「だいこんの花」ならぬ「花だいこん」
樹木の下草や荒れた土手などにひっそりと咲いて
いる。
そのさり気なさや、「咲かせてもらっています」と
いうような控え目な態度は、むしろ人の心をとらえず
にはおかない。
アブラナ科で、大根の花に似ているからつけられたと
いうが、むしろ大根の花を見たことのある人は少ない
のではないか。
そういえば昔、向田邦子さんの脚本で「だいこんの花」
というTVドラマがあったような記憶があるが。
いうまでもなく、「だいこんの花」は大根という立派な
作物をみのらせるのにひきかえ、「花だいこん」は
空疎で、花のみである。
(大根の方は薹(とう)のたった大根畑で見られるー
鑑賞には適さない)
「大根の花」と「花だいこん」
何か、人生を思わすような比較である。
月おそき畦おくられぬ花だいこん
杉田 久女