蜥蜴(トカゲ)を一匹、殺してしまった。事の発端は、神社の境内で蜥蜴を見付けたことだ。蜥蜴は私の気配を感じて逃げた。ブロックが斜めに立てかけてあり、その裏側に隠れた。私はブロックに近づき、腰を下ろし、捕まえる姿勢をとった。ブロックの左側に左手を置いた。右側から右手を差し込み、枯葉を鳴らして脅かし、左側から逃げて来るのを捕まえるという作戦である。してみると予想通り左から出てきて、もう少しで捕まえられるところだった。蜥蜴は、別のブロックの裏側に隠れた。「同じ手」を使うと、左手の中に蜥蜴が収まった。
様子がおかしい。本来なら逃げようと暴れるはずで、そういう振動が掌にあることを予測していたのに、それが無い。蜥蜴は仰向けになって口を開けていた。しかも口のあたりから、出血していて、その血が枯葉の上に落ちて、丸く溜まっている。蜥蜴の血は少し茶色がかっていたが、人のそれと似ていた。
蜥蜴がどうして出血したのかは判らないが、恐らくブロックの下の隙間に逃げ込もうとして、何かの拍子でブロックが浮き、その下敷きになったのではなかろうか。
私には罪悪感がある。そもそも蜥蜴をどうしても捕まえたかったのではなく、ちょっと捕まえてみたいなという感じだった。すばしっこい蜥蜴を捕まえることで、運動神経を試したかったのかも知れない。それが結果的に殺してしまうことになるとは・・・私にとっては遊びでも蜥蜴にとっては命懸けの逃亡だったのだ。遊びと本気では、生き方の質が違う。気持の悪さを癒さずに引きずって行くことにした。