われら闇より天を見る(クリス・ウィタカー 早川書房)
カリフォルニアのケープ・ヘイブンという町で30年前にシシー・ラドリーを事故死させたとして収監されたヴィンセントは、刑期を終えて町に帰ってくる。シシーの妹スターは子供(ダッチェスとロビン)と共に暮らしていたが、生活は荒れていた。地元の警察署長(といっても署員は1人だが)ウォークは、幼なじみでもあるヴィンセントの帰還を複雑な思いで迎えていた。不動産業者のダークは宅地開発のため、ヴィンセントの自宅の買取を目論んでいたが・・・という話。
シシーとスターの殺害事件と「無法者」ダッチェス(13歳)の成長物語が並行して語られる。前半は多少もたつき気味だが、終盤の150ページは大層盛り上がる。というか、前半の冗長さがタメのように効いてきて、ダッチェスやウォークに共感を呼ぶのかもしれない。
「天涯孤独のダッチェスとロビン。嗚呼、姉弟の運命や如何に!」みたいな浪花節でお涙頂戴、みたいな感じがなきにしもあらずだが、いやあ、久しぶりに小説を読んで泣けてきたよ。
著者は、これでもか、というくらいダッチェスに試練を与える(あまりに繰り返されるので腹立たしくなってくる)のだが、幕切れはその割にあっさりしていて多少拍子抜けした。でもダッチェスとロビンに幸あれ!と祈りたい。
あと、次々と厄介ごとを引き起こすダッチェスに手を焼きながら、決して諦めない派手な髪色のケースワーカー:シェリーもよかった。もちろん現実はこんな人ばかりではないのだろうが、アメリカのセーフティネットって仕組みとしてよくできている所もあるよね。