釣具屋の店長には、毎週いろいろ教わった。糸の結び方から始まって仕掛けの作り方、掛かってからの取り込方、竿の担ぎ方…漁協のおじさんや地元の農家のおじさんには、良く釣れるポイントを教えてもらった。彼らのおかげがなければ友鮎(おとり)に野鮎が掛かることは無かったのである。
これからどんな鮎と出会うのだろうか、鮎釣りの醍醐味というものがわかるようになるのだろうか…鮎釣りが始まった。

25年ぶりに多摩川に釣りに行った。小学校の同級生から「ウナギがいるかも」という情報を聞き、試してみたくなった。
以前その場所で鯉やナマズは釣ったことがあるが、ウナギが掛かったことがない。前日に山で元気なミミズを捕まえ、仕掛けを作った。一般的にはリールで投げるらしいが、私は使い慣れた渓流竿でやってみたかった。糸は1号の通し(ハリスなどは使わない)で、がん玉2B~4B、針は本流ヤマメ用の7号かマス用の8号。
夕方5時頃に現場に到着。おじさんが一人と、対岸に若者が一人、二人ともリール竿だ。私も水辺に立って糸を放つ。ついつい渓流のつもりで、流れに合わせて竿を流してしまうが、果たしてこのような釣り方で良いのだろうか、甚だ疑問だ。ウナギは川底にいるらしいので、餌のミミズを沈めて流してみるが、全く反応がない。針が「根がかり(底の障害物に引っ掛かる)」してしまう度に、新しく針を結ぶから、糸がだんだん短くなり、仕掛けも新しいものに変えなければならない。
暗くなり出してから、いきなり大きなアタリがあった。グングングンと強く引っ張られたので、咄嗟に竿を止めてしっかり針掛かりするのを待った。しかし無情にも針は切られてしまった。思わず声が出るほどの強い「引き」だった。いったい魚種は何だったのだろう。大ヤマメに似ていたが・・・その後近くの場所で速いアタリがあり、合わせる間もなくミミズだけを取られた。
しばらくして「根掛かり」したかと思い、竿を上げようとしたら、重たい・・・その「重さ」が動き出した。経験したことのない「ひき方(動き方)」。生き物だと確信したが、この時点では何だか分からない。竿を挙げてそれを水面に引き出すとくねくねしている・・・ナマズよりは細身だ。もしかしたら「ウナギ」では!?ココロをときめかせながら、慎重に取り込んだ。
小学校に上がる前、木更津の近くに住んでいた。父親が時々ウナギを釣ってきては 、まな板にウナギの頭を釘で打ち付けて、捌いていた。味は憶えていないが、まな板に残されたウナギのアタマがいつまでも生きていて、口をパクパクしていたのを憶えている。