連日、この湯のみでお茶や白湯を飲むのを愉しんでいる。陶芸家・弥延潤太氏の手によって形にされたものである。この風貌は信楽の土が1200度を越える高温で焼かれ、土の中の成分が化学反応し、薪の灰がかかり、現れたものだ。
色はとても複雑で、単色ではなく、混ざり合っている。黒でも灰でもなく、あえてたとえれば渓流の淵のような深い碧である。碗の内側にも群青の周りにガラス質の薄い緑があり、微かに薄紫が観える。それが何とも美しい。角度によって観えたり観えなかったりするので、湯のみを回したり、倒したりしながらその薄紫をさがす。
実は弥延氏は小学校時代の恩師であり、今回の窯焚きの最終日にほんの少しだけお手伝い(体験)させてもらった。焼きあがった後、氏は「参加した人の焚き方(性格)によって焼き味が変わる」という手仕事の不思議さを説かれ、私などに対しても、作品に関わったということを認めてくれるのである。
謙虚で飾らない氏が生み出す器は、どれも活き活きとして個性的である。
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