2008年11月17日
堺市回答に対するコメント
上野千鶴子 東京大学大学院教授
「ジェンダー図書排除」究明原告団・代表
呉羽真弓 京都府木津川市議会議員
はじめ 市民97名/議員46名/7団体
私たちが11月7日および11月13日に提出した、「堺市立図書館におけるBL図書排除に関する申し入れ」の「問い1」の趣旨は、堺市HP「市民の声Q&A」の「今後は、収集および保存、青少年への提供を行わない」との市の回答は、「特定図書の処分(廃棄)を前提にしたものなのか。説明を求める。」である。
堺市の回答は「廃棄を前提にしたものでなく」であるから、市のHPにおける市民への回答との齟齬が明白になった。堺市HPと私たちに対する回答の比較から、結果として、今回の図書問題に関する堺市の混乱、不統一の方針や対応などが鮮明になった。
「問い2」は、「今回、一部の市議会議員の個人的主張に市の基本姿勢が揺らいだことは間違った市政運営ではないか。」である。
堺市の回答は、「本件における、他者からの個人的主張による不当な介入や働きかけなどは一切ありません。」とすべての働きかけを否定しているが、これは、インターネットにおける各種情報や新聞等の報道からも、また、事案の経過からも事実に反する。
今回の図書館運営に対する一連の「外圧」の存在をあえて否定することは、重大な問題をはらむ。
私たちも行政も、人権問題に関して差別的扱いや排除行為等の存在を認識しない限り問題の解決が進まないことを歴史的に学んでいる。DV(ドメスティックバイオレンス)への対応に関しては暴力を我慢するのでなく暴力や加害の事実を直視して対策しなければならない。その観点からすれば、今回の「一切ない」との堺市の回答あるいは認識は、問題の解決に進むのでなく、悪しき事態を温存・継続するだけだ。
なお、回答には「青少年に配慮する観点から、開架せず書庫に収蔵し、請求があった場合には、閲覧・貸出しに対応」と抽象的な付言がなされている。これについては、本件回答の直前にきゅうきょ館長会議が開催され、本年8月に決定し運用されていた「青少年への提供は行なわない」との方針・合意を撤回し、「請求があれば18歳未満にも貸し出す方針を決めた。同日から運用を始めた。」と新聞報道されている。
このような重大な決定変更があるにもかかわらず、私たちへの回答においては先の抽象的表現しか記さない姿勢には、わずかの誠意すら感じられない。
以上、堺市の今後に強い懸念と不安をいだくものである。
以 上
(連絡先) 寺町みどり
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