蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

機巧のイヴ

2018年01月08日 | 本の感想
機巧のイヴ(乾緑郎 新潮社)

江戸時代を思わせる架空の社会では、ゼンマイを動力にしたロボット技術が異様に進化し、本物と見紛うコオロギから人型マシンまでが製作されていた。その中心にいるのが釘宮久蔵という幕府の雇人だった。釘宮の作るロボットは時の政権の重大な秘密にも密接に関係していた・・・という話。

5本の短編を連ねて大きなストーリーを語る形式になっていて、中心となる話は3本目以降から始まるのだが、短編としての出来は、最初の表題作「機巧のイブ」が一番で、ラストのオチは全く気が付かず見事にだまされた。
本書のテーマは、ロボットと人間の違いは何か?、あるいは、違いはないのではないか?ということで、それが最も象徴的に描かれているのが、この表題作だった。

2本目(箱の中のヘラクレス)も意外感はないが哀愁が漂ってよかった。
3本目以降からは、話が急に壮大になりすぎて、まとまりが悪くなった印象があった。

余談だが、私が読んだのは(図書館で借りた)単行本の方で、こちらのカバーデザインは、ストーリーのイメージにぴったりでとても素晴らしかった。一方、昨年後半に刊行された文庫本の装画は、かなり?だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする