の参院選を控えて存在感を出すために、衆院と同様の100時間の審議を求める声も出ている。「60日ルール(参議院に送付された法案が60日以内に議決されない場合、衆議院は再議決により法案を成立させることができる憲法の規定)」の適用を目指して、時間が過ぎ去るのを待つだけ、とはいかない可能性もある。

安倍首相が7月9日の夜に次世代の党の全議員と会食したのは、こうしたことへの懸念からだろう。6名の参院議員を擁する同党はもともと安保関連法案について賛成を表明していたが、さらに安倍首相が直接に協力要請することで、確実なものにする必要があったのだ。

衆院に戻って来た時が「戦いの本番」
一方、野党側は「60日ルール」の適用によって法案が衆院に戻ってきた場合の対抗策を考えている。たとえば委員長の不信任決議案。特別委員会委員長には法律上の解任規定がなく、不信任決議案を可決されても法的拘束力があるわけではないが、委員長は自らの進退を決するなど政治的・道義的責任を負うことになる。

「手持ちのカードは限られているんだから、何も最初からカードを切ることはない」。枝野幸男民主党幹事長はこう言う。要するに野党は「60日ルール」で安保関連法案が衆院に戻って来た時が「戦いの本番」と見ているわけだ。15日夜に都内で開かれた民主党の近藤洋介衆院議員のパーティーで、岡田代表は次のように述べた。「審議すれば審議するほど、内閣支持率が下がっていく。6割の反対が8、9割までになれば、法案を撤回させられる」。

16日の衆院本会議で法案が通れば、「60日ルール」が適用されるのは9月14日。会期末の9月27日までは約2週間ある。しかし、審議をできる時間はほとんどないだろう。連休中は審議できない上、安倍首相が国連総会に出席するなど公務が入っている。さらに自民党総裁選の予定もある。

安保関連法案は成立する可能性が高いものの、波乱要素がないわけではないのである。

●社説 民主主義の岐路に立って 安保法案、衆院通過 
    中日 2015年7月17日
 主権者である国民の多数が反対する法案がなぜ、衆院を通過してしまうのか。戦後七十年の節目の今年、私たち日本の民主主義は岐路に立たされている。

 憲法学者の多くが「憲法違反」と指摘する安全保障法制関連法案が衆院特別委で強行可決された十五日夜、国会正門前は法案に反対する人たちで埋め尽くされた。

 人の波は深夜になっても途絶えず、主催者発表の参加者数は十万人にまで膨れ上がった。法案が衆院を通過したきのう夜も、国会周辺には多くの人が集まり、安保法案反対の声が響いた。

 法案に反対する集まりは、名古屋、札幌など日本全国に広がる。

反対の大きなうねり
 石破茂地方創生担当相はかつて自民党幹事長時代、国会周辺で繰り広げられた、特定秘密保護法や原発再稼働に反対するデモ活動を「テロ行為」と同一視して、批判したことがある。

 その石破氏ですら、全国で反対デモが続く安保法案について「国民の理解は、まだ進んでいるとは言えない」と認めざるを得ないほど、この法案は異常さが際立つ。

 デモで示された安保法案への反対は、民意の巨大なうねりの一端にすぎない。

 共同通信社が六月下旬に実施した全国電話世論調査によると、安保法案に「反対」との回答は58・7%で、五月の前回調査から11・1ポイント上昇した。法案の今国会成立に「反対」との答えも63・1%で、前回より8ポイントも増えている。

 安保法案は、審議を重ねれば重ねるほど矛盾や欠陥が露呈した。衆院憲法審査会で参考人の憲法学者全員が「違憲」と主張したことを契機に、法案の合憲性に対する国民の疑念も一気に膨らんだ。

 時がたつにつれ、法案そのものや、今国会での成立に反対する意見が増えるのも当然だろう。

「白紙委任」ではない
 しかし、安倍晋三首相や法案を提出した安倍内閣、今国会成立を急ぐ自民、公明両党はいずれも、そうした国民の声を聞き入れようとせず、野党が反対する中、特別委や本会議で採決に踏み切った。

 自民、公明両党は二〇一二、一四年衆院選と一三年参院選で勝利した。その数の力を背景に、反対論を封じ、選挙で選ばれた自分たちの判断こそ、正しいと言わんばかりの態度だ。

 確かに、有権者にとって選挙は政治家や政党、政策を選択する最大の機会ではある。国民の負託をより多く受けた与党の国会議員が政策決定の主導権を握るのは、議会制民主主義としては当然だ。

 とはいえ、有権者は選挙で「白紙委任」をしたわけではない。それぞれが政治家や政党を選びながらも、熟議を通じてよりよい政策をつくり上げてほしい、というのが国民の率直な願いのはずだ。

 選挙ですべてが決まるのなら、議会で議論する意味はなくなり、議員は多数決マシンと化す。

 ましてや、憲法九条に基づく平和主義、専守防衛など戦後日本が守り抜いてきた憲法の理念や、憲法が権力を律する立憲主義に関わる問題では慎重な議論が必要だ。

 国民が、政府や国会の振る舞いをおかしいと思えば声を上げるのは当然であり、政治家が謙虚に耳を傾けることこそが、健全な民主主義の在り方ではないのか。

 にもかかわらず、自民党から聞こえてくるのは、安保法案を批判する報道機関の広告料収入をなくして「懲らしめる」などという威圧的な発言であり、沖縄県の地元新聞社をつぶせという作家に反論しない議員たちの姿である。

 言論の自由を定めた憲法を守れない自民党議員に、憲法や法律を語る資格はない。

 より深刻なことは、首相自身に戦後日本の平和主義や専守防衛、立憲主義を深刻な危機に陥れている、との自覚がないことだろう。

 海外での武力の行使に道を開く集団的自衛権の行使を認めたにもかかわらず、平和国家の歩みや専守防衛に変わりないと言い放ち、最高法規である憲法の解釈を恣意(しい)的に変更しても、立憲主義に反しないと強弁する。

 それは、戦後日本が目指してきた民主主義のあるべき姿や指導者像とは程遠いのではないか。

声を出し続ける覚悟
 安保法案の衆院通過を受けて、論戦の舞台は参院に移る。法案をこのまま成立させれば、安倍政権の誤った民主主義観を追認することにもなる。重大な岐路である。

 日本の民主主義が誤った方向に進まないようにするのは、主権者である国民の崇高な役割だ。おかしいと思ったことには国民自身が覚悟を持って声を出し続けなければ、権力は暴走を自ら止めることはないだろう。

 政治の決定権を、国民から遊離した権力から、国民自身に取り戻す。戦後七十年。正念場である。

●社説:法案 参院へ―怒りと疑問にこたえよ
     2015年7月17日 朝日新聞
 「勝手に決めるな」
 「国民なめるな」

 世代や党派を超えた重層的な抗議のコールが連日、国会周辺の空気を震わせている。

 「これが民主主義か」という疑問。「主権者は私たちだ」という怒り。それらを大いに喚起しつつ傲然(ごうぜん)と振り払い、自民、公明の与党はきのう、安全保障関連法案を衆院通過させた。強行しても「国民は忘れる」。安倍政権のこの侮りを、主権者は決して忘れないだろう。

 論戦の舞台は参院に移る。
 「良識の府」「再考の府」。参院はまがりなりにもそう称されてきた。衆院の「数の政治」に対して「理の政治」。国会をより慎重に動かす。そんな役割を本来は担っている。

 解散がなく、6年という長い任期が保障されているのも、衆院議員とは異なる目線と射程の長さで、ものごとを多元的に検討することが企図されている。様々な価値観や異なる意見のせめぎ合いから導かれた結論の方が、間違いが少ないからだ。

 ところが安倍政権下、まさにその多元性が押しつぶされそうになっている。

 集団的自衛権は行使できないとしてきた内閣法制局を、人事を通じて我がものとする。首相の「お仲間」で固めた私的懇談会が「行使容認」の報告書を出す。メディアを威圧しようとする自民党の動きも続く。

 多元性の確保が存在意義のひとつである参院であればこそ、安倍政権の「数の政治」に追従すれば、自殺行為になる。くすぶる不要論にまた根拠が加わるだろう。

 議論すべきことは山ほどある。大多数の憲法学者の「違憲」の指摘に、政府は全く反論できていない。どんな場合に集団的自衛権を行使できるのか、安倍首相は「総合的判断」と繰り返すばかりで、要は時の政権に白紙委任しろということかと、不安は高まる一方だ。

 学者、学生、法曹界、無党派市民。各界各層、各地に抗議の動きが広がり続ける背景には、安保法案への賛否を超えて、この国の民主主義、立憲主義がこのままでは壊されてしまうとの危機感がある。

 そもそも、この違憲の可能性が極めて高い法案を審議するのは、最高裁に「違憲状態」と指摘された選挙制度によって選ばれ、その是正にすらまごついている人たちなのだ。

 あなたたちは何を代表しているのか? この問いに少しでも答えたいなら「理の政治」を打ち立てるしかない。主権者は注意深く、疑いの目で見ている。

●社説:安保転換を問う 衆院本会議可決
       毎日新聞 2015年07月17日
 ◇国民は納得していない
 民意と国会との隔たりはここに極まった感がある。

 国民の反対は強まっているのに、国民の代表で構成しているはずの衆院は、与党の賛成多数で安全保障関連法案を可決した。

 衆院本会議場には、7カ月前に安倍晋三首相自身の命名による「アベノミクス選挙」で当選してきた圧倒的多数の与党議員がいた。票に色はついていないのだから、国民からもらった力を何に使おうと勝手という理屈なのだろう。

 ◇自衛隊の基盤は信頼だ
 人間に特有の人柄があるのと同じように、国家にも歩んできた歴史に基づく国柄と呼ぶべきものがある。防衛政策の面で見れば、戦後日本の国柄とは、国際協調を重んじ、軍事的には極めて抑制的に振る舞うことであった。

 安保関連法案には、こうした国柄の抜本的な変更を迫る内容が数多く盛り込まれている。集団的自衛権の行使容認と、対米軍支援の世界的拡大がその中核だ。

 政府は「日本を取り巻く安全保障環境の悪化に対応する必要がある」と繰り返す。「もはや一国だけでは平和を守れない」とも言う。

 国際情勢の変化には無論注意を払わなければならない。多国間のネットワークで自国の安全保障を考えていく姿勢も大事だろう。

 しかし、防衛政策の実行にあたる自衛隊は物理的に強大な力を持つ。判断を誤った場合にもたらされる国内外への悪影響は、一般の政策とはレベルが違う。したがって、自衛隊の活動は民主的に統制され、かつ国民の幅広い同意に基づいている必要がある。

 国民の信頼なくして防衛政策は成り立たない。これが70年前、無謀な戦争に負けて、平和国家として再出発した日本の基本であろう。

 ところが、安倍首相はその柱である憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権を「行使可」に切り替えた。過去40年以上も「行使不可」の見解を維持してきた内閣法制局の長官人事にまで手を突っ込む、強引なやり方だった。

 集団的自衛権とは、他国防衛を意味する。他国を防衛することによって間接的に自国防衛に資することを期待する。国連憲章で認められている考え方だが、同時に日本が国際紛争の当事国になるリスクを招き寄せてしまう可能性もある。

 だからこそ、憲法9条の下で集団的自衛権の行使は容認できない、という従来の政府見解は、国民の常識的な感覚に合致したものだった。

 もしも、行使に道をひらきたいのであれば、憲法の条文改正で解決されるべきテーマである。

 その意味で、安倍内閣が採用した憲法解釈の変更は、行政の裁量権を逸脱している。内閣が超法規的な存在であってはならない。

 一時の多数派の意向で安易に変えるべきではないのが国柄であろう。安保法案に対して多くの国民が納得できない原因もここにある。

 ◇憲法の安心感取り戻せ
 内閣府が今年1月に実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」によると、自衛隊に対して「良い印象を持っている」との回答は、「どちらかといえば」を含めて92.2%に上った。

 1991年に67.5%だったプラス印象の回答割合は、ほぼ一貫して上向いてきた。国の組織としては異例の高さだ。災害出動などを通して自衛隊員の献身的な姿を国民が見ていることに加え、自衛隊の抑制的な姿勢が支持されているからだろう。

 自衛隊の活動は民主的に選ばれた政府が責任を負う。しかし、政府の判断に国民の多くが同意できないのであれば、自衛隊の活動基盤は弱まる。安倍政権の性急で独善的な姿勢が、基盤を弱める方向に作用していることを認識すべきだ。

 国民の信頼をつなぎ留めるには、まず憲法に示された原則が守られているという安心感を回復させることが必要だ。憲法違反が濃厚な法案を成立させてはならない。

 そのうえで成立させるべき法案を、主要な与野党間で共有でき、かつ多くの国民が納得できるものに絞り込むべきだ。

 「切れ目のない対応」を旗印に、安倍政権が多くの内容を詰め込んだ結果、衆院の法案審議は完全に消化不良に陥った。日本有事から地球規模での対米支援、国際貢献まで広範囲に及ぶ11本もの法案を束ねて審議するのは乱暴過ぎる。

 安保法案は参院に送られた。安倍政権は仮に参院が採決しない場合でも、60日たてば否決したとみなして衆院で再議決する「60日ルール」の適用を視野に入れている。

 しかし、参院の役割とは本来、衆院段階での行き過ぎを改め、足らざる部分を補うことにある。

 衆院の与党議員が力任せに可決した法案を追認するだけなら、参院の存在意義に疑問符がつく。今こそ独自性を発揮すべきである。


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