花びらを一片拾った。いつもの山道で。
透き通った薄紅色である。
梅だろうか。
ここより上には梅の木は無いのだから、
下から舞い上がって来たのかもしれない。
どこかの庭から飛んで来たのかもしれない。
山の花はどこか荒々しさがあるが、この花びらには
それが無い。
家に持ち帰り、今読みかけの本の表紙に載せて
写真を撮った。
暫く別の処に行き、戻って来たら、
花びらだけが無くなっていた。
風が吹いたのかも知れない。
しかし、風に吹き飛ばされたのではなく、
風に乗って、どこかへ「帰った」のかも知れない。
たとえば山へ あるいは庭の梅の木へ
あるいは大道寺将司氏の本の中へ