蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

姉川忠義

2023年08月05日 | 本の感想

姉川忠義 北近江合戦心得1 (井原忠政 小学館文庫)

遠藤与一郎(18)は浅井家重臣の嫡男。姉川から3年たち、浅井長政の居城:小谷城は信長軍に包囲され落城寸前だった。長政は嫡男の万福丸を与一郎に託し、城から逃がそうとする。しかし、浅井家家臣の阿閉家の裏切りにより万福丸は捕えられ首を晒される。与一郎は万福丸の首を奪還し、信長に復讐するため羽柴家の足軽になる・・・という話。

与一郎は家柄がよく、イケメンで、弓の名手でほぼ百発百中、忠義に厚く女にモテる。ちょっと小説の主人公としては、欠点がなさすぎて面白みがないのでは?という設定だが、その割にはやることなすこと思惑通りにいかないので、うまくバランスが取れている(?)。

著作のもう一つのシリーズの三河雑兵心得同様、展開がスピーディーで読みやすい。合戦や武器に関する蘊蓄が所々に挿入される(どこまで史実に基づいているのかはわからないが、それなりにもっともらしい)のも楽しめる。

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海のアルメニア商人

2023年08月05日 | 本の感想

海のアルメニア商人(重松伸司 集英社新書)

現在のアルメニアはソ連から独立した小さな国、というイメージだが、かつては地中海からカスピ海沿岸までまたがる大きな地域を支配していたこともある。その後、民族は離散を強いられるが、中近東からインド、東南アジアを結ぶ交易路で活躍する商人として生き延びる。日本との貿易にも従事し、神戸のアプカー商会が有名。

日本では穴居生活をしていた縄文の頃から、中東やシルクロードでは商人たちが虚々実々の駆け引きを繰り広げていた・・・だから商売や金融でユダヤ人や中国人にかなうわけがない・・・なんて話を聞いたことがある。

陸の交易路がイスラムの有力国の台頭などで塞がれると、当時は相当に冒険的だったと思われるインド洋海路を開拓していく、みたいなダイナミズムはどこから生まれたのだろう?民族離散の憂き目にあったが故の団結力?遺伝的な商売の才能?

多分、歴史の中で消滅していった「民族」は無数にあるはずだが、ユダヤやアルメニアがディアスポラにさらされながら、アイデンティティを何千年も維持して、再び国家を樹立してしまう、という歴史からは、グローバリズムから切り離された辺境の地で暮らしてきた私達からは想像できない逞しさや執念を感じる。商才というものがあるのなら、それが先祖代々引き継がれたことによる経済力も大きいはず。

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