身心が整ったときに「ああ気持ちが良い」と感じられるのは、感受性があるからです。しかし調子が悪くなっても分からない、「感度の鈍い人」も多くいます。感受性は自分の身心を知るための大事な基準です。
私は25年くらい前に野口整体を4年間ほど習いました。「啓哲塾」と呼ばれる教室では互いの身体に手を当て「愉気」をして、整体操法の練習をしました。そこでの訓練が身心の感受性を拓くことになったと思っています。
私の教室の生徒でも20年くらいやっている人は、数年の人と比べて感受性がグンと高いです。繰り返し練習することで、感受性は磨くことができます。
太極拳は動作ではありますが、「形」ばかり練習しても上手くはなりません。正常な身体感覚がないと進歩しないのです。動かすところ(特に腕)だけに力を入れて、バランスを失ってしまう人は多いです。バランスの悪さは見た目にも現れますが、本来感覚で感じ取るべきものです。しかし感覚(感受性)が鈍っていれば気がつくことができません。ですから太極拳を学ぶときには、動作だけでなく、身体感覚をよくしましょうと言っています。
道や公の場所で歩きづらいと思うことがあります。それはスマホや音楽などに気をとられている人が多く、そのような人は周りに意識がいかないからでしょう。感受性が正常に発揮できない状態だといえます。所謂「空気」は読まなくても良いですが、相手(周囲の人)の「気」は読まないと、知らず知らずのうちに人に迷惑をかけてしまうのではないかと思います。
今年も「キチンと立つ」練習中に、多くの「気づき」がありました。裡側から自然に湧いてくるような感じです。それは自分をニュートラルな状態に近づけたときに出てきます。
「自分のことがわからない」、「自分のやりたいことがわからない」という人は、無理してそれを考えるのではなく、まずは身心をニュートラルに戻すことから始められたらどうでしょうか。少しづつ自分の欲求がわかるようになると思います。