蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

鬼平犯科帳(1)

2021年03月06日 | 本の感想
鬼平犯科帳(1)(池波正太郎 文春文庫)

とある会社の話。その会社は、営業の力が絶対的で社長も営業出身ばかりで、見るからに脂ぎった?朝からビフテキでも食べていそうな外見の人が多かった。しかし不祥事が発生して、その反省?から、海外留学帰り、営業経験ほぼゼロの人を社長に据えた。新社長は浮世離れした理想を語ってばかりで、油っこい社風で育成された社員はシラケていたが、環境が急によくなったこともあって、インテリ社長は無事任期を勤め上げた。
このインテリ社長は、帰宅しても英語原文で経済学の論文を読んだりしていたらしいが、疲れると池波正太郎作品を読むのが楽しみだったらしく、特に鬼平が好みだったらしい。

ひと昔前のオジサンの愛読書といえば、司馬遼太郎か池波正太郎が圧倒的だったけど、私は司馬作品の大半を読んでいるのに、池波さんの本はなぜか1冊も読んだこともなかった。もし、物凄く面白かったらどうしよう、と変な心配をしながら読んでみたのだが、それほどでもなかった。ただ、解説(植草甚一!)によると、鬼平シリーズは最初こなれてなかったものの、刊が進むにつれて面白くなるらしいので、もう少し読んでみようかな、とも思った。
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宇喜多の楽土

2021年03月06日 | 本の感想
宇喜多の楽土(木下昌輝 文藝春秋)

戦国大名の中でも苛烈な策謀家として知られた宇喜多直家の息子秀家は、若い頃から秀吉のもとで暮らし、その寵愛(本作では寵愛に見せかけた酷使という設定になっている)を受けて若くして五大老に列せられる。華やかな表側とはうらはらに、秀家は宇喜多家の相次ぐ(検知政策などを巡る)内紛に苦しんでいた・・・という話。

前作の「宇喜多の捨て嫁」は、おどろおどろしいタイトル通り、直家を悪魔的な冷血漢として描いたホラー的?歴史小説で、取り上げた人物の意外性と設定の面白さで出色の出来だったが、本作は平凡な感じ。というか直家と比べてしまうと、秀家の人生がつまらないもの(これだけ風雲に満ちた生涯を「つまらない」と言われてしまうと秀家から怒られそうだが、あくまで直家との比較論ということで、創業者の息子の宿命かも)だった、ということかも知れないが。

本作では、最近時々耳にする、関ケ原合戦の新説(小早川秀秋は最初から東軍側で戦っており、圧倒的な兵数を布陣した東軍が西軍を数時間で包囲殲滅した一方的な戦いだった、という感じの説)に基づいた筋立てになっているが、唐突かつ消化不良気味でイマイチな感じだった。
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マーダーボット・ダイアリー

2021年03月06日 | 本の感想
マーダーボット・ダイアリー(マーサ・ウエルズ 創元SF文庫)

人類が遠い宇宙まで進出した未来。「構成機体」(有機的な人体部品?とメカニカルな機構を合成した人型ロボット)であり、人身保護のための警備機能を持った主人公「弊機」は、その所属する組織(保険会社)と契約した人たちを守ることを仕事にしている。「弊機」は、暴走して多数の人間を殺害したという過去の記憶?に苦しんでいて、その真相を明らかにしようとするが・・・という話。

アメリカの有名な賞をいくつも獲得しているそうで、その中には十代の読者向けの賞もあったそうで、きっと原作は読みやすいのだと思う。しかし、翻訳が悪いのか、解説なしで未来世界や物語中の用語(例:フィード→脳に直接届く情報メッセージ??)が多用されるせいか、読みにくくてやたらと時間がかかった。

それでも、物語世界にやっと慣れてきたパート3「暴走プロトコル」の中盤くらいから面白くなってきて、パート4「出口戦略の無謀」はかなり楽しめた。
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