●事業仕分け人が警告!支持率急落に陥るシナリオ:永久寿夫(PHP総合研究所代表取締役)
2010年1月18日(月)13:00
1時間の議論では不十分な事業
鳩山政権の目玉商品の1つ「事業仕分け」は、インターネットによるライブ中継や連日のテレビ・新聞報道により、全国民的な関心を集めた。内容に問題ありという声もあるが、税金の使われ方を公開でチェックする事業仕分けそのものについての評価は高く、内閣支持率を下支えした。
だが、山場は事業仕分けの評価を実際の予算にいかに反映させるかという、今後の政治決定にある。その結果いかんによっては、鳩山政権は国民からの信を失い、崩壊に突き進むともかぎらない。少なくとも、時間的制約を考えれば、どうしても中途半端なものにしかなりえず、それによって支持率を急速に下げていくだろう。事業仕分けは、鳩山政権にとって、両刃の剣になる。
いわゆる「仕分け人」は9名の国会議員と56名の民間人からなり、3つのワーキンググループに分かれて作業を行なう。自治体事業仕分けの経験者、自治体職員、首長経験者、地方議員、科学者、行政学者、財政学者、政治学者、エコノミスト、弁護士、経営者、監査法人社員など多士済々である。私もその一員に加わった。
「専門家」が少ないので正しい評価はできないと批判を受けたが、事業と直接的な利害関係をもつ専門家より、多方面にわたるプロフェッショナルたちのほうが客観的な評価には適している。「何の権限」があってという批判もあったが、多々ある審議会の委員の立場と違いはない。結果は行政刷新会議、財務省、閣議、国会を経る。つまり、最終判断は政治にある。
仕分け作業は、午前9時30分に開始される。途中5分程度のトイレ休憩が数回と30分ほどの昼食時間を除き、午後7時ごろまでぎっちり議論をする。実働約9時間が9日間。事前ヒアリングや予習もする。急なスケジューリングのため、すべての議論に出席できる仕分け人はほとんどいないが、本業を抱えながら参加した民間人の負担は小さくはなかった。
仕分けの基準が分からぬという批判もある。たしかに判定に明確な基準が存在するわけではない。国の事業を「公共の利益にかなっているか」、かなっているとすれば「国がやるべきか」「自治体がやるべきか」「民間に委託できるか」「いかに効率を上げるか」「厳しい財政状況で支出すべきか」といった観点から見直すわけだが、その基準はといえば、仕分け人個々の思想や経験としか言いようがないし、それ以外にありようがない。だからこそ、多様な考え方をもつ仕分け人が議論をし、最終的に投票を通じて結果を出すのである。基準が杓子定規であれば、なにもこんなに大騒ぎする必要はない。
仕分けの手順は本来シンプルなものである。まず、目的と具体的な目標を確認する。その後に、目標実現方法の論理と目標達成度を問う。効果がないものには他の選択肢、効果が出ているものには費用対効果がより高い方法を検討する。事業一つひとつにこれをやるのだから、税金の使われ方がよく見えてくるはずである。
とはいえ、現実のプロセスはそう簡単には進まない。役所が書いてくる事業シートの内容がキレイに整理されていないのである。何かを「実施」することが「手段」ではなく「目的」として書かれていたり、具体的な目標が設定されていなかったり、同じ事が違う項目に何度も書かれていたりするのである。各省担当者はそのシートの内容を棒読みするように早口でプレゼンするものだから、聞き手の頭は混乱する。それを絡まった糸を解すように、手を替え品を替え、聞き直していくのである。質問がしばしば詰問のようになるのは、いくら聞き直しても要領を得ない結果である。
このようなプロセスを経て仕分け人はそれぞれにコメントを付しながら評価を行ない、多数決や取りまとめ役である政治家の判断で最終的な結論を得る。一事業当たり1時間というのは、たしかに短い印象だが、目的も目標も明確であり、手段も効果的であると実証されれば、評価はきわめて短時間で終わるはずだ。逆にいえば、1時間で不十分な事業は、その意義や在り方が疑わしいということである。
そういう事業にはいくつかのパターンがある。
第一に、・・・・・・
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